HARF-WAYには『ヨリミチストリート』というゲーム紹介ページがあります。
イメージとしては、ゲーム屋だけが立ち並ぶ架空の商店街といったところでしょうか。
名前は「寄り道」から連想しています。安直です。
異なるテーマを持った店舗が並び、店先を眺めながら気になるゲームをふらふら探す。
そんな場所が現実にあったら毎日のように通ってしまいそうですが、それほどニッチな商店街は現実に存在しません。
そこで作ったのが、ヨリミチストリートです。
この場所のコンセプトは「目的のないゲーム屋巡り」。
散歩するように店先を眺めながら、知らなかったゲームと出会う体験を目指しています。
「なんで商店街を作ったの?」
「別にまとめページで十分じゃない?」
「結構面白いじゃん!」
色々な意見が飛び交っており、狙い通り賛否両論だといったところです。あなたにとって良いか悪いかはさておき、ゲームメディアとしては珍しい試みではないかと自負しております。
もちろん、酔狂だけで作ったわけではありません。まとめページではなく商店街である必要性だったり、紹介記事にしなかった理由だったり、HARF-WAYの特性だったり。表に出していない思想や狙いが多分に含まれています。
そこで本記事では、ヨリミチストリートの発想が生まれ、実際のページとして形になるまでの設計過程をまとめました。
ヨリミチストリート=「ゲームを眺めるコンテンツ」

ヨリミチストリートには、異なる切り口を持った店舗(紹介コーナー)が並んでいます。
ゲームセンター風の店もあれば、安価なゲームを駄菓子に見立てて紹介する店もあり、単純なゲームカテゴリで区別することはありません。
店舗ごとに扱うゲームも、デザインレイアウトも、言葉遣いも異なります。場所が変われば建物も人も変わるので当然です。遊びに来た人は、何も考えずにぷらぷら散歩すれば良いのです。
看板や店の雰囲気を見て、気になった場所へ入る。並んでいるゲームを眺め、気になるものがあれば記事やストアページへ進む。現実世界のお店巡りとなんら変わりません。
何も見つからなくても「楽しかった」と感じてもらって、そのまま帰ってもらう。
そのくらいの気楽さがちょうど良いと思っています。
何となく入った店で、予定になかったゲームを見つける。
ゲームを選ぶ前の時間まで含めて、ひとつの体験コンテンツにしたいと考えました。
いまは亡き「かもしだ商店」がヨリミチストリートの原案
ここでちょっとだけ、自分の昔話に付き合ってください。
わたしが「ゲーム探し」を好きになったきっかけは、中学生の頃に地元へオープンした雑貨屋「かもしだ商店」の影響からでした。この場所がなければ、ゲームを紹介することも、HARF-WAYを立ち上げることもなかったでしょう。
店内には中古ゲームが数多く並び、その横には大量の漫画や駄菓子が鎮座。さらに、雑貨屋特有の海外の謎グッズまで置かれていて、当時の自分は完全に心を掴まれてました。まぁ潰れちゃったんですけどね。
あの頃は暇さえあれば店へ行き、目的もなく店内をぷらぷらしながら商品を眺めてました。気になるものがなければ何も買わずに帰り、たまにワゴンセールで見つけたゲームをワンコインで買って遊ぶ。
あのときのワクワク感を忘れたくないんです。
欲しいものがないから店に行く。
いろいろと見てるうちに欲しくなる。
ヨリミチストリートは、この順番をWeb上へ持ち込むために作りました。
いまの時代はゲーム名や条件を入力するだけで、当たり前のように必要な情報へすぐにたどり着けます。それはとても便利ですが、少なくとも自分が好きだったゲーム探しは、もう少しゆったりしたものでした。
何を探しているのか自分でも分からないまま、ただ商品を眺めていられる。
ヨリミチストリートは、そんな余白のある場所であってほしいと考えています。
記事一覧は「読み慣れてる人」だから意味がある
「偶然の出会いを作るだけなら、記事をテーマ別に並び直せば事足りるのでは?」と思った方もいるかもしれません。
大半のWebサイトには「カテゴリ」や「タグ」があるため、うまく設定してあげれば導線を作ることも可能です。もちろん、例に漏れずHARF-WAYにも記事一覧の機能はありました。
