“人間であることを証明する”までの間に、超高評価SFアドベンチャー『1000xRESIST』を遊んでみてほしい

2026年4月10日、インディーゲームショーケース「The Triple-i Initiative」が配信されました。

そこで発表された『Prove You’re Human』は、AIの自我をテーマにしたSFアドベンチャー。開発を手掛けるのは、sunset visitor 斜陽過客です

……といっても、チーム名だけではピンとこないかもしれません。一方で、『1000xRESIST』(サウザンドタイムズレジスト)というタイトルには聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介する『1000×RESIST』は、そのsunset visitor 斜陽過客が手掛けた前作であり、ストーリー体験に特化したSFアドベンチャーとして高い評価を受けた作品です。

本作は、人類が滅びた遥か未来、クローンたちが生きる世界を起点に描かれるSFアドベンチャーです。パンデミックや移民問題、家庭内の不和といった身近な社会問題も描かれており、SFでありながら現実と地続きの重みを感じる物語が終始展開されます。

レビューや考察で盛り上がるユーザーの多さとその熱量からも、本作がストーリー重視のアドベンチャーゲームとして非常に秀逸であることが伺えます。が、本記事では、ストーリーを深堀した解説や考察といった難しい話は一切いたしません。

はっきり言って、このゲームの物語は複雑です。

キャラクターのセリフや巻き起こる展開をひとつひとつ正確に理解しながら進めるのは至難の業。それでも画面から目が離せないのは、その「なんかよくわからん」という感情を丸ごとを飲み込んでしまうほど、ビジュアル表現がカッコイイからです。

考察系の記事はもうすでに秀逸なものが散見されますので、本記事ではそのカッコよすぎるビジュアルを軸に、本作の魅力をご紹介したいと思います。

人類が滅びた世界で、“なんかすごい反逆”がはじまる!

謎の異星人「占有者(オキュパント)」がもたらした疫病により、人類がほぼ滅びてしまった世界。唯一免疫を有していたため生き残った少女・アイリスは、自らのクローンを生み出し新たな社会を築いていきます。やがて彼女は“オールマザー(全能の母)”として崇められる存在となり、1000年後の世界を支配している……というのが本作の設定です。

ゲームを始めると、SF感満載な衣装や背景が印象的なムービーが始まります。

後方の青いキャラが多分主人公だろうな、ということくらいしかわからぬ間に、

刺した……ッッッ?!

なんだかわからないけど、非常に反逆的なことが起こったようです。この2人の関係性どころか名前すらまだわかりませんが、おそらくこの世界において革新的な出来事が成されたということは何となくわかります。

なお、これは本来、物語の後半に辿り着くシーンであり、決定的な転換点を先に見せるという映像作品で良く見られる粋な手法です。

突然の衝撃的なシーンが切り替わると、現在の時間軸に移り、ここから本格的に物語が始まります。

本作の主人公は、創造主である“オールマザー”が生んだクローン。その中でも、特別な役割を与えられた選ばれし6人のうちの1人・ウォッチャーです。

彼女の役割はウォッチャーの名の通り、“視ること”。神経交信(コミュニオン)と呼ばれる能力を用いて他者の記憶に入り込み、遺伝子に刻まれた記憶を辿ることが彼女に与えられた能力であり義務です。

こうしてオールマザーの記憶を辿る中で、絶対的な信仰の対象である彼女と、彼女と自分たちを取り巻く世界の真実に対峙していく――これが本作の大まかなあらすじです。

“見慣れた景色”から“見たことない未来”まで、どこを撮っても絵になる世界

オキュパントの引き起こしたパンデミックで人類崩壊、生き残ったオールマザークローンだけのソーシャルコミュニティを形成し、選ばれしシスターであるウォッチャーコミュニオンサウザンドタイムを遡りレジストする物語か~」

……なるほど。わからん。

現実離れした世界観が1000年も積み重なった作中の状況に、ポッと出のプレイヤーの思考がすぐ追いつけないのは当然です。こんな感じで終始、この世界特有の思想や秩序のもとストーリーが綴られていきます。

