CRPGっぽいビジュアルが好きだ。ホラーやゴア描写も好きだ。細かいフレーバーテキストやロアが好きだ。でもややこしいゲーム性はいらない!雰囲気や物語だけ楽しみたい!
『STASIS: BONE TOTEM』はそんな局所的な需要を満たしてくれるゲーム…かもしれない。
※グロい描写が多いゲームなので、本記事のスクショ含め苦手な方はお気を付けください。
CRPGっぽいガワを着せたオーソドックスなAVG
舞台は近未来の太平洋に放棄された採掘リグ。本作はサルベージ業者の夫婦と一匹のクマ型ロボットを操作し、そこで起きた事件の謎を追っていくゲームだ。
パッと見た世界観やビジュアルからは『SOMA』や『Fallout』っぽさを強く感じる。ぐちょぐちょと肉塊を抉るグロテスクな描写や、淡々とした海底探索の閉塞感。ゾクゾクしたサイコホラーが好きなら間違いなく勧められる。
そして独特のアイソメトリックビュー(俯瞰視点)は、往年のCRPG愛好家を一目で惹き付けるだろう。
残された端末のログを調べて何が起きたのかを探る。緑単色のモニター、UI、HUDの錆びた機械感がレトロっぽさを演出してて良いね。
ただし、CRPGっぽいのは見た目だけ。戦闘、ロールプレイ、イマーシブシム的な要素は無い。ほぼ一本道のストーリーをパズルを解きながら追っていくシンプルなポイント&クリックである。
ポイント&クリックで特定のオブジェクトをクリックすると、臓器をぬちょぬちょと弄るようなインタラクションが発生する。おぞましくもリアルな感触が筆者をゲームに夢中にさせた。
fallout (1997) via
暗澹を照らすアイソメトリックビュー
本作の舞台は海底である。
フィールドは全体的にかなり暗く、さらに靄がかかっている。息苦しくなる世界観がヌメっとした質感や恐怖を際立たせているのだけれど、暗すぎてパッと見ただけでは何があるかよくわからない。
しかし、このゲームで迷うことはほぼ無い。近未来のハイテク設定により、迷ったら右クリックでインタラクトできる場所が青く表示されるからだ。さらに俯瞰視点のおかげで、入り組んだ地形であってもどのポイントから調べていくか一目で判断できる。
また、緑のマーカーにカーソルを合わせれば、物体や風景を細かく描写したテキストが表示される。このテキスト、気味が悪い程こだわりを感じられて面白い。
「クエストマーカーやHUD、UIがあると没入感が減る」みたいな言説もありますが個人的にはピンと来なくて、よっぽどじゃない限り迷わされる苦痛のほうが没入感を削ぐと思う。そういった迷いを発生させない今作のデザインが好みである。
なかには『SOMA』のようにクエストマーカーが無くてもほとんど迷わず、雰囲気を壊さず、ゲームプレイも阻害しない、凄いゲームもあるんですけどね。
SOMA(2015) via
パズルに詰まってイライラも
今作のパズル要素は簡単な部類に入る。というかポイント&クリックなので、手元にあるアイテムを片っ端から使ってみるとかで乗り切れる場面も多い。
3名のプレイアブルキャラクターを切り替えて探索する流れを取り、操作キャラクターが進行不能になった際は別キャラクターに切り替えて必要なアイテムやヒントを探す。シンプルだけど楽しい。キャラクター同士の掛け合いも心地良い。
ただし全く詰まらず、イライラもなくクリアしたかと言うと嘘になる。
ヒントがありそうな場所や、インタラクトできるポイントなどは分かりやすい反面、足が遅いため移動に時間が掛かり操作キャラの切り替えも少しモタつく。変に詰まってしまうとヒントがありそうな場所をちんたら何度も行ったりきたりするハメになるのだ。
私は途中から後で使いそうなヒントっぽい情報をスクショして、いちいち戻らなくて良いようにして遊んだ。そこまではする必要はないと思うけど、重要そうなことはメモを取りながら遊んだほうがいいだろう。
一本道な体験は作り手が意図した体験を万全に享受できるが、ヒントの出し方が悪かったり、プレイヤーの頭が悪かったりで詰まってしまうとイライラがたまって物語への没入は削がれてしまう。
好みや得意不得意の問題かもしれないが、私はプレイヤーごとに解決の幅を提供してくれる(どんな形であれ、とりあえず進行する)体験の方が好きだ。このゲームを通して、自分はCRPGのガワだけじゃなくて、そういう部分も気に入っているのだな、と自覚した。
Pentiment(2022) via
どんな推理をして、誰を犯人にしても物語が進んでいくゲーム。
最後に
詳しくは書かないけれど、ストーリーは結構良かったです。人間の生物的な脆さ、弱さを散々見せつけられつつ、最後まで足掻く人間の強さも描かれていて。とくに主人公の一人であるクマ型ロボのモーゼスにかなり心を抉られました。後味スッキリとはいかないけどそれが良い。終盤はちょっと急展開かもですが。
本作を作ったTHE BROTHERHOOD(兄弟でゲームを作ってて大半の作業を二人だけで行っているらしい)は『STASIS』『CAYNE』といった同じ世界観の過去作も出している。今作だけ遊んでも問題ないが、近未来を舞台にかなり設定が練られてるので万全に楽しみたいなら『STASIS』からやるのもありかもしれない。私はやるぞ。ではまた。
【ゲームリンク】
https://store.steampowered.com/app/1426010/STASIS_BONE_TOTEM/?l=japanese