正直に言うと見た目に力を入れている作品が苦手だ。面白さの確立されたシステムに映えるキャラを盛り込み、安定したクオリティでコンスタントに生み出される作品を眺めていると疲れてしまう。
このメディアで取り上げなくても何処かで紹介されると思うし、自分が書く必然性も感じられなくてダブルの意味で苦手意識を持っている。天邪鬼なんだろうなとも思うけど、同じ感覚の人も居ると踏んでいる。
今回紹介するのは『アルタ/Aeruta』。抜群のルックを持っている作品。見た目が良すぎて敬遠してたけどパン屋経営×2Dアクションに惹かれた。毛嫌いしてた自分を恥じるほど面白かったので紹介させてほしい。
ダンジョン探索で具材を集めてパン屋経営でがっぽり稼ぐ

アルタはダンジョン探索とパン屋経営SLGを合体させたアクションSLG作品です。主人公の『チャヤ』が色々あって『イーフィ』の経営するパン屋さんをぶっ壊しちゃったので弁償するために働く流れで進みます。
ダンジョンに潜って敵を倒してパンの素材を集め、町に戻ってからパンに加工して売りさばく。担当は陳列からレジ打ちまで。慣れるまで忙しいですが、程よいマルチタスクで緊張感もあります。

また各曜日ごとに「販売額UP」「ドロップ率UP」等の専用バフが発生するため、優先順位に悩んだらカレンダーを参考にするのもおすすめ。素材集めと金策が同時に進むとはいえ、悩まないようにガイドが設定されてて良心的でした。
なんらかのアクションを起こすと日付が変わり、新しいバフやストーリーイベントが発生します。取り返しの付かない時限性のイベント等もなく、「やってしまった……。」と思い詰めることもありません。

舞台となる『コムギ広場』に集まる登場キャラは獣人ばかり。筆者はケモナーではありませんが、純粋にキャラとして可愛いです。全力の獣推しって雰囲気でもないのですが、好きな人は嬉しいかなと思います。
アクションとSLGの両輪を回す作品は他にも見かけるものの、程よい難易度や可愛いキャラの存在も相まって取っつきやすいバランスでした。システム同士が上手く噛み合ってて気持ちよかったので、もう少し紹介できればと思います。
ぷちワンオペの『パン屋経営』を絡めたシステムが秀逸

物語序盤は『借金返済』が大きな目的になります。パンを売らないとストーリーが進まないこともあり、素材集めのアクションパートが義務作業になりがちなんですが、アルタはここの作りが上手い。
お金を貯めることで拠点が強化され、パン屋の設備が強化されます。パンの焼き上がりが早くなったり、陳列できる売り場が増えて売り上げもアップ。客数増加や商品単価の値上げがされるので旨味が強い。

拠点が充実するとパン屋以外に訓練所や特殊装備がアンロック。ステ強化やスキルアップグレードはもちろん、特殊装備がアンロックされて火力も爆上がりします。素材集めは面倒ですが恩恵は計り知れません。
しっかり強化すればアクション部分もサクサク進みます。コツコツと素材を集めてパンを売りさばき、RPGの『レベリング』みたいな感じで強化していくと、丁度良い難易度になるんです。

パン屋運営の忙しさも絶妙。レジ操作がQTEになっているので意外と難しく、パンの陳列やゴミ掃除をすべて合わさると中々のマルチタスクに。ワンオペ系作品の入門編って感じがして好きです。
もちろん緩和措置もあって、会計を一瞬で終わらせるシステムや助っ人キャラもいるので難易度が跳ね上がることもありません。難易度を上げれば満足すると投げやりになっている作品も多いなか、丁寧に難易度を設定しているのが印象的でした。
遊び手のモチベを支えるのがメッチャ上手い

上手いなと思ったのがゲームを継続するためのモチベーション作り。アルタはダンジョン探索orパン屋経営で1日が経過するため、何かしらの行動を起こす度に時間経過が発生します。
各曜日ごと特定の属性を持つパン(カチカチ、どっしりなど)が値上げされたり、ボス専用素材の確定ドロップなどのバフが発生するため、やることが明確にあってそれ相応の旨味を得られるのが嬉しいところ。

販売価格もバランス調整されており、後半で手に入る素材を必ずしも使う必要はありません。序盤で作れるパンでもバフの恩恵を受ければ良い値段で売れるため、素材消費が均一になるようになってて上手い。
またパンごとに『熟練度』が設定されており、作れば作るほど販売価格が増加するのもポイント。成長要素によって作業感を弱めてプレイヤーのモチベ維持に貢献しており、マンネリ防止に一役買っています。


