格闘ゲームとの出会い
それと出会ったのは、今からもう30年以上前の話だ。
『ストリートファイターII』当時一世を風靡した格闘ゲームの祖と言える作品である。
大きく描かれたキャラクター、コマンド入力で発動する派手な必殺など、すべてが目新しく子どもの頃の私は一瞬で虜になった。
格闘ゲームの魅力に憑りつかれた私は、餓狼伝説、キングオブファイターズ、ヴァンパイア、鉄拳、ギルティギアなど、ありとあらゆる格闘ゲームをプレイし続けた。
それだけ格闘ゲームをやっていると、さぞ強いのかと思われるが、ド田舎に住んでいた私の対戦相手はCPU戦か仲の良い友人。
都会のゲーセンに遠征行くわけでもなく、大会に参加するでもなかった。
プレイも必殺技ばかりを使用し、高火力のコンボをとりあえず決めれば良いと言うプレイスタイル。
それでも仲間内では結構強かった私が、少年時代どうしても勝てなかった相手が1人だけいた。
その子は必殺技ではなく、通常技を駆使してあっさりと私を倒してしまったのだ。
最大コンボを当てるどころか、ほとんど近づくことすら出来ず、今の格ゲー用語で言う『ガン処理』をされてしまった。
今思えば負けて当然の内容だったが、当時の私はなぜ負けたのかさっぱり分からなかった。
転機
大学を卒業し、仕事に就き、結婚。
格闘ゲームは嗜む程度のおじさんゲーマーと化した私に、思わぬ転機が訪れたのは2021年のことだった。
ストリートファイター5の大会を何気なく見ているうちに、格ゲーに対する想いが沸々と再燃していくのを感じた。
ドキュメンタリーが好きな私にとって、Youtubeでプレイヤーに焦点が当てられ、そのストーリーを知れたのも興味を引く助けになった。
「久しぶりに格ゲー、やってみるか」
かくして、格闘ゲームという魔境に再び足を踏み入れる事になったのである。
ストリートファイターとの再会
プレイする格闘ゲームとして選んだのは『ストリートファイター5』。
大会を見ていたのもあるが、大きな理由は1つ。コンボの長いゲームが嫌いだからだ。
スマッシュブラザーズの生みの親、桜井氏も言っていたが、長いコンボを決めている側は気持ちよくても、決められている側は虚無以外の何物でもない。
ストリートファイター5は発売から既に5年経っており、幸いにも安価で購入することができた。
ブランクはあるとはいえ、無数の格闘ゲームをプレイし、クリアしてきた自負があった私は「まあそこそこできるっしょ」という甘い考えでオンライン対戦へと赴いていった。
オンライン対戦と言う名の地獄
発売から5年も経っている格闘ゲームというのは、発売当初のそれとは人種そのものが違うように感じた。
個人的に多いと感じるタイプは次の3種類。
- 最近はじめた本物の初級者
- 何故かずっと同じランクに居続けている人
- 初心者狩りを楽しんでる人
ずっと同じ行動を繰り返すボットや、何も行動しない人など、意味不明なプレイをする人もいたがそれは少数。
その中でも初心者狩りはタチが悪く、『永遠に続くめくり飛び』『初見殺し』『屈伸煽り』など、様々な手段でボロボロにされ、やわらかいところにコントローラーを何度も投げつけることになった。
今思えば、よく辞めなかったなと思う。
あの時の理由
闇雲にオンラインに潜っても勝てないことを知り、ここでようやく格闘ゲームに本気で向き合うことになった。
色々調べていくうちに『通常技と必殺技の役割』『有利・不利フレーム』『小技暴れ』『遅らせグラップ』など、今まで聞いたこともなかった技術があったことを知る。
コンボをミスしないことが強さ、と思っていた自分にとっては目から鱗だった。
こういった技術を1つずつ習得していくことで、ようやく少年時代にあの子に負けた理由を理解したのだ。
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ストリートファイター6の登場
苦しみながらも何とかプラチナランクまで行った頃、ストリートファイター6が発表された。
行けると思っていなかったプラチナに行けた満足感を味わう一方、様々なハメ技を食らって精神は疲労しており、この苦行を1から繰り返さないといけないのかと思うと、ストリートファイター6を購入する意欲がそこまで高まらなかった。
プロを倒す、ということ
購入するかはまだ決めかねている中、ストリートファイター6のオープンベータが開始。
無料なのでとりあえず参加することにした。
