個人開発もしくは小規模開発の色々なゲームを触っていると、特定の層向けに全力で作ったであろう作品と出会うときがある。「自分はこういうのが遊びたいだ!」とロックバンド並みに叫んでいるような感じ。
途中で明らかに自分向けではないことを悟るけど、透けて光る作り手の思想に心を焼かれて最後まで遊んでみたくなることもある。やれと言われた訳でもないのに、ほんとに不思議なものだなぁと思う。
今回紹介する『モミボス』は高難易度過ぎる2Dアクション。腕に覚えがある訳ではなかったけど、難しいゲームを触ってみたい好奇心が勝った。心を骨折しながら遊び切ったのでどんなゲームか紹介させて欲しい。
空ダとパリィとノックバック

『モミボス』は8方向ダッシュと攻撃の反発を活用した高難易度アクションです。皮肉の効きまくったストーリーで各キャラにスポットが当たるので、クリア後に思い出す感想はどのキャラも濃い。
8方向ダッシュで自由に空中行動ができる反面、スタミナ性なので連続で出せずゲージ管理が必要。地面に着地した瞬間に再行動できる作品が多いなか、割り切ったゲームデザインだなと思いました。

道中は即死ギミックやイヤらしい敵配置がてんこ盛りで殺意も高め。空中で向きを入れ替えて速度を殺す空中操作など、遊びごたえ充分というかバッキバキの難易度。ちなみに900回以上は死んでます。
また反動を利用したテクニックが多いのも特徴。オブジェクトに攻撃を当てると反発が生じ、キャラが弾き飛びます。上から攻撃を当てて跳ねて進む場面も多く、ゴリゴリのアクションを楽しめることでしょう。

ボス戦は道中のテクニカルな動かし方とは打って変わり、敵の攻撃を弾くパリィ中心の戦闘に。パリィでゲージを削ると吹き飛ばし攻撃が可能になり、お手玉の要領でボコボコにできます。
全力で殺しに来るギミックを豊富な空中行動で避けつつ、最奥で待ち受けるボスとパリィバトルを楽しむメトロイドヴァニア。言葉に起こすと簡単そうですが、相当難しいので選ばれし猛者向けですね。
難しさを底支えする正体は複合ギミック

実際に動かすとコントローラーを噛み砕きたくなるほど難しいのですが、理不尽にプレイヤーを突き放している訳ではありません。今作は動き方の見本が随所に設置されており、事前に突破方法の確認ができます。
反動を使ったギミックは解き方が分からないこともあるので、ちゃんと説明してくれるのはありがたい。見本見てもそんな簡単に突破できねぇよ!とキレましたが冷静に考えて良心的ですね。

この難しさの正体は複合ギミックだと思う。狭い足場+モンスターラッシュだったり、シビアなタイミング調整+即死トゲなど常にプラスαの仕掛けが多い。相乗効果で難易度が化学反応を起こしている。
総じてアクションの基本を押さえている人向けで、「もっとテクニカルに2Dキャラを操作したい!」という欲求に対して従順。バウンド、空中ダッシュ、パリィ山盛りでコンセプトが明確で清々しい。

バランスは正直に言って良くはない。難しくて楽しい部分もあれば、理不尽でストレスが掛かる部分もある。でもグラデーションとして作品に溶け込んでいて、高難易度として着地しているので個人的に好き。
ただし、メトロイドヴァニアとの相性は良くなかったと思う。ゲームの特性上、同じ場所を何度も通るので高難易度ギミックで毎度足止めを食らうのが痛い。面白いけど惜しさも感じざる得なかった。
HARF-WAY コマーシャル

遊び慣れた玄人向けのピンポイントチューニング

一番印象的な部分が反動アクション。ダッシュで華麗に避けるのではなくオブジェクトを殴ってバウンドするような動き。ここをテコ入れしている作品は珍しく、高難易度だけど動きに幅を生んでて面白い。
総じて職人色が強くてゲームとしての趣を感じる。『ノックバックを利用してギミックを越える』の字面でナルホドと思えば楽しめるし、はてなマークならきっと合わない。作り手のエッジと覚悟が効いている。

空中ダッシュも癖が強い。スタミナの概念があることで行動制限が掛かっており、着地後の再使用までラグがある。後半になると緩和処置が入るものの、序盤は結構息苦しかったイメージ。
狭い足場をダッシュしながら乗り継ぐ王道ギミックも多く、空中で前後に動いて勢いを相殺する必要も出てくる。理屈はシンプルながらも技巧が求めれるので面白いギミックだと思った。ただムズすぎる。

ボス戦は新しさと面白さが両立する一押しポイント。パリィでゲージを削った後のコンボも上手く機能している。硬いボスでも容赦なく削れるので爽快感も強く、プレイヤー側の技術が必要になる塩梅も見事。
振り返えると、自分が好きなモノをしっかり盛り込むことに忠実な作品だったなと感じる。王道インディー特有のハイスタンダードとは違う。結局、遊びたいのってこうだよねが詰まっている気がした。
感情マスクが飛び交う不穏なSFディストピア

意外だったのがストーリー。もっとハートフルで爽やかな群青劇かなと思いきや、序盤から地底で生活するディストピア風の導入でビックリ。やっと地上に出れるね!的なスタンスで来るとは思わなかった。
「今日は美味しいモグラ料理だよ!」と言ってる真横に「一生懸命働くから食べないで」と発言するモグラが居たりと不穏さがスゴい。ちなみに、この子は食べられずに最後まで居るので安心してください。

冒頭で主人公とヒロインが落盤事故に巻き込まれますが、謎の人物から渡されたドローンのお陰でいきなりフェードアウトとはなりません。超人的なジャンプ力や攻撃能力があるのはコイツのおかげです。
このドローンがまたスゴくて、不都合な感情にマスクを掛けて痛みや悲しみを和らげる能力を持っています。ディストピア感が過ぎる。SF味が徐々に加速していき、いつの間にかストーリーも気になるように。

道中で意味深なセリフがいくつも用意されており、見かけるたびに不信感を煽ります。「もしかして…あぁやっぱり…そんなことって…」と次々に物語が展開されるのもモミボスらしさかなと思います。
さっぱりしてるけど最後は無事に着地するので、高難易度アクションの添え物ではない存在感を放っています。アッシュとアンガーは無事に地上へ出れるのか、そもそもドローンは何者なのかも注目です。
三枚刃剃刀で根こそぎ刈り取る高難易度アクション

人によって『高難易度』の定義は異なります。連続ジャンプが苦手な人もいれば、狭い足場の移動が苦手な人もいる。今作は異なる意地悪が複合的に詰め込まれているから難しい。だから満たされる人もいる。
最初こそ一撃死レーザーとリスタートの遠さにブチギレ発狂していましたが、完走し切ってみると高難易度も悪くないなと清々しさすら感じています。パリィが楽しかったのでボスラッシュが欲しい。
免疫がないと折れると思うので誰でも楽しめる訳ではありません。ただモミボスでしか味わえない手触りは間違いなくあって、その人に向けて真剣に作られてるので身に覚えのある方はぜひ触ってみてください。
〈詳細情報〉
ゲーム名 | MOMIBOSU(モミボス) |
ジャンル | 高難易度2Dアクション |
ストア価格 | 1,500円 |
リリース日 | 2025年1月15日 |