仕様通りの進行不能バグ?|『DebugDebut』の開発者『タゴ』氏にプチ取材

「デバッグ経験者は手を挙げてくださ~い!」と聞いても半分以上は無反応だと思う。ゲーム業界未経験の筆者からすると、ひたすら壁にぶつかったり、メニュー開閉を無限におこなうイメージしかありません。

今回取材させて頂いた『タゴ』氏の作品は、デバッグを題材にした間違い探し風のSLGです。プレイヤーにできることはバグの検挙まで。バグを直す部分は対象外なので、誰でも遊べる手触りに仕上がっています。

この記事では、タゴ氏が制作する一風変わったデバッグ検証SLG『DebugDebut』を紹介。馴染みのないデバッグの疑似体験ができるゲーム詳細のほか、今作の狙いや目指すべきゴールについてもお聞きしました。

『デバッグ作業』を題材にした間違い探しSLG

▲『Botチェック』に基づいて検証

DebugDebut』は、デバッグを題材にしたSLG作品です。ジャンル分けに関して開発者の『タゴ』氏に尋ねてみると、「自分も何に属するのか分からなくて、たぶんシミューレションの類いかな?」とのこと。自分が逆の立場なら答えられないかもしれない。

大枠となるストーリーは、AIの作った簡易的なゲームをデバッグして検収すること。出来上がったばかりの作品には必ずバグが潜んでおり、なかにはゲーム進行が完全にストップしてしまうものも。

▲来ると分かってても焦る

プレイヤーは事前に渡される仕様書を確認しながら、実際にプレイして何処に問題があるのかデバッグしていきます。聞き慣れない言葉かもしれませんが、平たくいえば間違い探しみたいなイメージです。

例えばパズルゲームの場合、本来は壁になる部分をすり抜けるバグが発生。STGでは登場するはずの敵が現れずゲームが止まるなど、現実世界でも起きそうなバグを片っ端から検挙していきます。

▲見つけたバグを報告

「敵の挙動が明らかにおかしい」「ギミックが機能しない」など、パッと見て分かるバグもあるので初見でも気付きやすいかなと思います。逆にゲームが止まるバグも紛れ込んでおり、仕様のバグではなくホントにバグったのかと錯覚する場面も。

試遊版の段階では手軽にデバッグ体験ができたので、負荷が高すぎることもなくサクッと遊べる印象。どことなく論理パズルっぽさも感じられ、独特の手触りが印象的な作品でした。

進行不能バグに遭遇すると人はテンパる

▲敵が…出てこねぇ…

一般的な間違い探しと比較して、デバッグ作業は実際にゲームを遊びながらおこないます。操作が全く効かない致命的なバグなら露しれず、良い感じに動いてしまうと意外に気付かないものだなとしみじみ。

試しに仕様書とにらめっこしながら操作していくと、違和感を感じるおかしな挙動と遭遇します。パズル要素として鉄板になりつつある『滑る床』がバグったり、障害物の岩に乗れたり、きっと本来は意図してない動きに気づくはずです。

▲壁にぶつかるまで止まれないカニ(パズルゲーム)

ここまでは何も問題ありません。おかしい部分にチェックを付けるだけなので、操作自体も当たってシンプルです。問題は『ゲームが止まるバグ』。「まぁデバッグには付きだよな〜」とは最初は思っていました。

筆者は試遊時にバグの存在に気づかず、『マジのバグ』と勘違い。挙げ句の果てに「バグってませんか?」と伝え、タゴ氏に「それがバグです!」と伝えられて横転しました。まさにコレじゃんねぇ。

▲『敵が出てこないバグ』に思わず叫ぶ

試遊版の時点で比較的気づきやすいバグや、「ゲームが壊れた!!」と焦るクリティカルなバグも見受けられます。ひとえにバグと括っても、実は細分化していて発見の難しいものが紛れ込んでたりするんだなと。

タゴ氏は「複数のゲームジャンルに挑戦してもらって、最終的にはRPGに挑戦して欲しい!」と楽しそうに語ってくれました。流石に骨が折れそうだなと思う反面、ステータス関連のバグとかも見つかって面白そうだなと気になっています。

苦手分野を切り捨てて
得意分野で一本勝負

▲謎多きデフォルメ風キャラの『AIちゃん』

「何故デバッグを題材にしようと思ったんですか?」と率直な意見をぶつけると、タゴ氏は「8番出口の影響ですね」と教えてくださいました。異変に気付くという意味では同じ方向性とも受け取れます。

タゴ氏は続けて「自分はイラストを書いたりするアート作りが苦手なので、得意分野のプログラミングを前面に押し出しました」と仰っており、自分の土俵で正々堂々ぶつかる男気も感じました。

▲タゴ氏が代表を務める『BeaverDevelopment』

面白そうなアイデアだけを武器に突っ走るのではなく、作り手の強みを活かして企画力と長所を掛け合わせている印象。まだまだ試行錯誤している様子も伺えましたが、良い方向に進んでいる気がしました。

難易度についてお聞きすると、「左右非対称の分かりやすいものから、メニューバグといった深刻なバグも入れたい」とのこと。サクサクと数をこなすも良し、発見の難しいバグに狙いを絞るも良しです。

▲バグの種類も結構多そうです

試遊時ではデバッグの正確性や発見速度によってスコアが発生しましたが、タゴ氏によると色々な形を模索すべく仕様変更も検討しているそうです。最終的には間違い探し+アルファの形に着地するのかなと予想しています。

発見の難しいバグに注目が注がれることも多そうですが、簡単なバグを淡々と見つける金策プレイも面白そうだなと思いました。人によっては誰に言われるでもなく黙々と遊んでしまうかもしれません。

1人よりも複数人で遊んで欲しい

▲間違い探し作品の代表作『8番出口』

タゴ氏に「どんな人に遊んでもらいたいですか?」と尋ねた際、「配信者さんに遊んで欲しい」と答えてくださいました。今作は間違い探しの特性上、一人よりも複数人で遊んだ方が楽しめる点でも頷けます。

「実は※Phasmophobiaみたいにしたいんです!」と楽しそうに話してくださり、コンセプトや狙いが固まっている作品なんだなと再認識しました。異変に気付く点において共通点も多いかもしれません。

※心霊現象を調査してゴーストを特定するホラゲ

「視聴者を巻き込んで違和感を指摘し合う構図」を目指しているとのことで、ゲームとしての面白さはもちろん、一種のコミュニケーションツールみたいになるのかなと勝手に予想しています。

デバッグ作業の特性上、ド派手な要素はありません。仕様書とにらめっこしながら淡々と検品し、異変に気付いて指摘する。地道な作業だからこその堅実な達成感は今作ならではの醍醐味かもしれません。

バグの発見をどこまで難しくするか悩んでいるらしく、もしかすると本職泣かせの嫌なバグが実装される可能性も。独自性の強いゲームなので難航する部分も多そうですが、どう着地するか気になる作品でした。

ストアリンク
https://store.steampowered.com/app/3387340/DebugDebut/

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