日ごと歪んでいく農村で自給自足の生活をしながら正気を保ち続けるサイコロジカルホラー『Dread Fields』

「あ~~~、会社行きたくねえなぁ~」
……と、思ったことはありませんか?

誰しも一度は、“仕事はもちろん、すべての義務やしがらみを投げ捨てて、忙しない日常から解放されたい”という祈りにも似た願望を胸に抱いたことがあるのではないでしょうか。

そんなあなたにおすすめしたいのが、自然豊かな田舎を舞台にした酪農シミュレーションが楽しめるDread Fields

小屋で牛や鶏を育て、畑に種を撒き、魚を釣ったり草を刈ったり。朝日と共に起きて、月が昇る頃にはベッドに入る。そんな健全な日常を体験できるのが本作です。

これからご案内する穏やかな農村の名は、人呼んで『Dread Fields』。日本語に訳すと「忌まわしき土地」……ですがまあ、あなたがいる過酷なコンクリートジャングルよりかは、素敵な場所だと思いますよ。

この記事は『Mark Olkhovyk』様よりキー提供の機会を頂いて執筆しております

都会に疲弊した現代人、田舎でゆっくり暮らすはずが呪われた土地に農場付きの家を買ってしまう

▲ヤバそうなジジイから格安で家を買った主人公。判断力の衰えに疲弊度合いが伺えます。

本作は都会での生活に疲れてしまい、マンションを売り払って田舎に移住した主人公が、Dread Fieldsと呼ばれる土地に引っ越してきたところから始まります。

主人公……あんた都会で一体どんな目に……。しかしもう大丈夫。ここにはノルマもしがらみもありません。誰に邪魔されることもなく、規則正しい生活を送り、家畜の世話や畑仕事で体を動かし、新鮮な空気と美しい自然に包まれて過ごす日々の始まりです。

都会にマンションを所有していたなんて割と勝ち組の部類だと思うんですが、その功績の裏には多大な苦労や苦悩があったのでしょう。第二の人生のスタートとなる場所が、地元の人々からDread Fields――“忌まわしき土地”と呼ばれている不穏な事実すら、「それなら昔の知り合いが探しに来ることもないだろう」とポジティブなリアクションを示します。

ここでなら、きっと良い人生を取り戻せる――そんな都合のいい希望的観測は、夜ごと増していく不穏な空気に飲み込まれていくことになります。

古き良きローポリが表現する、美しい田舎の風景と忍び寄る恐怖

一人称視点で描かれる本作。画面いっぱいに広がる、自然豊かな東欧の風景が特徴です。温かみあふれる一軒家や素朴な家畜舎、風にそよぐ木々、波紋が揺らぐ川などで構成される小さな農村を、自由に歩き回ることができます。

早朝は朝露でけぶる空気が周囲を満たし、夜は頭上で月が白く輝く――そんなノスタルジックな景色は、2000年代半ばのゲームシーンを彷彿とさせるローポリゴンで再現されています。解像度の荒いポリゴンながら、どこか神秘的な農村の郷愁が見事に表現されており、つい見惚れてしまう美しさ……ですが、どことなく恐怖も感じます。

最先端の3DCGやレトロなドット絵など、昨今のゲームで使われるグラフィック表現は多岐にわたります。が、ホラーとローポリの相性の良さを改めて痛感しますね。

ただの牛のはずなのに、なんか怖い。流麗な3DCGや親しみのあるドット絵にはない、独自の”違和感”がイイ味を出しています。

郷愁と不穏さが同居しているローポリゴンのビジュアルが、本作のホラー体験を支える大きな魅力となっているのは言うまでもありません。田舎ならではの親しみやすさと、得体の知れない不気味さ。その相反する魅力が、本作ならではの空気感を生み出しています。  

