神保町古書店街に、行こう!~玄人からはじめましてまでだいたい網羅~

みんな性格診断って好きですよね。

ちょっと下のやつ、やってみてくれません?

はい、というわけで元気がない人以外は神保町へ行きましょう。

この記事の内容はこんなかんじ。

  1. 神保町古書店街歴史入門
    まずは神保町の古書店街とはどんな街なのかを簡単に紹介
  2. 神保町を食べ尽くせ!
    続いて本より団子なあなたも大満足のおいしい物を紹介
  3. 神保町の景色を楽しむ
    最後にいい感じのお散歩コースや景色の見どころをピックアップ

オマケとして在庫検索という概念が存在しない神保町古書店街の在庫を(ある程度)把握する便利な豆知識付きの大満足パックとなっております。

好きなところから読んでね。

1.神保町古書店街歴史入門
~江戸時代から現代まで~

150店舗を超える古書店が立ち並ぶ神保町古書店街(神保町の中でも、古書店がずらっと並んでいる地域)には、JR御茶ノ水駅、地下鉄神保町駅、地下鉄九段下駅の三駅から歩いていけます。

とにかく古書店街に早く着きたい方におすすめなのは神保町駅A7出口。古書店街並びの、ちょうど真ん中あたりに出れるので覚えておくと便利です。

▲パイプがかっこいい出入口

※注意!
ここには階段しかありません。

幽乃れれ
エレベーターはA8、A9出口に設置されています!

もし古書店街を観光目的で訪れる方は、何よりもまず「古書店MAP」を手に入れましょう。わりかしどこの本屋さんにも置いてあります。

▲半年から1年の間に一回くらいの頻度で発行されてる気がするやつ

同じ内容がこちらのサイトにも掲載されています。

▲大きさも納得の情報量

150店舗も本屋があってどうするんだよと思うかもしれませんが、それぞれに得意分野があります。王道の文学から古典、外国書籍に特化した本屋もあれば美術やサブカルに特化した本屋も。

1900年代後半の本は比較的新しいモノ判定のため、店の外に出ているワゴンは例外として、扱っている書店は少ないかもしれません。そんな時は新刊書店である東京堂や書泉グランデに行きましょう。(でもめっちゃ正直に言うと新刊書籍目当てなら丸善丸の内本店とかジュンク堂池袋とかの方が楽しいです。私は!)

ちょっと寄り道。神保町はいかにして古書店街となりしか

ここから少し歴史のお勉強。読まなくても死にゃしないので興味ない人は飛ばしちゃってください。でも知っとくと古書店街散歩がちょっと楽しくなるはず!いやわかんないな~でも私が楽しいから書くね。

というわけで時は江戸時代に戻って……今は有斐閣(ゆうひかく) という出版社があるあたりに神保長治(じんぼう ながはる) さんが住んでいました。旗本(武士の身分を示す名称)である神保さんちはめちゃくちゃデカかったので、お屋敷の前は「神保通り」と呼ばれており、それが現代にまで残って地名になった、と言われています。

それから少し進んで時は明治。このあたりに法律関係の学校が多くできました。学校ができると、学生が集まる。授業を受けるには、教科書がいる。教科書を買うには、本屋に行く。不必要になり売られた教科書は、下の学年が買っていく。

そんな教科書売買スパイラル(私が勝手にそう呼んでいます)のために、古書店が多く集まりました。上で話した有斐閣も今では法律関係の出版社ですが、その始まりは古書店でありました。

現代においても神保町は大学に囲まれており、一番目を引く高いビルは明治大学。キャンパスが点在する日本大学。その他共立女子大学や専修大学も神田、神保町周辺に後者を構えています。

はい、これでお勉強終わり!
次はおいしいものの話をしましょう。

2.神保町を食べ尽くせ!
~ごはんからおやつまで~

店や学校が集まるところには人も集まる。人間は生き物なのでご飯を食べます。というわけで神保町には、書店と同じくらいおいしいものがたくさんあります。

私が行ったことのある店の中から、おすすめなものをごはん系・喫茶店系に分けてご紹介します。

幽乃れれ
行くよ〜!

