ポイントアンドクリックのゲームによく惹かれます。言葉が出てこないのであれば尚良し。
クリックやドラッグといったシンプルな操作で、知らない世界に触れられる感覚を得られることがとても楽しい。シンプルだからこそ、開発者の方が作り出した世界に入り込みやすいような感じもします。
絵画でいえば「シュルレアリスム」のような、現実ではありえない光景や、常識に縛られないある意味で自由を謳歌している世界に魅了されます。
その世界がゲームであれば、限られた範囲で行動したり、何かしら影響を与えて変化をもたらしたりすることさえできる。自分はこの喜びを得たくてゲームを遊んでいるのかもしれません。
『Birth』は主人公をはじめ、住民も鳥も魚も全て骨の見た目をしています。首と頭が繋がっていなかったり、肉体から骨が露出していたりしますが、不思議とグロテスクではない。
このゲームの目的は「独りぼっち」からの脱出。手段は骨と内臓を集めて、イチからパートナーを作り出す。普遍的なテーマでありながら、奇抜な内容のポイントアンドクリックです。
※注意※
本作は虫が出てくるゲームです。
本作のマップやパズルにはアイテムとして虫がしっかりと登場します。手描きのデフォルメされた虫ではあるのですが、苦手な方は薄目で読んでください。
パートナーを作ろう

本作の主人公は自身が独りぼっちということを気にしています。街で人々の営みを眺めては、なおさら孤独を感じている様子。
ならば「パートナーを作ろう!」と決心し、骨を集めるところからストーリーは始まります。
また、このゲームは冒頭以外に言語が出てこないため、感覚的に遊ぶことになります。なので「寂しくなった」以外の動機も分かりませんし、どのようにしてパートナーを作るのかも詳細は分かりません。
ここは全て、プレイヤーの想像力にお任せです。

簡単なキャラメイクもできるので、主人公の見た目は好きに変えれます。
「好きな見た目」といっても、頭は全て骨! 主人公も骨だし、これから作るパートナーも骨。あと街の住民もそのへんの鳥や魚さえ骨。

「骨」でも手描きのペン画のような暖かみがあって、見慣れてくると美しささえ感じられます。人外好きに刺さるデザインをしていると思いませんか。
生々しい頭蓋骨の怖さはありませんし、かわいいデフォルメです。骨であることに目をつぶれば、絵本のようにほっこりした雰囲気。
「骨と内臓を集めて人間を作る」というと、なかなかに狂気的に感じます。確かに住民は骨だし、内臓が気軽に手に入るような恐ろしさはあるのですが……
けれど血が流れることはありませんし、恐ろしい雰囲気もありません。言葉も説明も何もないことから「シュール」という言葉が一番適任かもしれません。
『Birth』は怖くありません。虫が出てくるので苦手な方には軽くホラーではありますが、不思議とほっこりしてしまう、このギャップが心地良いのです。
人が集まる街とパズル

主人公が住む街にはたくさんのお店やアパートがあります。落ち着いた色調で、緑も多く穏やかそう。カフェや本屋など、人が集まる街らしい店構えです。
また街の所々では2人組の人間が目に入り、友達同士なのか、カップルなのか、はたまた親子のようにも見えます。主人公はそんな彼らを見て、「自分は独りぼっちだ」と孤独感を増していったのかもしれません。
もう大丈夫です、これから作るので。

まずは街にあるお店や見知らぬ人の家に入り、部屋内にあるパズルを解いてアイテムを収集。
基本的に、そのアイテムと交換する形でお目当ての骨か内臓が手に入ります。


画面左下の「カバン」のマークを選ぶと、現在の骨と内臓がどのくらい集められたかの確認が可能。
なお、「ビル」のマークを選ぶとお店を出て街に戻れます。パズルを解ききっても自動で街に出ることはないので、骨を入手したら「ビル」を押しましょう。
パズルは部屋のあちこちに存在します。が、ハイライトはされません。一見どこにパズルがあるか分かりにくいですが、マウスが近づくとふわっと動くことにご注目。動きのあった場所をクリックすると、パズルが始まります。

パズルらしいパズルもあれば、クリックするだけでクリアできるミニゲーム的なものまで種類は豊富。
物理演算で予想外の動きをすることもあり、触って変化を楽しむタイプのパズルゲームです。
説明はないので、解き方が分からないものがあれば後回しにしてしまうのも手。実は部屋の中にヒントが隠されている場合もあるのです。

この世界のパズルは摩訶不思議。解き方が分からなくても感覚的に遊んでいきましょう!
遊んでいれば自然に街の人たちとの交流になります。時にアイテムの入ったケースをハンマーで割ったり、生き物の体内からアイテムを取り出したりと衝撃的な展開もあります。
しかし、そもそも人を作ろうというところから始まっているので、あまり気にしなくて良さそうです。
もう寂しくない

骨と内臓を集め終わればパートナー作りの準備は万端です。
思えばここまで来るのに、街の人との交流がありました。困っている人を助けたり、勝手に人の家に上がり込んだり、独りぼっちだった主人公もずいぶん社交的になったものです。
集めた骨や内臓の手入れパズルを行えば、もうパートナーとご対面。
あなたはもう独りぼっちじゃない。

実はこの街には秘密があります。
主人公のように、他にもパートナーを作っている人が存在します。人がわりと気軽に人造されている世界なんです。主人公が最初に「パートナーを作ろう!」と思い立ったのもうなずけます。
誰が作られたパートナーなのかは、ヒントが隠されています。気になった方は見逃さないように探してみてください。
不気味さとほっこりの同居

ストーリーを進めるパズル以外にも、遊び心あふれるちょっとしたオマケが街に隠されているのですが、虫がワッと大量に出てきた時はさすがに驚きました。
他にも人の皮膚を裂いてアイテムを取り出したりと、少しギョッとする部分はあります。
ただゲームを通しての印象は不思議なことに「ほっこりする」なんですよね。

「寂しいからパートナーを作ろう」という、人間臭い動機があるからなんでしょうか。
生々しい描写はせずに、全体的にさっぱりと描いていること、ゆったりとした音楽で癒されるところもあるかもしれません。
手放しで癒される作品です、とは言えないけれど、確かに癒される独特な感覚があります。
短時間で不思議な癒しを味わうために、骨から人を作ってみませんか。
〈詳細情報〉

| ゲーム名 | Birth |
| ジャンル | パズル |
| ストア価格 | 1,120円 |
| リリース日 | 2023年2月17日 |
HARF-WAY コマーシャル
煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
無料で、どなたでも。スマホで、PCで、どこでも。
まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。
寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』

