夢を追って、日本へ。新宿駅で待ち合わせ『Meet Me At Shinjuku Station: Remake』

日本人の皆様、聞こえますか?
新宿駅って、迷いますよね?よく新宿ダンジョンって言われたり、洞窟って言われたり……

常にどこか工事しているし、地下も地上も入り組んでいて、何度行っても道を覚えられません。
現地の人たちは、あのマップが全部頭に入っているのでしょうか……??

本作『Meet Me At Shinjuku Station: Remake』(訳:新宿駅で待ち合わせ)は、そんな「悪夢の迷宮」に迷い込んだ、日本に住む外国人制作者の「リノ」さんの経験を基にした作品です。

およそ3分でクリア出来る短編作品なのですが、日本での戸惑いや経験がぎゅっと詰め込まれています。個人的にとても好きな作品なので紹介いたします!!

新宿駅での戸惑い

▲スタート地点

ゲーム製作ツール「Bitsy」で作られた本作は、少ない色数の可愛らしいドット絵が特徴的です。低解像度のシンプルなビジュアルが素敵ですよね。

そんな本作の物語は、新宿駅のとある構内から始まります。

スライムのような、肉まんのような、小さくて可愛いキャラクターを操作しながらマップを進んで行きます。

▲お友達は駅の南東口で待っているらしい
▲道に迷ってしまった

道中では新宿駅に来た時の戸惑いが描かれていました。

「進めば進むほど…たどり着こうとすればするほど…道がわからなくなる」とのモノローグにはついつい共感してしまいます。筆者も新宿駅に行った時は目的の路線やお店に行けなくて散々迷ったものです。

日本の生活

物語の道中では、リノさんが日本の生活に慣れていく様子やその時の苦労が綴られていきます。

落ちていた10円玉を届けて感謝されたこと。
日本語が上手くなって、日本人らしくなったと言われたこと。
就きたい仕事に就くために、英語も日本語もネイティブレベルで必要なこと。

夢を追うリノさんの、どこか瑞々しい回想。

筆者は外国に住んだことも無ければ、旅行に行ったこともありません。
なのでリノさんのように日本に来て、日本に住んで、日本で働いている方たちは本当に志があるし、本当に尊敬すべき人たちだと思っています。

異国から来て、右も左も分からない中で、東京という地で生きていく。
母国語に加えて日本語も覚えなければいけない。

初めから日本に生まれてその恩恵を享受してきた筆者には出来ない事です。

夢を追ったその先で

▲夢を追って日本へ

制作者であるリノさんは「新宿駅で迷子になることは、自分の人生の比喩でもあるんです」と語っていました。

――駅で道に迷うこと。自分の人生に迷うこと。
――目的地に辿り着けず途方に暮れること。目標に届かず途方にくれること。

新宿駅で迷うことは、たしかに人生と似ているのかもしれません。
作中では他にも、日本に来た自身の人生を振り返るモノローグが綴られています。

「だれも教えてくれなかった。夢を追うことと、幸せになることはーー違うことなんだって」

痛いほど分かってしまう。
夢を追うこと、それは時に辛くて苦しくて、もがき苦しんだ先にあるもので。その過程は必ずしも幸せじゃない。諦めてしまえば楽になれるのかもしれない。

でも、その先にある幸せがほしい。

作者のリノさんが言いたかったことは、そんなことなのかな、なんて思います。

出口を探して

新宿駅で彷徨う本作の物語は、無事に出口に辿り着き、待ち合わせていた友人と出会って終わります。

“出口”に辿り着くまでの間、作中で語られていないことも含めて沢山のことがあったのだろうな、と想像しました。

嬉しかったことや、楽しかったこと。
悲しかったことや、ショックだったこと。

誰もがお互いに無関心で冷たくて、でも実際に触れてみると暖かくて、そんな人たちが集まっている場所。それが日本。

その日本に来てたくさんの経験をしてきたリノさんの、人生への想いがぎゅっと詰まった、そんな作品でした。

遊んでいて、心がぎゅっとくる物語

本作には制作者であるリノさんの、日本での戸惑いやちょっとした成長が短いプレイ時間の中に詰まっています。心のやわらかい場所を締め付けられるような物語で、遊んでいてぎゅっとくる作品でした。

日本に住む外国人の方らしい作品といえますが、その物語で描かれる「人生の迷路」は世界共通なのかもしれません。

また、リノさんのXでは本作に関する制作秘話が語られています。
どんなきっかけで本作を作ったのか。本作にどんな想いを込めたのか。
丁寧に綴られていますので、ぜひ読んでほしいです。

国籍に関わらず世界共通で共感できる本作の物語が、人と人をつなぐ架け橋になってほしい。そんな風に思います。

〈詳細情報〉

ゲーム名Meet Me At Shinjuku Station: Remake
ストア価格無料

余談:本作との出会い

筆者が本作に出会ったのは、東京都多摩市で2026年6月に開催されたインディーゲームイベント『TAMAインディゲーム展覧会 Dissonance #1 「不穏」』でした。

“ホラー”ではなく”不穏さ”を感じさせるゲームを集めたこのイベントでは、隠されたテーマとして「個人の創作には作者の経験や感覚から来る本物の不穏が宿るのと同時に、包括性や包容力がある」というテーマがあったそうです。

Meet Me At Shinjuku Station: Remake』はそんな裏テーマを基に採択された作品。リノさんの個人の経験が詰まった本作にはふさわしいイベントだったのかもしれません。

そして、そんな本作のブースには「あなたの好きな駅はどちらですか?」と書かれたエリアがありました。みんな各々が好きな駅を付箋に書いて貼って行っています。

筆者は「渋谷駅」と書きました。
様々な人の人生と文化が交差する街だと思っていて、とても好きな場所です。

▲あなたの好きな駅はどちらですか? 
▲たくさんの付箋。みんな好きな駅があるんだね
▲筆者は渋谷駅が好きです。いろんな人の人生と文化が交差する街だから 

そんな優しさが詰まったブースで、筆者は『Meet Me At Shinjuku Station: Remake』に出会いました。作品自体も当記事でお話しした通り苦労や経験、そして人生への想いが詰まった優しい作品でした。

たった3分間の短い物語、そこにはリノさんの人生への想いがぎゅっと詰まっています。

筆者は本作に出会えて本当に良かったと感じています。

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