寂しいと可愛いが同居する、読む映画『ghostpia シーズンワン』

最近映画やドラマを観た記憶はあるだろうか。

流行りものはなんとなくX等で見かけるものの、映画館にわざわざ行くのもな…とか、そもそも俳優さんの顔と名前を覚えられないので毎回誰だっけ…となったりするレベルの私は、最近の映画をあまり観ていない。

今回紹介する『ghostpia シーズンワン』は読む映画を謳っており、しっとりとした雰囲気の中もコミカルな要素や意外と血みどろのシーンもある長編映画のような作品だ。『ゲーム』というと激しいアクションだったり、銃で人を撃つイメージが強いかも知れないが、本作は観ているだけで物語が進むため映画を観ている感覚に近い。(ちなみに銃で人を撃つシーンもある。)

作品を手掛けるのは『超水道』というチームだ。Switch / Steam向けのghostpia シーズンワンをはじめ、スマートフォンでも読める文庫本のような作品、『short HOPE long Peace』『Keep Only One Loneliness』なども配信している。

普段ゲームに触らない方でも、「あっこういうゲームもあるんだ」というのをこの記事を通して知っていただけたら嬉しい。

この記事は『超水道』様の提供でお送りします

『読む映画』だけど小説っぽさも感じられるテキスト

▲序盤のこの一文で、『小説っぽさ』を感じたのは私だけではないはず

舞台は雪の積もった、寒そうな町。

ここで暮らす人たちは死んでも生き返る「幽霊」らしいが、足が透けているわけでも、体がぐちゃぐちゃなわけでもない。いたって普通の女の子やおじいさんもいるこの町には、カフェがあったり教会があったりコスプレショップがあったり…。

そして、1,024人という人数で成り立っていた町にある日突然「1,025人目」がやってくるのだ。

▲とってもわかりやすい説明

左から修理屋見習いのアーニャ、なぜか戦闘力が高く「ニンジャ」と呼ばれる小夜子、1,025人目のヨル、姉御肌のパシフィカ。

他にも魅力的な登場人物はたくさんいるが、メインとなるのはこの4人だ。本作は全5話で構成されており、話数を重ねる毎に登場人物も増えていく。

中でも、「可哀想で可愛い」を体現しているかのようなクラーラは、いつもひどい目に遭っているがこれも制作者の愛の形なんだろう、と思う。

▲意識していないあざとさ、完璧な可愛さが逆に主人公たちを苛立たせるようだ

作中には「うわぁ、このセリフ・言い回し良いな…」と思ったシーンがいくつもあるが、1つ抜粋するならば私的にはこちらのセリフだ。


「誰でもいいなら、わたし以外にして」。

なんとなく恋愛っぽくて、けど友情にも言えることだなと感じた。この場面は愛情でも友情でもない、別のものに向けて小夜子がぽつりと呟くシーン。しっとりと言葉が並ぶ中でひときわ目立つセリフや、他の人から見たら普通のことだけど、自分にはなんだかグサリとくるセリフ、を感じられるのが面白い。

『幽霊が暮らす、雪の積もっている町』のイメージはどうしてもしんみりとしていそうだが、どうやらそれだけではない、というのもghostpiaの魅力だ。

儚げに、絵本のような可愛らしいタッチで描かれる中、可愛い女の子の顔をグーで殴る主人公や、派手に銃をぶっ放すシーンもある。

他にも、「うんこ!」という発言や、関係値がイマイチでも共通の敵を見つけた時に意気投合して肩を組むノリなど、絵本のようなタッチでぱっと見しっとりしていそうな作品なのに「意外とこの雰囲気でそういうことやるんだ?!」という驚きがあった。

『物語を読む』を楽しむビジュアルノベルと呼ばれるジャンルは、選択肢によって展開が変化するものも多い。しかしghostpiaにはそれがなく、オート再生で流してぼーっと眺めながら楽しめるのも良い点だ。

派手なアクションゲームや頭を使うパズルゲームを遊ぶ気力がない、そんな時にぼーっと、だらーっとのんびり眺めて、その中でしんみりとした寂しさを味わったり、破天荒な主人公たちの行動にクスっとしたりが出来る作品なのだ。

超水道が手掛けるghostpiaは、テキストを読むビジュアルノベルのジャンルに属しながらも、漫画のように絵と文字で物語を描く、グラフィックノベルという要素を取り入れている。そうした表現形式を彼らは『デンシ・グラフィックノベル』と銘打っているようだ。

