それっぽさに甘えても別に良いのではないだろうか『Gunlocked』

 その日、確か小学生だった私は父方の法事で料亭を思わせる場所に居た。
 席に座ると、大人達の談笑が聞こえてくる。正方形の皿に乗った天麩羅が即座に届き、手前には緑の粒々が上品に盛られた小皿も置かれた。 
 お焼香を焚くのと同様に大人達をチラチラ見ながら、見よう見まねで謎の粒々に天麩羅をバウンドさせる。そもそもこれは何なのか。
 幼少期の朧気な記憶ながらも、「緑でしょっぱい粒が美味しかった」ということだけは覚えており、大人になってから推測するに藻塩だったと思う。

 「てんぷらって、つゆで食べるんじゃないの?」と尋ねることもなく、とりあえず塩をつけて食べるものだと子どもながらに学んだ。
 母親が特売で買ってきたブラックタイガーの海老フライにもアジシオをぶっかける。父も、母も、兄も。中濃ソース。「粋な食い方するねぇ」と父が茶化す。粋という意味が全く分からず、無視して海老フライを口に運ぶ。しょっぱい。美味い。身体に悪い。
 子どもながらに食好みというものを学んだ。今でも揚げ物は塩で食べている。

 毎度の如くsteamを物色する。やたら安くなっているSTGを見つけた。何故かウィッシュリストに入ってる(無意識に入れたんだと思う)ものの、この手のジャンルはどうも食指が伸びない。
 セオリーを身体に叩き込むのはもちろん、専門用語が多すぎてついて行けない。中途半端に知識だけ持っているので余計タチが悪い。
 特大セールで66%OFF。もはや自販機のエナジードリンクよりも安い。大幅値引きですら悩んでいる自分。どうしようもなく凡だなと安堵した。

「でもまぁ、安いし買ってみるか」と開き直る。母の隙を突いて買い物カゴにお菓子をねじ込む子どものように、自意識を振り切って購入まで乗り切った。
 『ロックオン武器しかないSTG』。既に面白い。コンセプト買いできるゲームは大好物だ。仮につまらなくても割り切れるし、自分の直感にベットするのは案外気持ち良い。とはいえ、不安材料もある。

 一つ目。STGが得意じゃない。玄人御用達の弾幕ゴリゴリSTGだったら泡を吹くだろう。『洗濯機』や『ふぐ刺し』といった殺すことしか考えてない弾幕には向き合えない。
 二つ目。日本語がない。テキストADVのような作品ではないものの、取得した武器の効果もチャレンジモードの内容も読めない。進行不能になることはなくてもダレそうで怖い。
 三つ目。そもそも楽しめるか分からない。果たして、面白さの根っこに到達出来るのだろうか。あまり遊ばないジャンル×日本語未対応。今まで培った目利き力の技量が問われる。

 以上。不安要素もあるけど、モノは試しでやってみるか的な感じで遊んでみる。

 『Gunlocked』の率直な感想。圧倒的ディフェンシブ。従来のSTGと全く違う。
 手動で弾を撃てない。つまり『接射』で最速撃破ができない。敵弾をコントロールしながら隙間を作り、急接近して火力で破壊するSTGの華が機能しない。
 爽快感がないのか。否。真逆。RPGが如く急成長してバカみたいな弾幕で敵を溶かす。例えるなら、従来のSTGはガトリングガン。このゲームは一定間隔で無限に自動発射される大量のミサイル。
 そもそも、ゲーム性がまるで違う。

 『STG』が苦手だと最初に書いた。でも今作はSTGではなく無双ゲームに近い。ひたすら耐えて最後の最後にゲームごと破壊する。思ってたのと違うけど、これはこれで良いかなと思える華やかさがある。
 パターン化?気合い避け?そんなもんは名の知れたSTGで楽しめば良いのだ。索敵レーダーを回して検知した敵に弾幕が飛ぶ。強化すれば範囲が広がる。リチャージも早くなる。ロックオンできる数も増える。
 するとどうなる。弾を避けてるだけで敵が勝手に溶けていく。無理に接敵してポシャることもない。テクニックは不要。守りのSTGが爆誕した瞬間だった。

 こんなことを書くと、『STGの面白さがまるで感じられない…』とゲーセン生まれスラムダンク育ちの安西先生が登場するかもしれないので、その時は全力で無視しましょう。
 なんというか、カニカマみたいなゲームなんです。おやつ感覚でパクパク食べれる気軽さに今作の良さがあって、高級タラバガニは求めていない。
 このゲームにはSTGっぽい何かがあって、紛い物かもしれないけど旨味がある。
 だから何だよって話なんですけど、STGは苦手だけどヴァンサバが好きって人におすすめしたい。気が向いたら弾幕シューティングってヤツに挑戦するのも良いと思う。

 「避けてるだけで敵が溶けてめっちゃ楽しい!」と一言で済むことを2,000文字に水増しして書いている。何ともけったいな行為だ。書こうと思えば倍の文字数にすることもできる。まぁそんなことしたらシャバシャバになるんだろうな。
 書くのに夢中でご飯を作る気力がなくなり、近所のスーパーに駆け込んで値引きシールの付いたとんかつを買った。ゲームでも、ご飯でも、タイムセール。いたたまれない人生を謳歌している。

 申し訳程度に付いているとんかつソースを掛けて食べる。当然美味い。でも、塩で食べても美味い。何が一番合うかなんて人それぞれであって、もっというと気分でも簡単に変わってしまう。人生を機嫌良く生きるコツは、ソースでも、塩でも、マヨネーズでもとんかつを食べれる状態にしておくことだと思う。

 STGっぽさというものが好きだ。でも難しいのは嫌いだ。これだって気分によって変わるだろう。面白いゲームを見つけることよりも、面白く感じられる状態に自分を持っていく方が遥かに有意義ではないだろうか。そう考えている自分にとって、ローグライクと合いの子になっている今作は妙に心地よかった。

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