無事に連載コラム第2弾を書けました。今回は個人的に気になっていたRPG『セパスチャンネル』を紹介します。今作はG-MODEの人気タイトル『OU(オーユー)』を手掛ける『幸田御魚(こうだおさかな)』氏が制作した作品となっており、直接的な関連性こそないものの近い世界観を持っています。
ターン制コマンドバトルの王道RPGと思いきや、皮肉と優しさが混じり合う独特の表現が多く、何気ないセリフに心をつねるような影も感じさせます。最近は色々規制されて見なくなったけど、あの時の語感に触れられて嬉しかったです。
開発者様にもインタビューさせて頂いたので、貴重な裏話もこっそり記載しています。記事後半には嬉しいニュース情報も紹介しているので、ゆるりと最後までご覧ください。

※本コラムは株式会社G-MODE(ジー・モード)様の協力の元、フィーチャーフォン(折りたたみ携帯)アプリを復刻する『G-MODEアーカイブス』の紹介コラムを掲載するタイアップ企画です。
『僕が僕の為にするラジオ』
から始まるRPG

ゲーム開始直後、見知らぬ人物がラジオを介して語りかけてきます。音声は途切れてしまい、記憶を失った少年『ボーイ』に視点が切り替わります。声の主は『セパスチャン』と呼ばれる犯罪者?のようです。
その頃、街では人々の影が消失する症状や、記憶障害を引き起こす事件が発生。すべてはセパスチャンが始めた『ラジオ』が原因だという噂も。色々あって、記憶喪失のボーイも濡れ衣を着せられるハメに。

今作は『ラジオ』を主軸にして物語が展開され、ファンタジー過ぎずリアル過ぎない絶妙な距離感で進行します。きまぐれで放送されるセパスチャンのラジオに住民が感化されていくシーンは、何ともいえない尊さと人間らしさが詰まっててほっこりします。
誰かの何気ない行動が他人の人生を良くも悪くも変える。さざ波のような機微を捉える描写が綺麗で、感情の移ろいを丁寧に扱っている印象を受けました。見た目どおりの世界観で安心して眺めていられます。
物語が進むと『LSドロップ』と呼ばれる不思議な飴ちゃんで『アストランド』と呼ばれる精神世界にトリップ…じゃなくてワープできるように。現実世界と精神世界を行き来しながら真相に迫ります。
「なんだ犬か…」通って良し!

『セパスチャンネル』は物語の鍵を握るセパスチャンを筆頭に、記憶を失った少年、影を失った少女、二本足で立つワンちゃんを切り替えながら進めるRPG作品です。物語の展開が気になる濃いメンバーですよね。
操作キャラを任意で変更する『チャンネル切り替えシステム』が導入されており、行き止まりでもキャラを変えればすんなり通れることも。ワンちゃんは人間じゃないので、都合良く色々な道を通れたりします。

気になる戦闘システムは至ってシンプル。レベルを上げて殴ればOKです。レベルアップ時に任意の能力値を伸ばせるため、火力を伸ばせば基本的に問題なく進められます。やられる前に力で黙らせましょう。
またステータスは好きなタイミングで振り直しが可能なので、敵によって味変しながら戦うのが吉。敵の攻撃が激しすぎて耐えきれない場合、素早さを減らして防御に極振りすると何とかなります(特に警察署)。

ステータスの振り方によって規定の能力値を取得すると、ハチャメチャに強い必殺技が解放。鬼コスパの全体回復などが使えるので、試行錯誤しながらステータスを弄くり回すのも今作の醍醐味です。
特殊なシステムとして、全滅もしくは悪いことをすると『ラジーポイント』と呼ばれる数値が増加。これが貯まると真エンドに到達できません。とある場所で帳消しもできますが、手間なのでセーブ&ロードで突破するのが妥当かなと思います。
実は『OU』と通ずる部分も

今作はG-MODEタイトル『OU』とリンクしている部分があり、直接的な関連性は描写こそされないものの共通の世界観を持っています。OUを遊んだことのある方は、雰囲気が似てるなぁ~と思うかもしれません。
ネタバレが怖くて詳しく言えないのですが、二作品とも『複数の世界』を舞台に物語が動きます。遊び手と作品の間にある『何か』について問う描写もあり、幸田御魚氏の大切にしている思想が暗に伝わる場面も。

ゲームが空想の世界で生まれた作り物だとしても、現実世界に対するモヤモヤだったり、自分を見失いそうになる危うさだったり、素朴ながらも人らしさが存分に溢れている作品でした。
「僕が僕の為にする」。そんな当たり前の事について、真剣な眼差しでずっと問われているように感じました。ちょっと堅苦しい言い回しになってしまいましたが、こういう作品好きなんですよね。

キャラクターを操作するプレイヤーに疑問を呈する。今となっては『メタ表現』なんて言い方もしますが、今作は作品の演出よりもプリミティブな圧を感じたので、気になった方は※真エンドを覗いてみてください。OUが好きな方はきっと気に入ると思います。
※ラジーポイントがない状態でラスボスを撃破する
G-MODEさんへの質問タイム!
今回はセパスチャンネルの制作者『幸田御魚』様にご協力を頂き、当時のエピソードについていくつか質問させて頂きました!

誰かのちょっとした行動で知らぬ誰かは救われる

他人の反応や影響力の強さで自分の存在価値を測りそうになるけど、そんな大それたことをしなくても自分の人生を生きて良い。そんな当たり前のことを語りかけてくれる作品でした。
他人への過度な強制力は心を壊すこと。他人を信じて頼ることで心が強くなること。皮肉めいた描写も多いけど、肩を並べて背中をさすってくれるような言葉選びが心地良くて予想通り好きな作品でした。
自分の世界があって、他人と干渉できる世界があって、それを遠目から眺めている世界もある。異なる世界を丁寧に切り分け、紙芝居のように理路整然と繋げたものが今作なのかもしれない。
今作は創作者の物語だと思う。何かを生み出す人がいて、それを見て影響を受ける人がいて。自分のために何かを始めたとしても、果てしなく遠い場所の知らない誰かと通じ合っていたりもする。
自分のために自分の人生を生きる。
普遍的なメッセージは時代を超えても風化せず。
誰かの心に届くのかもしれません。
G-MODEさんからのお知らせ

ジー・モードさんにて『OUパッケージ版』の制作が決定しました!通常版のほか、複数の付録を内蔵した「愛蔵版」も制作中とのこと。
具体的な詳細はまだ伏せられていますが、近く発表があるらしいのでG-MODE公式Xをフォローして続報をお待ちください!