ごはん系:しっかり代表
「天麩羅 はちまき」

【公式HP】
https://gfyg100.gorp.jp

くるっと結んだ穴子の骨のてんぷらや、大きな海老天が嬉しい天丼の店です。

カウンターに座ると、めっちゃ太くて長い菜箸で様々な食材をつぎつぎ揚げてゆく様子が見られます。お弁当も売ってる。

古い構えの店内には、江戸川乱歩をはじめとする作家の集まりでの写真が飾ってあります。同じ天丼を食べていた……のかもしれません。

ごはん系:麺もの代表
「うどん 丸香(まるか)」

【食べログ】
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13000629

カルピスバターを使ったメニューが有名な店ですが、私は季節ごとに変わる揚げ物が好き。

お昼時に行くとかなり並ぶので時間には余裕を持って。あと会計は現金のみです!

私はこれを知らず一度財布を持たずに行き、50分ほど並んだ末に気づいて泣く泣く諦めた経験があります。外まで漂うおいしそうな香りが逆に苦しかった。1000円札握りしめていきましょう。

ごはん兼喫茶店 カレー,本ごちゃまぜ
「神保町ブックセンター」

【公式HP】
https://www.jimbocho-book.jp

神保町はカレーで有名ですね。神保町で働いたこともあるし辞めてからも最低月に一回は神保町に行くのですが、私、実はカレーを食べたことがほとんどなくてですね……。あの、うん。だってどこもめっちゃ並んでるんだもん!

というわけでここは並ばずにカレーを食べられるお店。古書店が並ぶ靖国通りに面している珍しいお店です。カレー以外もおいしい。シェアオフィスなんかもやっている手広いお店で、食事以外にものんびりできる喫茶店として、シンプルに岩波関連の書籍が充実している新刊書店としても使うことができます。

わかりやすい場所にあるので、待ち合わせに使うのもアリ。

喫茶店系:ウインナコーヒー発祥の店「ラドリオ」

【食べログ】
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13006555

スペイン語で「レンガ」を意味する店名の通り、レンガの壁が目立つ老舗喫茶店。閉店すると聞いてしょんぼりしていたのですが、場所を変えて再オープンしました。レンガ壁も健在!

コーヒーカップに生クリームで蓋をしたウインナコーヒーの発祥はここと言われています。なんでも長時間議論している間にも冷めにくいからとのこと。夜はお酒も飲めたはずです。

喫茶店系:荒ぶるSNSとは対照的な静かな空間「眞踏珈琲店」

【公式HP】
http://coffeemafumi.html.xdomain.jp/

古書店街からは少し離れていますが、とてもいいお店です。何がいいって、壁一面が本棚!そこにぎっしり詰まる大量の本!

二階の席でゆったり過ごすもよし、一階のカウンターでほかの人の話声に耳を傾けるもよし。コーヒーがおいしいのはもちろんのこと、季節のケーキやカクテルも、何を口に入れてもおいしい!神保町に行く機会があれば必ず足を運ぶことにしています。

少し価格帯がお高めですが、あの空間で過ごす数時間もセットと思うとリーズナブル。お財布と相談しつつ通いましょう。

3.神保町の景色を楽しむ
~見どころから一日お散歩コースまで~

まず避けたい日をお伝えします!雨の日と、日曜日。

雨の日は毎回書店の前で傘をたたむのが面倒だし、本を濡らしてしまう可能性があるので極力避けたいです。日曜日は古書店がほとんど閉まっているのですが、飲食店なんかは開いているので、本目当てでなければあえてこちらを狙うのもアリ。

というわけで!「神保町古書店街に初めて行く」または「そんなに行ったことないからちょっと観光したい」あなたにお勧めのお散歩コースを用意しました!

▲超・簡略!れれ式神保町お散歩マップ

スタートはあえての九段下駅!