物語中盤頃に解禁されるショップを活用すれば、パン制作に必要な素材を高レートで集めることも可能。ラインナップは火曜・金曜に更新されるため、ダンジョン探索と平行して活用すると効率的に進められます。
お金をコツコツ貯めた見返りが大きく、ダンジョンを攻略するたびに仲間が増えて各種要素が小気味よくアンロックされるため、遊び手の飽きを防ぐための工夫が随所に散りばめられているのが魅力です。
HARF-WAY コマーシャル

アルタの面白さは『システムの両輪』だと思う

今作の一番好きな部分は2つのシステムが『両輪でロスなく回っている』ところ。革新的なシステムを掘り下げて魅力的にするのではなく、如何にして相乗効果を生みだすかに注力しているように感じた。
2つの要素を繋ぐ『潤滑油』が存在しており、片方を進めると相方がスムーズに進むようになっている。多少の遊びを残して快適に回る歯車のように、システム同士が噛み合っているのでストレスが少ない。

パンを売るにしても、貯まったお金で広場に建物を建築したりパン屋を改築すれば、売り上げUPや強力なスキルが解放される。また売ったパンの数だけ『パンエナジー』が貯まって一時的なバフも発生。
パンエナジーは基礎ステータスの向上はもちろん、素材ドロップ率上昇や一回復活まで付与できる。設備が強化出来なくてもエナジーは確実に貯まるので、なんらかの恩恵が受けられる設計が施されていて素敵だ。

今作の主軸は華となるアクションパートだと思う。だからといって販売パートを疎かにしていることは全くなくて、熟練度やパンエナジーを導入して両輪を回していく潤滑油が用意されている。
根っこの部分が面白いからこそ光る部分ではあるのだけど、細やかな気遣いがあるのが良いよな~と思う。片方しかやりたくない人には面倒なシステムかもしれないけど、本来の面白さが際立つようにゲームデザインされているのが美しいよね。
単刀直入にキャラが可愛い

記事ボリューム的にお腹いっぱいになる頃だと思うので、お口直しに可愛いキャラクター紹介でお口直しして終わろうと思います。
全キャラ紹介すると楽しみが減りそうなので、序盤に登場するキャラだけサクッと触れますね。
狐の主人公『チャヤ』

ハンター試験を受けている最中に何故かパン屋のオーブンを壊してしまった不運の美女。天真爛漫で周囲のキャラクターを明るくさせるなど、主人公適正120%の王道路線を突っ走っています。
食材調達やら接客販売やらクリスタル集めやら色々頑張ってます。このままパン屋で働いて欲しいものです。余談ですが、一日が終わってベッドに横たわる際に狐の姿に戻るのがめちゃくちゃ可愛いです。
パン屋を営む小熊の『イーフィ』

コムギ広場でパン屋を営む子グマちゃん。超絶頑張り屋で気分の浮き沈みが激しい愛されキャラで、オーブンが壊れた時は絶望してました。商売人なので店が繁盛すると大喜びしたりして可愛い奴です。
自分の作ったパンに名前を付けるほどパン一筋で、販売する際はモーレツに働いてパンを焼き上げてくれます。また好感度を上げたストーリーではチャヤのことを気遣う優しい姿も見れてほっこり。
パン屋復興の恩人『ボリオ』

自分を名前呼びする口数の少ない建築家。お店を直してくれた立役者なんですが、金勘定は苦手でビジネスライクな感じが一切なくて好き。「パンが食べれなくなったら困るので」とか言っちゃってもう最高よね。
周囲を元気にさせるムードメーカーのチャヤを見て自信を失っているものの、徐々に打ち解けて自分らしさ見いだしていくシナリオも見所さんです。また序盤の営業手伝いキャラとしても優秀で文句なしで推せる。
絶妙な難易度で上手いこと転がしてくれる良作アクションSLG

画期的で突き抜けたシステムがなかったとしても、遊び手目線で丁寧に体験設計することで武器になるんだなと思い知らされた。遊ぶ前と遊んだ後で自分の評価がそっくりそのままひっくり返った気がする。
何処かで見たようなシステムに可愛いキャラを重ね合わせただけのゲームでは決してない。小さなモチベーションを産み出す導線が張り巡らされており、繰り返し作業も苦にならなかった。
苦労してパンを作った分だけ熟練度が上がって販売額は増えるし、貯まったお金も設備投資で循環するので無駄にならない。必要なものは揃っているので、思う存分に手のひらで転がしてもらえる作品でした。
〈詳細情報〉
ゲーム名 | アルタ/Aeruta |
ジャンル | パン屋経営&2Dアクション |
ストア価格 | 1,400円 |
リリース日 | 2024年5月16日 |