この街の夜は、静かで怪しくちょっと優しい『愛しのフランケンシュタイン』

なんだかちょっと眠れなくて、街灯が照らす静かな月夜を散歩する。昼間見慣れているはずなのに、全く違う街に足を踏み入れたような非日常な体験に心躍らない人はいないでしょう。

今回紹介する『愛しのフランケンシュタイン』は、大きな月の輝く夜の街を彷徨えるポイント&クリックアドベンチャーです。街の人々との交流を通して、かつて主人公が何者だったのか、ここがどんな街だったのか記憶を取り戻す冒険に出てみてませんか?

フランケンシュタイン夜を往く

今作の主人公は人造人間の『アダム』。つぎはぎだらけの彼が目覚めると、そこは大きな館の不気味な地下室でした。アダムだけが見える友人の「ゴースト」に誘われるまま、ヨーロッパ風の小さな街「シプベリー市」を探検します。

チャプター前半は館の中のアドベンチャーパート、後半はベッドを抜け出して街中を歩き回れる探索パートに移行します。章を追うごとに館や街中の探索範囲も広がるため、登場キャラクターたちの複雑に絡み合った関係性が見えるのも魅力の一つです。

緻密な背景美術とクラシックをメインとした胸に残るBGMも美しく、まるで童話に迷い込んだような気持ちになること請け合いです。

街中にある記憶を探し集めて

▲市長像の上に輝いているのが『心のかけら』

街の至る所に落ちている『心のかけら』は、砕けてバラバラになったアダムの心のパーツです。謎を解きながら集めたかけらは、「共感」もしくは「理性」のパラメータに任意で振り分けられます。

どちらに振り分けても問題ありませんが、選択肢のアンロックやED分岐にも影響するので慎重に。とはいえ、詰むことはありませんのでご安心ください。

心のかけら収集をはじめとする謎解き要素は、メインミッションだけではありません。サブミッションや、steam版で追加された『EXミッション』にも盛り込まれており、謎解き好きも唸るボリューム感です。

不思議な住人たちとの真夜中の物語

▲真夜中も営業しているスイートショップの女主人・メラニー

個性豊かなキャラクターたちも今作の魅力。アダムの創造主である館の主人は、自動人形開発会社の御曹司。彼の館には紳士的な骨格標本の博士や、居候の美少女といった怪しさ満点の人々が同居しています。

探索パートで出会える街の人々もちょっと不思議で優しい人ばかり。『心のかけら』を集めながら彼らの困りごとを解決すると、自身の過去や物語の背景、他キャラクターとの確執や関係性なんかも垣間見れます。

意外な人たちが血縁関係だったり昔話を聞かせてくれたり…。いつの間にか人間関係を通してこの街の歴史が見えてくる所が面白いところです。


HARF-WAY コマーシャル

絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。


読むほど深まる世界の輪郭

▲ブーゲンビリアの咲き誇る豪華な書庫

今作には本はもちろん、手紙や新聞といった読み物として楽しめるアイテムも登場します。それらを集めるとメニュー欄からいつでも読めるのですが、このテキストがまた読み応え抜群!

筆者はゲームに登場する書物の内容が気になってしまうタイプなので垂涎ものの演出でした。隠されていた手紙や遺された機密文書を通して、言葉を残した人、それを読んだ人の心情まで伺えるようでした。

“読ませる演出”がしっかりしている作品、大好きです。

この街に隠された過去と、これからの未来

どうしてアダムは再びこの世に蘇らされたのか?屋敷の主人であるミゲルとの関係性は?巷を騒がせている物騒な怪事件の真相は?などなど街に蔓延る謎が解ける時、アダムが選ぶ結末はーー。ED後にはきっとこの街と住人たちに愛着が湧くこと間違いなしです!

静謐なビジュアルと世界観とは裏腹に、謎解きやミニゲームは歯ごたえがあります。公式ホームページにてヒントを見られるため、行き詰まった時も安心です。隠しエンド含め豊富なED分岐の条件もチャプター欄で確認できるので、コンプリートを目指す方は是非チェックしてみてください!

〈詳細情報〉

ゲーム名愛しのフランケンシュタイン
ジャンルポイント&クリック
ストア価格500円
リリース日2021年2月27日

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煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
無料で、どなたでも。スマホで、PCで、どこでも。
まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。

寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』


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