端から端まで楽しむために、出発はあえての九段下駅。書店の棚をしっかり見るつもりならどれだけ時間があっても足りないので、早めに出発するに越したことはありません。私は明るい時間が嫌いなので、いつもギリギリ……15時に神保町駅着で歩き始めますが毎回「もっと早く来ればよかった〜」と後悔します。

九段下から靖国通りをたどり、そのまま靖国通りコースor一歩裏手のすずらん通りコースに分かれます。それから眞踏珈琲店で一休み、御茶ノ水まで歩いてJRで帰宅する計画です。

九段下駅周辺は書店がほぼないのですが、5分ほど歩くと突然「本屋しかないゾーン」に入ります。そこからはもう正直地図なんか忘れてもいい!!!だって右手に大量に本屋があるから!!!もう気になったとこをじゃんじゃん見てこ!!!

でも一応見どころを紹介しておきますね。

レッツゴー古書店街

きっと、初めて九段下方面から神保町に入った人間はまずブックハウスカフェの前で足を止めるはず。一階は児童書、二階は洋書の専門店「北沢書店」です。石造りのでっかい本屋さんです。好きに回りましょう。

ところで、運よく空襲の難を逃れた神保町には、対象〜昭和初期の古い建物が多くあります。

そのうち木造代表が「看板建築」。当時は立地の関係で前に突き出すような装飾を施せず、苦肉の策として2,3階建てのまっ平らな店構えと窓を採用しているのが特徴です。次に見える「矢口書店」は、そんな看板建築の代表と言ってもたぶん過言ではありません。

▲演劇や映画、音楽が専門。

正面左、外に面した壁に少しだけ並んでいる人文系の本に掘り出し物があったりと、個人的にお世話になったお店です。神保町では店外にある棚やワゴンも要チェック!

▲よく見るとお隣も看板建築ですね

こんなかんじでこの様式の建物が点在しています。上野周辺とか湯島のあたりにもあった気がするな。あちこちにあるはずなので探してみてください。

人文系の本がお目当てなら矢口書店横の路地をちょっと入ったところにある「愛書館中川書房」「文華堂書店」も見ておきたい。一昔前のアイドルやロックバンド、サブカル系の本がお目当てならその先の「ブンケンロックサイド」がおすすめです。(ゆうひかく)

あ!その隣には「原書房」がありますね。ここはとても珍しい、易学(えきがく) の専門書店です。

編集長
新明解国語辞典によると、易を使用する占いに関する学問だそうです

そしてこの先に時間泥棒のボス「神田古書センター」が待ち構えています。ここは本当に恐ろしい。一階の書肆高山本店(しょしたかやまほんてん) をはじめ、二階には漫画・サブカル専門の夢野書店、三階は生物専門の鳥海書房、四階は安定の人文系梓書房、五階は児童書のみわ書房。そして七階には!ボードゲームのすごろくやが入っています!

……とこんな調子ですべての本屋を見て回るので時間がすごい勢いで溶けて行きます。できるだけ早くに来た方がいい。ちなみにまだ半分も歩いてないです。

疲れが少し溜まってきたところに先ほど紹介した喫茶店を兼ねた書店である『神保町ブックセンター』が現れます。せっかくなのでここで一休みしましょう。

さて休憩を終えて大きな交差点を渡った先では、目的によって2つのルートに分岐します。

  1. このまま古書店巡りを続けたい方
    「そのまま靖国通りコース」
  2. 雑貨屋新刊書店を見て回りたい場合
    「一歩裏手のすずらん通りコース」

欲張って両方もアリですが、来た道を戻ることになるのでちょっと体力が必要です。

▼「そのまま靖国通りコース」

まず目に入るのは多くの古書店店主が修行を積んだ歴史と風格漂う(ちょっと入りにくい)一誠堂書店。めちゃかっこいいので見てほしい。店内にある石造りの階段も、手が届かないほど高い本棚も圧倒的。

どの書店も足を止める理由にあふれていますが、私としては玉英堂書店をおすすめしたいです。ガラスの戸が好きなので。

▲本の形をした窓が!

