創作に欠かせない工程である、登場人物の設定。私は容姿や性格はぼんやりイメージできるものの、彼らに名前をつけるのが本当に苦手!もはや苦手すぎてこの記事を書いてます。
「ネットで調べるのもいいけど、やっぱりこういうときこそ“仲間(マブダチ)”に頼るべきっしょ!」ということで、今をときめくフリーゲーム制作者のみなさまの知見をお借りしました。
いい機会なので、自分の苦手意識についても言語化していこうと思います。(みんなもなんで苦手なのか考えてみよう!突破口が見つかるかもしれないよ!)
なぜ登場人物に名前をつけるのが苦手なのか
私の場合は、『明確な人物イメージがあまりないから』かなと推察。
普段つくっているゲームはノベルゲームでテキスト中心なので、ビジュアルがないものばかりなんですよね。それと、なんてことのない日常を描くのが好きで、固有名詞がなくても成り立つというか…。※ぜひプロフィールにある自作ゲーム一覧をご確認ください
仮にビジュアルがあっても「見た目で覚えやすい名前にしよう!」とユーザーファーストを優先するので、自分のこだわりをのせるポイントにもしていません。(覚えやすい名前がこだわりとも言えるけど…)
いろいろ語ったものの「自分の表現したいものに名前の影響力がない」と考えていることこそが、おそらく苦手意識の要因です。
意外だったのが、ゲーム制作者の方でも「名前のつけ方は毎回悩む」という意見が定数あったこと。もちろん「名前をつける工程大好き!」という方もいたので、多角的なライフハックが得られたと思います。
ゲーム制作者のみんなに聞いた名前のつけ方
Xでのリプライ・引用RP・DMで直接お話できた方を掲載していますが、RP先でお話されていた方も拝見しました!拡散・いいね含め、みなさまありがとうございました!(順不同)
鏡みらさん
引用元の作品:『誰そ彼の陽』
https://novelgame.jp/games/show/6037
- その場で浮かんだ名前をそのまま使用する
- しっくりこなければ一文字だけ変えることもある
- ふと思い付いた名前、面白い名前を見付けたら参考にすることも
- 自分が付けた名前に愛着や責任を持ってその人物の物語を紡ぐ意識
ゲーム制作の際、プロットを組まずに書ける部分から着手する『鏡みら』さん。止まったら別の場面を書き、最後に整合性を合わせるフローと登場人物に名前をつける際の感覚は同じだそうです。
みらさんの代表作『誰そ彼の陽』に登場する「望海(のぞみ)」という名も数秒で思いついたとのこと。「名前を付けてからストーリーを書くのではなく、名前から海をキーに物語を構築したように、物語のベースに加えていくパターンは多い」と仰っていました。
奇天烈な名前すぎても没入感が削がれるし、なにより覚えられない。名前で“作者のエゴ”をどこまで出すかは難しいよね…と二人で終話しました。きっと、これからも悩んでいくテーマなのだと思います。
スカさん
引用元の作品:『記憶の翼』
https://novelgame.jp/games/show/8612
- キャラのモチーフを名前に入れ込む
- モデルになった人物の名前の字を頂戴する
- 既存の文献などからお借りした名前もある
- ファンタジーでの名づけは参考サイトを活用
同人ゲーム開発チームSOALの『スカ』さんは、作品によって名前のつけ方を変えているご様子。カラオケ店員のキャラクター「青江」の場合、KARAOKEの母音のみを抜き出してAAOE→ああおえ→「あおえ」というように名前っぽく変換したそうです。
そのほか、狐がモチーフのキャラクター「稲葉莉子(いなばりこ)」は、狐→いなりと連想。『「いな」ば』と『「り」こ』の姓名にモチーフを分解したそうです。思いつかない・候補がもっと見たい場合は、名字由来netなどを参考にすると仰っていました。
現在制作中のホラーゲームに登場する「初野 嶺(はつの・みね)」というキャラクターは、とあるタレントさんをモデルに、許可を得たうえでご本人から何文字かいただいているそう。作品への気合を感じますね!
ちなみに現在公開中の『記憶の翼』という乙女ゲームに登場する「ハギト」「カイム」は、既存の文献から拝借。そのほかファンタジーで名づけをするときは「欧羅巴人名録」を活用することもあるのだとか。
スカさん自身、シンクロ率80%を目安に名前をつけることが多いらしいです。名づけが苦手ならモチーフ分解法がおすすめと聞き、まつぼもきっちりメモしました。サイトのランダム生成も最終手段としてとっておきます!
如月燎椰さん
引用元の作品:『虹色の夢』
https://novelgame.jp/games/show/8624
- 名づけは、基本的にThe feeling!