しかし、自分の知らないことに関する記事をしっかり読みたいと思う人は早々いません。なぜなら、SNSで流れてくる情報を見てお腹いっぱいだからです。それで十分なんですよ。
多くの方は当たり前のように「記事は読まれるもの」と思っています。でも蓋を開けると、そこに辿り着ける人は「Web記事に読み慣れている人」もしくは、「記事の内容に興味を持っている人」だけです。
記事一覧は、読みたいものが決まっている人にとっては便利です。欲しい情報が目の前に集まっているからです。その一方、何を読みたいのか自分でも決まっていない人が、目的もなく過ごす場所にはなりにくい性質を持っています。
そしてそもそも、紹介したいゲームをすべて記事にできるわけでもありません。
気になる部分こそあれど、数千文字の紹介記事にするのは少し重い。深く語るよりも存在を知って欲しい場合、動画や短い文章だけでも雰囲気は伝わります。
仮にそれらすべてを記事として書いたとしましょう。サイトの読み物は増えますが、軽く触れた作品と深く掘り下げた作品が入れ違いに並ぶだけです。それじゃ、ゲーム置き場となんら変わりません。
一方、SNSなら気軽に紹介できます。
ただし、これも一長一短。投稿は時間とともに流れていきます。投稿直後に見てもらえても、数日後には新しい情報で埋もれるのが関の山。膨大な情報が飛び交う他人のSNSを独占することなど誰にもできません。
記事は残るけど、読むための意思が必要。
SNSは気軽だけど、流れれば何も残らない。
この二つだけでは、「読むものを決めずに、何となくゲームを眺める」という欲求を満たすことはできませんでした。
流し見できて芯が残るものを
そこで、SNSと記事のどちらにも属するコンテンツを考えました。
SNSでは、自分の探していなかった作品も視界に入ります。強い興味を持てなくても良いのです。ゲームを知る前から、「これを読もう」と決めなくていいことがSNSの強みだと考えました。
一方、記事の良さは「なぜその作品なのか」「どこに面白さを感じたのか」「どの切り口から見たのか」といった編集視点があるからこそ、読み終わったあとに何かが残るのだと思っています。
ヨリミチストリートで目指したのは、SNSのように次々とゲームを流し見できて、記事のように何かひとつ記憶に残るコンテンツです。中途半端だけど、双方の良いところを取ったみたいな感じですね。
一作品ごとの説明は短くてもいい。
すべてを理解する必要もない。
同じ切り口を持った作品が店内に並んでいれば、「この店はこういうゲームを集めている」という文脈が見えてきます。記事一覧は記事を選ぶための入口で、ヨリミチストリートは入口そのものをコンテンツにしています。
店を選ぶ。売り場を眺める。短い紹介を読む。周囲のゲームと見比べる。その場所を見て回れば、ある程度の体験が成立する。一つの記事をゆっくり読むことだけがWebサイトの楽しみ方ではありません。
短い情報に切り口を乗せる。
流し見できて少し芯が残る。
ここは、目的もなく遊びに行ける場所なんです。
商店街ができるまでの設計過程
ここまで、ヨリミチストリートで作ろうとした経緯について紹介してきましたが、最初から現在の形が見えていたわけではありません。紆余曲折、というよりも前後不覚になりながら奇跡的に形になってます。
・なぜ、商店街という構造を選んだのか
・新しい体験を作ろうとして生まれてくる問題は何か
・実際にどのような設定を作り、何を削ったのか
施策段階で店を増やした結果、商店街がスッカスカのゴーストタウンにもなりました。その失敗を繰り返さないために、店舗・棚・記事をどのように分けたのかも残しています。
またヨリミチストリートを作る過程で新しさに意識を向けすぎた結果、本来伝えるべきゲームの魅力がおざなりになる問題も起きました。表に出る前に捨てた設定や、途中で見直した作り方も少なくありません。
ここから先では、完成したページの説明ではなく、どこで迷い、何を捨て、現在の判断基準へどう変わっていったのかを順番にまとめていきます。