一誠堂書店をすずらん通り側からから見ると、設置されている隠れた見どころ。かなり上の方です。ぜひ見つけて!

▼「一歩裏手のすずらん通りコース」

すずらん通りには先ほど紹介した「天麩羅 はちまき」東京堂書店、アジア系の書籍に強い内山書店や、もう一歩裏に入るとSFとミステリ専門の羊頭書房などがあります。

「本の情報量多くてもう疲れちゃったよ〜」という方には、これまた石造りの古い店構えが素晴らしい「文房堂」がおすすめ。画材専門店ですが、一階には雑貨が多く並んでいます。かわいいものが多いので散財がはかどります。

【公式HP】
http://www.bumpodo.co.jp/

ここからコース集合

というわけで最後は『眞踏珈琲店』で体力を回復しつつ、買った本を覗き見してのんびり過ごし、御茶ノ水駅か神保町駅から帰ります。お疲れ様でした!

ちなみに靖国通りをそのまま進むと秋葉原までお散歩もできます。足に自信がある方におすすめ。

4.質問「目当ての本があるのですが、神保町にあるかどうかわかりません……。最近の書店はネットで在庫検索できるじゃないですか。神保町にはああいうのってないんですか?」

幽乃れれ
完璧なものはないですっ……
(とても渋い顔になる)
が、手段がないわけではありません!

というわけで、最後は想定読者を180度変えて「マジで探している本があるけど見つからなくて困ってる」人向けのTips集で締めます。

今はまだ神保町を使いこなせていない人も、きっと覚えておいて損はない!

BOOK TOWN じんぼう

【公式HP】
https://jimbou.info/booksearch

最初に紹介したあの大きい地図を掲載している、神保町古書店街オフィシャルサイトの中にある検索機能です。神保町の書籍データベースに登録されている本の情報を検索できます。

書籍名や作者名ではなく、大まかな内容から古書を探せる検索機能「連想検索」も完備。精度はまあまあですが、「魚が出てくる絵本」みたいなあいまいなワードで本を探せるのでまあまあ便利です。

日本の古本屋

【公式HP】
https://www.kosho.or.jp

こちらはその名の通り神保町に特化しているわけではないのですが、神保町古書店街に並ぶ書店の多くが在庫データを登録しており、参考になります。

お目当ての本がヒットしなくてもジャンルが近い本の在庫を持っている書店を見つけて電話して探してもらう……なんてこともできます。

(ちょっと番外編)
千代田図書館コンシェルジュサービス

【公式HP】
https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/chiyoda/concierge/#:~:text=%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E3%81%AE%E7%B7%8F%E5%90%88%E6%A1%88%E5%86%85%E3%82%92,%E4%BA%8B%E5%89%8D%E3%81%AB%E3%81%94%E4%BA%88%E7%B4%84%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84%E3%80%82

かつてすずらん通りに「本と街の案内所」という神保町古書店街の観光案内サービスを提供している施設があったのですが、残念ながら2024年の4月で終了となってしまいました。

……が!そこで案内を担当していた千代田図書館の図書館コンシェルジュはまだ千代田図書館(九段下駅から徒歩5分、千代田区役所内)にいる様子。

この方々は上のデータベースや自分の足で実際に古書店街を歩いた経験と知識から神保町を案内してくれます。オンラインや電話での相談はできないので、実際に足を運ぶ機会があればぜひ。神保町に限らず、千代田区のことならなんでも知ってるすごい窓口。

これで終わり!ここまで読んでくれたあなたも、今日から神保町古書店街マスターだ!

以上です!

書店はどこも入りにくい雰囲気があるかと思いますが、本を濡らしたり破いたり、大きな声で騒いだりしなければ大丈夫。いっぱい本買ってね〜。

参考書籍
千代田区(2005) . 『江戸・東京の歴史をたずねて 千代田まち事典』. 千代田区区民生活部

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