キャラクターが可愛い。ゲーム性が面白そう。世界観が好み。『自分ごと』としてキャッチできる要素は人それぞれですが、時として作品の魅力に気づけず素通りしてしまうことも珍しくないと思います。
『tomo-mana』氏の作る『プロジェクト・ソラリス』はビジュアルの強さはもちろん、ホムンクルスの育成要素といった独自性もあり、高品質なデッキ構築作品に見えました。でも筆者は見逃していたんです。
この記事では本作の基本システムや見どころに触れつつ、作品にひっそり張られた伏線にも踏み込んでいこうと思います。一貫性を持って作られたゲームらしさ溢れる作品なので是非ご覧ください。
MP足らずの新米魔女と
もっちりホムンクルス

『プロジェクト・ソラリス』は、主人公『ソラリス』とホムンクルスの『ホム』を操作して戦うデッキ構築型ローグライクです。戦闘ではホムが前衛に立ち、ソラリスが後方から魔法で支援する形。
ソラリスは魔法の素となる『魔素』を操る遺伝子が生まれつき少なく、魔法が上手く使えないためホムンクルスと共闘します。戦局に応じてユニットを使い分ける点も今作の特徴といえるでしょう。
ホムはコストなしで行動できる反面、デッキからランダムに選ばれる3枚のカードでしか行動できません。一方のソラリスは強力なスキルを持つ代わりにMPが低く、切り札のような位置づけとなっています。

戦闘システムにはQTE(リズム良くボタンを押す奴)が組み込まれており、最適解の行動を選べても腕前次第でピンチになる場面も。マンネリ防止にも一役買っており、良いアクセントだなと個人的に感じました。
操作キャラによって立ち回りが変化するのでメリハリも効いており、真っ直ぐ面白い作品だなと感じました。ホムの行動がランダムに変化することもあり、カードゲームというよりもRPG色が強めの印象です。

また今作の特徴として、ホムの強化要素も見逃せません。道中に出現する特定のマスに止まるとホムが強化されるため、手数で攻めることもフィジカルを強化してゴリゴリ殴ることもできそうです。
デッキ構築でよく見かける『シナジー効果』で無双するのではなく、じっくり育ててQTEで戦う印象を筆者は受けました。育成要素の存在も相まって、じっくり何度も遊びたい仕上がりとなっています。
技を学んでステータスを鍛える育成要素で周回性◎

今作はデッキを構築するというより育成SLGの手触りに近く、コンボやシナジーといったメカニズムを前面に押し出した作品ではありません。レベルの概念はありませんが、RPGのような感覚を覚えます。
「コンボがないと火力が出なそう…」と思うかもしれませんが、今作の肝は育成要素にあります。ダンジョン最奥のボスに向かう道中、戦闘マスを踏破すると必殺技ではなく能力値を上昇させるカードが登場。

暴力的な攻撃力を持っていれば、シンプルな技構成でも物理で敵をねじ伏せられます。バッキバキに防御を鍛えてタンク役として育成すれば、ソラリスを守りつつ強力な魔法で敵を一蹴できるでしょう。
ソラリスに育成要素はありませんが、装備品で代替えが可能とのこと。MPの都合でスキルの連発はできませんが、特大ダメージやシールド付与、HP回復など多岐に渡って活躍するのでバランスも取れています。

総じてキャラ強化とスキル習得の2軸を往復する形でビルドを組む作品になりそう。成長のバラツキが発生するためリプレイ性も高く、他作品と似ているけど少し違う形で差別化されていると感じました。
開発者の『tomo-mana』氏にお聞きすると、「成長要素を継承して再戦できるリプレイ報酬」も検討中とのこと。デッキ構築ローグが苦手な方も設定次第では、マイルドな難易度で楽しめそうな予感がしました。
見せ場が光る魅力的なキャラ

ゲーム性ばかり語ってしまいましたが、今作は登場キャラが軒並みカッコかわいいんですよ。主人公ソラリスとホムンクルスのホム以外にも、魅力的かつ関連性の深いキャラも続々登場。
tomo-mana氏いわく「ビジュアルから興味を惹かれている方も多い」とのことなので、現在公表されている登場キャラから2名を紹介しようと思います。
魔法学校の同期『テティア』

魔法学校の同期だった秀才魔法使い。年下の嫌味キャラと思いきや、ソラリスと仲良くやっているようなので、幼馴染的なポジションなのかな〜とか思ったり。どうやら何らかの病気を患っており、クスリを飲みながら生活しているらしい。
三賢者『メルキオール』

最強の魔法使い『三賢者』の一人かつ魔法学校の先生。溢れ出んばかりの風格と可愛いモノに目がない性格が合わさり、作中屈指のお姉様キャラとして君臨しております。絶対に強いよね、この人。めちゃくちゃな性能の氷魔法とか使いそう。
HARF-WAY コマーシャル

取材中にまさかの一言
「実は、全て伏線なんです」

ここまでの取材で『高品質な育成デッキ構築作品』の印象を持っていたのですが、tomo-mana氏から「ソラリスのMPが少ないのには理由があるんです」と寝耳に水だった伏線の話が飛び込んで来ました。
ここに来て思わぬ事実に遭遇。tomo-mana氏は続けて「ホムンクルスを使っているのにも理由があるんです」と教えてくださり、「それってゲームの都合じゃなかったの!??」と衝撃が走りました。

思い返してみると、試遊版にちょろっと登場したソラリスのお母さんも「時間がない」的な含みある発言をしていました。まさか壮大な伏線になっているとは露知らず、どうやら裏がありそうです。
可愛いホムンクルスを育成しつつ、リソースの乏しい主人公のスキルを適宜使ってダンジョンを攻略するデッキ構築作品。これは表面上の話。ホントは意味深に包まれた伏線を一つづつ回収して、物語の謎を紐解くゲームなのかもしれません。

「なぜそれを前面に押し出さないんですか!?」と思わず突っ込んじゃいました。惹きあるビジュアルとゲーム性で勝負してると思いきや、蓋を開けると濃厚ADVが飛び出してきた印象です。
tomo-mana氏は「実はタイトルにも秘密がありまして…」と謎かけのヒントのように情報を出してくださり、こちらも「えっ!まだ伏線があるんですか!?」と取材そっちのけで素を出してしまいました。ちょっと話が変わってきますよね。
「納得のいくゲームにしたい」から生まれた個別エンド

根掘り葉掘り探ってみると、特定の条件を満たした場合のみルートが分岐してキャラ別エンドに繋がるとのこと。各キャラが物語の伏線を握っており、異なる視点から世界観が語られる形になるそうです。
またtomo-mana氏は「各ボス戦では個別のBGMを用意して、各キャラクターが持つ世界観を引き出したい」と企んでいるようで、話を伺うほど不明瞭な部分が点ではなく線で結ばれているように感じました。

物語の文脈だけで統一感を出すのではなく、グラフィックやサウンドを含めた全要素でゲームを紡いでいく姿勢に王道RPGの面影も。サクッと遊べる手触りながらも、JRPGのような読後感を与えてくれる作品になるのかなと予想しています。
取材のなかで「納得がいくゲームにしたい」と仰っており、ストーリーやシステムはもちろん、操作感も含めて意味がある形にしたいと教えてくださいました。遊び手からしても「あ~だからそうなってるのか!」と気づく瞬間って気持ち良いですもんね。

ローグライクが持つ周回性とノベル作品のようなフラグ回収。双方の美味しい部分を掛け合わせた印象です。見た目がリッチなデッキ構築作品だけで素通りするのは勿体ないのでチェックしてみてください!