- フルネームの音や響きも大切にする
- 異世界の国を現実の国イメージで想起させる
- 名は体を表すことを重要視し、存在の意味を付属でつける
乙女フリーゲームにて『逆ハー』の魅力を広めている『如月燎椰』さん!名づけに重要視しているのは音の響きとフィーリング。そして現実世界に存在する【意味】を付属でつけることだと話してくださいました。
代表作である『虹色の夢』の主人公、「ロノア」は響きで決めたそうです。ただキャラクターにイメージをもたせることも大切にしており、主人公は向日葵のイメージ。だからこそ対となる双子の弟は太陽の意味を込めて「サニー」と名づけられました。
また『虹色の夢』には、さまざまな国家が登場します。個人的にすごいなと思ったのが、名前を聞いただけで出身国のイメージが湧くことです。たとえば、「ハル・スヨン」は中華系国家を出生とするキャラクターとなっており、名前からなんとなく出身国のイメージが想像できますよね。
ほかにも、「イシャン・クシャトリア」や「ラーヒズヤ・カルメン」といったエキゾチックイケメンがおり、どちらもヒンドゥーにて実際に意味のある名前にしているそうです。名前に意味をもたせる如月さんの手腕が光っています。(総勢35名というキャラクター数を考えると、一人ひとりに並々ならぬ愛情をかけているのが伝わってきますね…!)
まさに名は体を表す名づけ。「さすがベテラン制作者さんだな…」と深いこだわり、一貫性を感じました。
ma,marineさん
引用元の作品:『VIVIAN』
https://novelgame.jp/games/show/6975
- 容姿を想起できる名前にする
- 海外で多い名前をネットで検索
- 作っているうちに愛着がわいてくる!
ほのぼのとした作品から、ドラマチックな作品まで手がける『ma,marine』さん。1作目の『高層マンション』は、立ち絵が存在しない純粋なノベルゲームでした。だからこそイメージを抱きやすいよう、キャラクター性を言語化して名前にしたのだとか。
たとえば、下記のキャラクターはイメージをベースにして組み込んだそうです。
- 「可愛く、癒し系の女性」は【河合由美】
- 「綺麗で仕事が出来る女性」は【北川麗子】
- 「福よかで明るい女性」は【福田明代】
海外的な世界観で展開する『VIVIAN』では、ストーリー上、V.I.Xのどれかが入る名前をネットで検索。主人公の両親の名前も、海外で多い名前から誕生したのだとか。創作って検索力も問われますね…!
最後に「不思議なもので、自分が作った登場人物の名前とキャラって、作ってるうちに愛着がわいてきちゃいます」と仰っており、個人的にとっても共感。どんな名前も、正解にしていくのはそのキャラクターの「生きざま」なのかもしれません。
deliさん
引用元の作品:『北限のアルバ』
https://novelgame.jp/games/show/9370
- 昔は脳内に浮かんだものを即採用していた
- 名字・名前一覧を眺めてピンとくるものを選ぶ
- いずれにしても名前の由来はほぼないことが多い
ゲームサークル『Tomorrow´s Weather』の『deli』さんは、インスピレーションを大切にした名づけ方でした。しかし代表作『北限のアルバ』では、攻略対象に季節を彷彿とさせる漢字や読みを入れたとのこと。
- 春は「桜庭隼人(さくらば はやと)」
- 夏は「八谷日向(やたに ひゅうが)」
- 秋は「瀬戸 恵介(せと けいすけ)」
- 冬は「羽澄 透也(はずみ とうや)」
春夏秋冬を上から並べていると、たしかに季節感がありますね!
「名前は人となりが分かる前に親が付けるもの」とも考えているそうで、名前がキャラの性格に影響を与えることもあると仰っていました。確かに…これが「勝手にキャラが動く」というものなのかもしれません。
あえて名前をつけないという回避方法もある
私は名前をつけないことで作品の味にしていることもしばしば。ピンチはチャンス。お話を聞くなかで、同じ意見ながらも下記のように独自の考えも拝見できて嬉しかったです。
- 彼とか私とかでしか出せない関係性もある
(鏡みらさん) - 名前が無くてもお話が進む時は省くこともある
(柘榴雨さん)
読み手に委ねるために名前をつけない、作中人物が相手の名前を呼ばないなど、必要に応じてあえて名前をつける工程を外すこともあるようです。
私は作品が世に出たら手離れというか「私の想いはのせても受け取り方は読み手次第だよ〜好きに感じ取ってね〜」みたいにしたいので、あんまり後味残るインパクトを付けたくないんですよね。
解釈の幅・想像の余地ができる「余白」として、名前がないことを逆手にとって利用するのも面白いんじゃないかなと、個人的には思っております。
ただ、自分の手がけたキャラクターの名前をほかの人に呼んでもらう瞬間は嬉しいもの。この幸せは、やはり名前がないと味わえません。
投稿に反応いただいたご意見には、親しいフォロワーさんから名前をお借りして登場人物に昇華させている・名前を使った小ネタやシナリオに引っ掛けた名前にするなど、やりたいことから決める・あだ名から決めるなど、被りにくさを重視する考え方も。名前に特別感を見出すのも素敵ですよね。
今回紹介しきれていない部分はあるものの、全体として名前も直感を大切にしている制作者さんが多いなぁと感じました。
名前をつけるにせよつけないにせよ、作品の完成度に直結する訳ではありません。創作は理屈より感覚で楽しむものだと思うので、自分が選んだ選択・名づけた名前を正解にしていけばいいのではないでしょうか!