通常攻撃を強くするゲームは面白い。地味な部分を妙にこだわる作品は数字の増え方が美しくて好きだ。例えば、体力がちょっとだけ残ってしまうような敵を一撃で屠れるようになったあの瞬間。この絶妙な成長カーブはもはや芸術ではないだろうか。
『Megaloot』は通常攻撃だけのシンプルなゲームだ。やられる前にやる。これが全て。何らかの方法で数ターン耐えてその間に倒す。まさに数字の暴力で魅了された。ぜひ遊んで欲しいので紹介します。
8倍速でぶん殴る。淡々と。
『Megaloot』は、装備を付け替えながら殴るだけのローグライクです。特別なスキルが使える訳でもなく、通常攻撃でひたすら屠る豪胆さが売り。装備を重ねると性能が強化され、新装備に乗り換えるか武具を重ねるかの2択に翻弄されつつダンジョンを進みます。
装備ごとに異なるパッシブスキルが用意されており、自動発動する能力を組み合わせて戦うのが今作の醍醐味。階層に応じて攻撃回数が増えるスキルや、どれだけ攻撃を受けても初回ターンは死なないスキルを組み合わせて模範的な脳筋万歳ビルドも組める。
また面白い仕組みとして、武器を強化すると取得ゴールド量が増加。武器の仕入れに必要な資金を準備するため、その場限りの強化を織り交ぜる将来性も求められる。スキルと相談しつつ取得ゴールドを増やすアドリブ力が必要なので難易度は高め。
金策のためにゴールド量増加を軸にした武具で固めておき、後半になってから強力な武具に狙いを絞る戦略もとれる。火力を補うために一つづつ武具を切り替えるなど、資金と戦力の絶妙なバランス感覚に今作の妙を感じました。
演出を省いたシンプルな戦闘も魅力の一つ。戦闘速度は最大8倍まで加速可能でとにかく早い。ダメージ数がぽこぽこ表示された数秒後には戦闘が終わる動きの軽さでストレスゼロ。淡白な戦闘とテンポ感が相乗効果を生んでて脳みそのシワにぶっ刺さりましたね。
武具の鮮度を見極めビルドを転がす
今作の特徴として、ダンジョンの奥に進むほど装備の種類が増えます。多くのローグライクは目標とするビルドを揃えるために要素を合わせようと奮闘しますが、今作は武器を転がしてビルドを切り替えて適合していく場面が多い。
狙ったビルドを組みつつ同時進行で別ビルドを用意して横断しながらクリアを目指す。いわば鞍替えを楽しむ作品ともいえます。多彩なルートを選べる選択の面白さがギュッと詰まっており、そう来たかぁ〜とニマニマする。ずっと何かが動き続けている感じ。
別の言い方をすると、ビルドの賞味期限が早い。仮に強力な装備を獲得しても数階層潜ってしまえば更に強力な装備が選択肢に上がってくる。どこかのタイミングで装備を一新しないと火力不足や金欠を起こしジリ貧に。武具には見えない鮮度が存在する。
救世主として登場するのが武器を砕いてステータスを強化するシステム。各フロアで一回のみ武具を砕いてステータスの永続強化ができるため、装備枠の制限を踏み倒せる。上位互換とスイッチする際に上手く砕けば、鍛えた装備が腐ることもない。
今作の魅力は『高速ラリー』に近い。どれだけ悩んでも戦闘そのものは一瞬で片付くので攻防の展開が早く、淡々と打撃を振りたい場合はサクサクと敵を溶かして先に進める。メリハリの効いた戦闘は遊び手に負荷を与えないんだなぁ~とよく分かる作品です。
縛りがあるからこそ面白い
実はこのゲーム、3つまでしかスキルをセットできません。「強いスキルを覚えて揃えるだけでしょ笑」と思った方。ぬるすぎです。冷蔵庫に入れ忘れてテーブルに置きっぱなしだった夏場の缶コーヒーくらいぬるい。10点中3点の回答です。
今作は該当スキルセットを1種類でも装備していれば効果が発動する反面、一度に発動できるスキルセット数が3つに制限されています。何でも感でも着脱できるわけではなく、何かを得るためには何かを捨てないといけない仕組みになっています。
○○が強いと分かっていても、現状の装備とすり替えるとスキルセットの上限を超えて装備できない。このジレンマこそ今作の難しさであり醍醐味といえます。自由度が効くように見えるけど、実はセット装備をベースにして適宜すり替えていく作品なんです。
武具は激安リロールができるため、くるくる回しながら最適解を探す。購入しない武具は『変換機能』で一時的にバフとして使うことも可能。手が届かない高級品でもドーピング材に化けるため、買わないけどキープするテクニックも重要です。
中盤から敵はカッチカチかつ一撃でこちらを沈める超火力に。おまけに攻撃反射でメタってくる強敵も出てきたり。幸い、各戦闘は1度だけリトライ可能。戦闘終了後には体力が全回復するので勝てばオールOK。ギリギリの最適解を探るのが面白い作品です。
潔くパチンコを楽しむべきだと思わんかね?
リロール費用の安さも相まって、強い装備が分かるとパチンコに化けます。レアリティ関係なくスキルは発動するため、安くて美味しい装備を狙うガチャガチャに変貌。スキルが揃うと脳内で「ボーナス!かくてぇい!」って鳴ります。溶けてます、脳が。
強い装備の組み合わせ、装備プールの見極め、マーケット管理、そしてガチャ運。知識と経験を総動員しないとクリアできない。派手な演出なんかなくても楽しめることを立証してくれる良作なので、数字の暴力に舌鼓したい方は是非どうぞ。れっつパチカス。
終わり。