ホラーゲームであることを忘れるほど、けっこうちゃんと農業をさせられる酪農シム

ゲーム冒頭で、家を売ってくれたジジイから“その日にこなす作業が書かれたノート”を渡される主人公。いわゆるタスクリストですね。

家と一緒に譲り受けた鶏と牛の世話や、魚釣りや果物の収穫など食材の確保……と、一口に言ってもその作業には多くの工程があります。

牛に餌をやるためには、まず牛舎へ行って鎌を取り、草を刈ります。次は熊手を持って草を集め、牛舎の餌場に運ぶ、という一連の作業を、コツコツと積み重ねていくのです。魚釣りも、シャベルで庭を掘り返して餌になる虫を集めるところから始めます。そういった作業を、淡々とやっていくのです。

ホラーゲームとして遊ばせるだけなら、ここまで細かく自給自足生活の工程をゲーム内で再現しなくていいんじゃないだろうか。そう思うくらい、スローライフの疑似体験が楽しめます。

▲10個しか持てないなら仕方ないね

この酪農パートを「面倒くさそう」と思う人もいるかもしれません。確かに、「ホラーゲーム」を強く求めている人からすると、毎日繰り返す家畜の世話や、行ったり来たりを繰り返す水汲みといったリアルな作業が少しもどかしく感じることもあるでしょう。

しかし、この穏やかな田舎暮らしを丁寧に描くからこそ、日常に浸食してくる恐怖が際立つのです。

じわじわと狂い始める、ミッドサマーライクな自然×カルト系ホラー

本作のホラー要素は、大きな音や激しい演出でプレイヤーを驚かせるものではありません。繰り返す健やかな日常を、徐々に浸食してくる静かな恐怖です。畑仕事の最中、ふと遠くにいるはずのない人影が過ったり、鶏小屋の鶏が無残に死んでいたり、

牛がバケモンになっていたり。

筆者は、いつもと同じように朝いちばんに牛舎へ向かいました。いつもと同じように熊手を手にして餌となる草を集め、餌場へと草を設置したあと、ふと牛を見たらこうなっていたのでぶったまげました

このように、日常にシレッと異形が混じり込んできます。この日常への浸食は、物語が進むにつれ顕著かつ不穏になっていき、やがて“じわこわ”ではなく、正面切った生粋のカルト的ホラーへと発展します。

神秘的なほどの美しい自然と、得体のしれないものからくる恐怖。この対比で、多くの人にトラウマを植え付けた名作ホラー「ミッドサマー」を連想したのは筆者だけではないはず。

なお、本作はマルチエンディングとなっています。条件を満たすことで、この土地と主人公を襲った怪異の真相に近づけるようです。

ただし、本作はストーリーを前面に押し出した作品ではないため、すべての謎が明快に解き明かされるわけではありません。むしろ、あえて語られない部分を残すことで、不穏な余韻や想像の余地を生み出している印象でした。

すっきりとした解決を求める人には少々もどかしく感じるかもしれませんが、断片的な情報から真相を推測したり、後味の悪さそのものを噛みしめたりするのが好きな人には刺さる作品だと思います。

非情で理不尽な現代社会に疲れたら、美しくも忌まわしいDread Fieldsへ。

▲もう焼くしかなくなっちゃったよ

さて、のどかでちょっぴり刺激的な田舎暮らし、してみたくなりましたか?

結びとして、Dread Fieldsの生活から無事生還した筆者より、移住検討中の皆さまへいくつかアドバイスをお送りしたいと思います。

  • 派手な恐怖演出がメインではないので、ホラーが得意じゃない人にも比較的おすすめ
    (ジャンプスケアが無いことは無いですが、悪質度は控えめ)
  • マルチエンディングだがオートセーブのみ対応のため、周回プレイがやや困難
  • Shiftキーでダッシュができる
    (プレイ中盤まで気付かず、ずっとのんびり農場を散歩していた)
  • ホラーより虫注意!!
    (虫と向き合わされる消化必須のタスク有。筆者は何度か気絶しました)

それでは皆さん、良い田舎暮らしを!

〈詳細情報〉

ゲーム名Dread Fields
ジャンルホラーアドベンチャー
ストア価格999円
リリース日2026年5月29日

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煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
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寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』


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