同時開発ならではの強みとは?|『キメキャワ&パスパレ』の開発者『まっともぉん』氏にプチ取材

音ゲー好きと告げるのが少々怖い。そこそこの難易度を完走できる程度にやり込むことも多いけど、他人に認められるレベルかと言われば自信がない。心のどこかに後ろめたさを感じるときもある。

まっともぉん』氏は柔らかい世界感を持つリズムゲーを制作しており、「音ゲーの敷居を感じずに遊んで欲しい」と教えて下さいました。自分だけじゃなかったんだと知って安堵したことを覚えています。

この記事ではまっともぉん氏が制作している2種類のリズムゲーを紹介しつつ、同時制作する上でのメリットや差別化についてもお聞きしました。プログラマらしい面白い取り組みもしていたので是非ご覧ください。

2つの作品を同時進行できる理由は裏側のギミックにあり

▲2作品を同時に制作!??

まっともぉん氏は2種類のリズムゲームを同時制作しており、どちらも軸となるギミックは同じとのこと。

「キメキャワ」はクリッカーゲームにリズム要素を混ぜた作品。限界の人がトリップしながら果物の瓶詰めを作るkawaiiクリッカーですね。言葉に起こして文章にするだけでも圧倒的な力を感じさせます。

▲KAWAII

一方の「パスパレ」は正統派のリズムゲーム。カジュアルに楽しめる爽やかリズム天国のような印象です。展示ブースに足を運んだ際、「あっ!ソーダ振る奴じゃん!」と伸びやかな声を数多く耳にしました。

▲パスパレといえばソーダ振り

凄まじいマンパワーだなと恐怖心を植え付けられましたが、「画面に表示されるアートワークを差し替えるだけなので意外と効率的なんです!」とのこと。そうだとしても、凄いことしてるなと思いました。

同じギミックで同時進行する利点はバグ取りにもあると仰っており、片作品で対策をすれば潰し込みが効くとのこと。傍から見ると同じギミックを採用をしてるとは思えず、発想力の高さに驚かされました。

▲この2つが
▲同じとは驚き

まっともぉんさん氏はプログラマとして開発に参加しており、グラフィックとサウンドはそれぞれ別の担当者が請け負っているそうです。2作品に共通して、全員が同じ方向を向いているように感じます。

ここまでシステムを初めとする裏側の仕組みについて教えて頂きました。そうなってくると、アートワークについても気になるところ。どういった形で差別化を図っているのか詳しく教えて頂きました。

キメキャワは『統一感』を
パスパレは『個性』を

▲キメキャワは『ビートちゃん』の軸を大切に

まずキメキャワについては各役割に3名が張り付く少数精鋭で作られており、統一感を持たせることに比重を置いているようです。

プログラム:まっともぉん
グラフィック:Ryui
サウンド:つよみー

また※正誤判定に仕掛けがあり、音の鳴るタイミングではなく当たり判定を採用。音がズレても接触していればOKになるため、ラフに楽しめる設計とのこと。音ズレを許容するリズムゲーって面白いですよね。

※音ゲーにおける『Good』『bad』等の判定

気楽に遊んで貯まったポイントを使うと「ビートちゃん」の衣装や楽曲が解放。テキストから読み解ける文脈だけでなく、アートワーク全体を通じてキャラを好きになって欲しいと仰っていました。

▲人気出そうな顔しとるんよ

一方のパスパレは統一感と逆のアプローチを採用。サウンド担当者を8名に増員し、個性を引き出す方向で制作しているそうです。確かに曲調をガラッと変化させた方が、各種ミニゲームとも噛み合いそうです。

体験版で楽しめる5種類の楽曲はミニゲームに即した楽曲がいずれも提供されており、ゲームごとに最適化されている印象。また成功時のUIやSEも小気味よく、カジュアルでありつつ満足感の高い内容でした。

▲個人的にバレーがお気に入り

作品としてのクオリティを高めることも確かに重要ですが、闇雲に質を上げても良いゲームになるとは限りません。しっかりと方向性を見定め輪郭を丁寧に作り上げることこそ、手触りの良さを生み出す秘訣かもしれません。

ワンダーモードは過去作品の経験から生まれた

▲すーぱー両手ずしゃずしゃモード

まっともぉん氏は『unityroom』と呼ばれるゲーム配信プラットフォームに作品を投稿しており、前述した2作品の前身となるゲームもそこで生まれました。脱線しますが、全作品無料で遊べるのでおすすめです。

キメキャワは死んだ目で仕事をこなす通常モードと、突如トリップする「ワンダーモード」で構成されています。作品の核を支える『静と動』は過去作品の『LET’S DANCE!!』から継承しているそうです。

▲まっともぉん氏いわく「カビちゃん」とのこと

LET’S DANCE!!はカーソルを思うまま動かし、画面上のカビ?を一定のラインに揃えてパーリィーする作品です。エフェクトがやり過ぎなくらいキマッてるので、動かしてるこちらもキマりそうになります。

一方のパスパレは、音に合わせてギミックを発動させる気持ちよさを『READY GO』から踏襲したそうです。音と連動して快感を生み出す仕掛けの裏には、別角度からのアプローチが隠れていました。

▲カウントダウンに標準を合わせる

READY GOはカウントに合わせて風船を射貫くリズムゲームです。ボタンを押すのではなく標準合わせに軸を置いているのが特徴。リズムで切迫感を生み出し、気持ちよさを最大化しているのが印象的でした。

まっともぉん氏は「音ゲーが持つ敷居の高さを感じず遊んで欲しい」と仰っており、未経験者でも楽しめるリズムゲーを目指しているとのこと。音に乗る感覚をラフに楽しめる作品に仕上がりそうです。


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作業環境の整備によって作品の柔らかい佇まいは培われる

▲圧のない世界観

まっともぉん氏への取材で、チーム内連携を強めるためにプログラミングを活用している点が印象的でした。良くあることかもしれませんが、きっとこの方がリーダーだからこそ両作品は上手いこと着地したんだなと思ったんですよね。

一例として譜面データをテキストファイルに変換し、アートチームと共有できるツールを作成したとのこと。非プログラマでも譜面を気軽に確認/修正できる環境が整備されたことで、作業分担がしやすくなったと教えて下さいました。

ほかにも体験版リリース時のフィードバックを効率的に回収するため、ハッシュタグを検知して自動でチーム内に通知を飛ばすツールも開発したそうです。人力で探すよりも遙かに工数が減りますし、メンバー間で共有できるのも良い仕組みですよね。

作品の品質を管理する上で、メンバー間のコミュニケーションや工数削減は必要不可欠といえます。プログラミングの知識を使って関係者総出でPDCAを回すことで、細部まで手入れの行き届いた作品が完成するんだなとしみじみ思いました。

まっともぉん氏はきっとコードを書くのが好きな方で、それでいて人と話すのも好きな方なんだろうなと思いました。作品から感じ取れる柔らかい雰囲気や敷居を感じさせない佇まいは、まっともぉん氏の人柄が反映されているのかもしれません。

作品の進捗度も順調に進んでいるらしく、楽曲やデザインを詰め込んでいくフェーズとのこと。「リズムゲーに親しみのない方でも遊べる作品」という言葉に嘘はなく、2作品とも爽快感はじけるゲームになっているので今後の動向に注目です。

ストアリンク
〈キメキャワ♥限界ビートちゃん!!〉
https://store.steampowered.com/app/2780040/_/?l=japanese
〈Pastel☆Parade〉
https://store.steampowered.com/app/2685840/PastelParade/?l=japanese

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