ゲームとしては、前作のじりじりとした展開とは打って変わり、動きのある派手なゲーム性が非常に心地良い。
そんな中、プロがストリートファイター6を配信しているのを見て思ったことがあった。
ストリートファイター5の大会で優勝しているようなプレイヤーが、オンライン対戦で簡単なミスをして負けているのだ。
ゲームが変わるというのは経験値があっても、スタートは同じなんだと気づいたのだ。
この時はじめて。
「スタートが同じならもしかしたらプロと戦って勝てるチャンスがあるかもしれない」
という感情が芽生えた瞬間だった。
挑戦と敗北
1度目のオープンベータが終了し、2度目のオープンベータが始まり、いきなりプロに挑戦するチャンスが舞い込んできた。
プロのオープンベータ配信を見ていた私は、配信画面に『誰でも参加OK』と書いているのを見つけたのだ。
コメントするために大急ぎでTwitchアカウントを作成し、対戦申し込みを承諾してもらった。
結果は惨敗。一度追い詰めた場面もあったが、全くと言っていいほど良い所はなかった。
想像以上にプロが仕上がっているのもあったが、一般人とプロとの初対戦。自分のプレイがストリーム配信されている緊張からか、本来の実力を出すことが出来なかったのだ。
セカンドチャンス
オープンベータが終了し、体験版で黙々とCPU練習をしていた私は再び自信をつけ、意気揚々とストリートファイター6の世界に乗り込んだ。
プロでもたまに負ける難易度MAXのCPUにパーフェクト勝利するほど練習していた私は、初のオンライン戦でもそこそこ連勝してプラチナランクからの開始となった。
発売から数日が経ったある日。前回負けたプロとは別の若手プロが『15連勝するまでオンライン対戦する』という企画配信をしていた。
その時、あることに気づく。なんとプロのランクが私とほぼ同じだったのだ。
「このランクだと対戦マッチングするな…と言っても無数にプレイヤーはいるわけだし、そう簡単にマッチングなんてしないか」
と思いながらその配信を閉じ、いつもどおりオンライン対戦を開始した。
その日の初対戦。対戦相手は先ほど見ていた配信で使われていたキャラクターだった。
「まさかな…」
とは思いながらも、ほんの少しだけ戦えることを期待していた自分がいた。
画面が切り替わり対戦開始。プレイヤーネームを見た刹那、ほのかな期待は確信へと変わった。
幸か不幸か、2度目の挑戦権を獲得した瞬間だった。
激闘
跳ね上がる心拍数、震える手。普段ならやらないようなミスを繰り返し、1試合目はプロがあっさり先取。
あまりに不甲斐ない試合内容に、思わず笑ってしまった。
だが笑うことで気持ちも吹っ切れ、心に少し余裕ができたようにも感じた。
ストリートファイター6のシステム上、2試合先取した時点で試合が終了する。ここで負けたら次の機会はもうないかもしれない。
きっと明日には、もう自分が到達できない遥か先のランクへ行ってしまうからだ。
呼吸を一つ、やれることをやろう。
過度なプレッシャーは程よい緊張感へと変わり、奇跡的に次の試合に勝つことができた。
嬉しさのあまり、気が付けば声を上げて立ち上がっていた。
さながらスラムダンクで山王に勝った湘北のように気が抜けたのか、次の試合は圧倒されて1勝2敗で幕引きとなった。
初勝利とスト6と私
今回の勝負、プロにとっては負けた数分後に忘れるような出来事だったと思う。
だが私にとっては格ゲー人生で最も嬉しい勝利となり、生涯忘れられない勝負となった。
勝利と敗北に価値を付けられるのは、自分自身に他ならないのだ。
もちろん1試合勝てたからと言って、プロと対等に戦えたとは微塵も思ってはいない。
ただ、1試合先取するには2回勝つ必要がある。
まぐれでプロから2回勝つことは難しいだろう。
そう考えれば、今まで格闘ゲームで苦しいことも沢山あったけど、少しは報われた気持ちになった。
正直これ以上の達成感は味わえないかもしれないが、ストリートファイター6は始まったばかり。
『俺より強いやつ』より『俺と同じくらいの強さのやつ』に会いに行きたいのが正直なところだが、ともかくもうちょっと頑張ってみようかなという気にさせてくれた。
格ゲーおじさんの求道の旅は、まだもうちょっと続きそうだ。
伸び悩む格ゲー中級者さんに向けてメモを書いたので、もし良かったらそちらもどうぞ~
ストリートファイター6で伸び悩む中級者に”モダン”を勧める3つの理由
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