けれど、置いてけぼり感は皆無。むしろ、わからないながらに「この後の展開はどうなるのか」が気になって、どんどん物語に惹き込まれる仕掛けが、本作にはあります。

それは、視覚表現の秀逸さ、つまりビジュアルがめちゃめちゃカッコよくてこの先のシーンを映像で見たくなるからです

主人公・ウォッチャーが神経交信(コミュニオン)の能力を使って、創造主であるアイリスの記憶(過去)と現在を行き来することで本作の物語は進行します。もちろん「わからん」となりますが、スタイリッシュな画面構成と演出で不思議と満たされているのです。

アイリスの記憶で描かれる過去は、おおよそ私たちにとって馴染みのある現代に近しい世界。かわって、ウォッチャーたちの生きる“現在”は、SF感あふれる近未来的な空間として描かれています。

クローン社会が形成されている現在の地下シェルターは「果樹園」と呼ばれ、偽りの空の下、「シスター」と呼ばれる選ばれし6人のクローンやその他のクローンたちが暮らしています。一見、生活感のない機械的な空間に見えますが、意外にBARなんかもあって、歩き回っているだけでワクワクする造りです。

ただ、ストーリー同様この果樹園の構造も複雑で、迷子になるプレイヤーが続出しています。最初は筆者のマッピング能力が著しく低いだけかと思いましたが、ユーザーの感想を検索してみると「果樹園だけは許さねえ」という嘆きが散見されました。

なお、果樹園にいるときだけマップを表示させることができるのですが、

わかるかい!(怒)

しかし、探索するだけでも楽しいほど、空間デザインが秀逸なのは間違いありません。ウォーキングシミュレーターとして割り切ってのんびり散歩するのも良さそうです。

視覚表現で素晴らしいと感じたのは背景美術だけではありません。テキストの表示ひとつとっても、趣向を凝らしまくっているのが『1000×RESIST』です。

フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』を彷彿とさせる、パンチの効いたテキストです。

テキスト表示や時間軸移動の際のカメラワークというギミックはもちろん、単純に絵面のセンスがすごい。映画でいうところの“見せ場のワンカット”くらいインパクトのある場面が全編にわたって続きます。不穏な空気感が好きな層には、殊更刺さることでしょう。

エンディング直前までは分岐のない一本道のストーリーでありながら、これらの視覚的に多彩な表現方法により、「ただストーリーを読まされているだけ」という感覚にはなりません。常に斬新な世界が画面いっぱいに広がるので、映像の中を突き進む感覚で物語は進んでいくのです。

感情がデカすぎる女たちが世界を創り、終わらせる

本作がなんかカッコいい絵面で構成された世界観であることは、おわかりいただけたかと思います。

しかし、イケてる要素は他にもあります。そう、この物語の主人公であるウォッチャーをはじめとする6人のシスターたちです。

本作はただ一人、免疫を持ってパンデミックを生き延びた少女・アイリス(後のオールマザー)以外の人類が滅亡した世界。今はそのアイリスから生まれたクローンたちで社会が形成されています。

つまり、全員女性で、全員同じ顔をしています
クローンなので。

であるにもかかわらず、6人のシスターたちはそれぞれ個性的で魅力的なキャラクターをしています。そんな彼女たちを、ひとまず紹介させてください。

<ウォッチャー>

主人公のウォッチャーは、他者の記憶を観測する役割を持つシスターです。

「コミュニオン」によってアイリスの過去を追体験しながら、世界の真相に近づいていきます。感情表現はあまり豊かではありませんが、物語が進むにつれて自身の役割や信仰の対象であるオールマザーへの疑念に戸惑い、やがて反逆を決意していく存在です。

正直に言いまして、最初に本作を見かけたとき、「メロい眼鏡男子いるじゃん!」と思ったことがキッカケで購入しました。女の子でした。

<プリンシパル>

プリンシパルは、クローン社会の規律を守る役割を担うシスターです。秩序を何より重んじ、オールマザーの意志を絶対のものとして行動します。オールマザーに一番近い存在であり、特別な関係にある存……おっと、誰か来たようだ