「初めて聞くジャンルだ…」と思ったらどうやら超水道オリジナルのものらしい。漫画やアニメを始めとした映像表現に力を入れた作品、というのはストアページを見ればきっとすぐに伝わるだろう。

テキストを読むだけでは飽きてしまう人もいるかもしれない。しかしアニメーションや豊富なイラストで、可愛らしく鮮やかな画面が続くため読みやすい。本当に何枚イラストを描いているんだろう、と素人目でも驚いてしまった。

可愛い女の子だけじゃない、「萌え」を語る男性だっている

▲どこか既視感のあるポージング

目の敵にしている教会や神父の悪口を言ったり、殴ったり撃ったりもする女の子たち。可愛い子がきゃっきゃしているだけではないからghostpiaが好きだ。

画像のアレクセイ氏は自身を『ヲタク』だと言い、「女と話すと死にたくなる、ヲタクっていうのはそういう生き物だ」と語っている。彼もまたこの町に住む幽霊で、なにやら研究に勤しんでいるようだ。

また、心に染み渡るような切ないシーンがある作品だが、一方でアメコミのようなカラーとお茶目さが溢れるシーンもある。この温度差が良い緩急になっていて、しっとりうるっとなった後になんだよもう~~~!と笑わせてくれるのだ。

この「じじい」も笑わせてくる人物な気もするが、「この町の本当のことを知っている」ような発言をするので、ただのじじいではないのだろう。多分。きっと。そうだと思いたい。でなければ雪の中で急に裸に近い格好で、水玉コラ編集をされているただの「じじい」なのだから。

ちなみに大体の登場人物が「死」を迎えるが、幽霊である彼女たちは一定時間後にゴミ捨て場で蘇る。「私の推しすぐ死んじゃうんだよね…」というあるあるは本作において心配する必要がないので安心してほしい。

登場人物ひとりひとりの個性が際立っていて、良い掛け合いがたくさんある本作で、私が「わかる~~~~」と頷きまくったのはこのシーン。

ちょっとガサツで男勝りに見えるアーニャが「女同士の付き合いが苦手だから、小夜子たちが居て良かった」と漏らすこのセリフは、彼女が言うからこそ意味が強まるなぁと感じられた。

最初はぎこちなかった仲間たちが、だんだんとこんなことを話す仲になっていく過程を眺めているのが心地良いし、共感も深まる。

こういったモヤモヤやある種の弱さを抱えながらも、同性の友人と何かに歯向かったり、何かを目指したり、そんな素敵な関係をのんびりと見守れる本作。

その物語を彩るBGMも個人的には注目してほしいポイントだ。サントラオタクに優しい各種音楽配信サービスで聴けるので、是非おすすめしたい。

『Friend(feat.Meno)』のたくさんのアレンジ曲が作中では流れていて、わかりやすく「あれっこのメロディは…!」となれるのが嬉しい。特に『You』がオシャレで個人的に好き。

〈各種リンク〉
https://linkco.re/872f6C7N

物語が1話、2話…と進む間に、なにやら全く違う風景が飛び込んでくる。ghostpiaの街は雪景色だったのに、テキストには「夏休み」。

どうやら「誰か」の「いつか」が回想されているようだが、詳しくはわからない。そして本作はシーズンワンなのだ。「なんか、そういう名前なのかな」と思っていたら本当にシーズンワンで、ドラマのようにシーズンツーへ繋がる終わり方をする。悔しい、気になる!

おそらく後々わかるであろうこの「夏」のシーンも、シーズンツーが待ち遠しくなる1つのポイントだ。

本作はPC / Switchで遊べるようになっている。

寒くなるこれからの季節、家でのんびりと読む映画『ghostpia シーズンワン』を楽しんでみてはいかがだろうか。

〈詳細情報〉

ゲーム名ghostpia シーズンワン
ジャンルデンシ・グラフィックノベル
各種リンク〈steam〉
https://store.steampowered.com/app/2192620/ghostpia_Season_One/?l=japanese

〈Nintendo eShop〉
https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000063781?srsltid=AfmBOoru-Y4I3lVtV1fYKnn2QpW_zyl2pvkC4b97-vHR7Jg644_eeq-T

〈ghostpia シーズンワン公式サイト〉
https://ghostpia.xyz/
販売価格2,300円

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