<バンバン・ファイア>

ど、どういう名前? と面食らってしまう彼女は、軍事組織のトップを務める戦闘担当。果樹園を外敵(主に占有者を想定)から守るその役割に相応しい好戦的な名前でありながら、本人は繊細で感傷的な一面を覗かせるキャラクターです。

<ノウアー>

眼鏡とロングヘアが知的さを醸し出している彼女は、知識保全のトップを担っています。図書館のような構造をした部屋を拠点とする彼女は膨大な知識を有しており、全てを知るが故にとんでもない役割を担うことになります

<フィクサー>

様々な機器の修繕や保全を担当するエンジニアリングのトップです。物語は、彼女がオールマザーに呼ばれて果樹園を離れるところから本格的に始動します。作中で少しだけ語られるウォッチャーとの密な関係を思わせるやりとりに注目

<ヒーラー>

医療分野、及びクローン管理のトップを担う彼女は、ヒーラー(治癒者)から連想する柔和なイメージとはちょっと離れた、シニカルでダウナーな雰囲気をまとっています。筆者の一番のお気に入りキャラクターです。心の中でヒーラーおねえさまと呼んでいます

以上が、オールマザーに代わって果樹園を統べる6人のシスターです。それぞれに違った性質を持つ彼女たちではありますが、同じ人間から生まれたクローンであり、身も心もひとつにしてオールマザーという創造主を妄信しています。

その距離の近さゆえに、尊敬や依存、嫉妬といった感情が複雑に絡み合い、ときに個人の想いがそのまま世界の在り方にまで影響していくセカイ系的な背景も、本作の特徴のひとつです。

女性同士の巨大感情が世界の在り方に影響を及ぼすわけですが、終わり方だけでなく始まり方にも、女性同士の巨大感情が作用しています。

<アイリスとジャオ>

オールマザー・アイリスがただの人間の少女だった遥か過去のシーンで描かれるのは、ジャオという移民の少女。移民二世であるアイリスとジャオとの関係性が、1000年の時を経て巻き起こる反逆劇のキッカケを生み出すのです。

「なんとなくカッコいいし面白い」でもイイじゃない

1000×RESIST』は、SFとか移民問題とかパンデミックとか、いろいろと重たいテーマを扱っている作品です。が、全部をきっちり理解しようとすると、頭も情緒もパンクしてしまうことでしょう。

なのでまずは、「なんかカッコいい」とか「この子たち気になる」くらいの温度で触れてみてほしいです。それだけでも、ちゃんと面白いので。筆者は1周目をクリアしたとき、正直「多分、こういうことだろうか……」くらいの理解度でした。

ただ、それは「よくわからない」というネガティブな感覚ではありません。むしろクリア後も、「あれはどういう意味だったのだろう」と、ふとした瞬間に思い返してしまうような余韻がずーっと残りました。

また本記事の執筆にあたり、スクリーンショットを選ぶために2周目を始めてみると、あれほど曖昧だった冒頭の出来事が不思議と輪郭を持って見えてきました。

1周目はビジュアルや世界観のかっこよさに浸り、2周目から物語への理解がぐっと深まっていく。本作は周回プレイ前提のゲームではないものの、もう1周遊んでみたくなる、そんな魅力を持った作品です。

おそらくこのゲームにはひとつの正解のような感想はなくて、2周したところで全てを理解しきれるものでもないのだと思いますが。

なんかよくわからないけどカッコいい」から始まって、「全部はわからなかったけど、すごく良かったな」で終わる。そんな感じでゲームをやるのも、たまにはいいんじゃないでしょうか。

sunset visitor 斜陽過客の新作発表に端を発して、デビュー作である『1000×RESIST』を紹介しました。デベロッパーの公式Xでも、「新作発表を待つ間にぜひ遊んでみてください」とセール実施のお知らせがあがっておりますので、結びとしてご案内いたします。

公式X

※セールの実施状況や期間は、ストアにてご確認ください。

〈詳細情報〉

ゲーム名1000xRESIST
ジャンルSFアドベンチャー
ストア価格2,300円
リリース日2024年5月10日

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