買うか悩むゲームは誰しも存在する。自分に合うか分からず躊躇するからだ。どんな人でも同じ感覚を持っていると思う。とくに『癖』が詰まっている作品と向き合うのにはそれ相応のエネルギーを要する。
尖っていれば必ずしも面白い訳ではなく、強い個性があるから遊ばれる訳でもない。ゲームとしての純粋な面白さを優しく包み込むのが個性であり、癖が面白さの全てを背負うことはできない。だからこそ怖い。
今回紹介する『モン娘ぐらでぃえーた』を最初に見たとき、癖が自分の真逆を向いた作品だと思った。でも逆だった。ゲームの面白さで正々堂々戦っていて、その姿勢がカッコ良かったので紹介させてほしい。
持ち込みカードでモン娘を育てる双六風デッキ構築ローグ

今作は事前に組んだデッキを持ち込んで好きなモン娘を育成しながら闘技場を制覇するデッキ構築ローグです。かいつまんで説明すると、パワプロくんの栄冠ナインとモンスターファームを合体させた感じ。こんなの絶対面白いに決まってるじゃないですか!
各カードにスケジュールが記載されており、使用するとステータスが上昇。体力と相談しながら予定を組んでいく。カードごとにコストが設定されており、使用後に画面上部のマップを進みながら日数を進めて90日後のラスボスに勝てるとゲームクリア。

成長幅の大きいカードはコストが高く、貴重な日数を消費するので使いどころが重要。0コストのカードは日数を消費せずに強化できる一方、体力を消費するため戦闘で不利になる。シンプルだけどゲーム性に程よい葛藤を生んでいるのが印象的。
また「アーティファクト」と呼ばれるアイテムが用意されており、各種パラメータの増加幅を上げたり数値を加算することもできる。効率的に集めれば限界突破のステ振りができる反面、チャンスを逃すと虚弱体質のモン娘になってしまう。

道中には特殊マスが設定されており、ぴったり止まるとイベントが発生。使うと破棄されるカードもあるため、狙ったマスに止まるためにカードを切るべきか温存すべきかやんわり悩めるのも魅力だと思う。
のんびり移動しつつアーティファクトを集め、強制停止マスを活用してコストを踏み倒すのが今作の肝。また愛情のステータスによって育成バフも発生するので、限られた時間で試行錯誤するのがアチアチです。
アーティファクトのシナジーとカードコンボでモン娘育成

今作のメカニズムを支えているのが前述したアーティファクト。周回するほど有利になる永続強化がほんのりあるものの、如何にしてゲーム内で効率的に能力を上げるかに頭を悩ますことになります。
例えば、デメリット付きで筋力の成長率を上げる『大盗賊の双剣』。重複はもちろん『力の指輪』と組み合わせるとモリモリ伸びる。また愛情度によって強化ステータスは更に伸びるので、小さな積み重ねをどれだけ積めるかによって強さに雲泥の差が生まれる。

成長カードの種類も多岐に渡っており、体力を回復しながら愛情を増やしたり、使用ターン時のみ効力を倍にする補助カードもある。成長に関与しないドローソースも使えるため、カードゲームの仕組みを上手いこと踏襲していて面白い。
コンボで大ダメージを与える部分がそのままキャラ強化に置き換わった感じ。個別のゲーム性は物珍しくありませんが、デッキ構築と時限性のキャラ育成を合体させてアイデア勝ちしてるのが偉い。キャラが可愛いだけではなかった。


持ち込むカードを事前に絞り込んでコントロールできるので、キャラの強みを潰すような事故リスクが低いのも嬉しい。筋力特化の脳筋キャラに無理やり勉強させて知力を伸ばす無為な時間もない訳だ。
ランダム性の揺らぎを感じつつも、手動のデッキ構築で方向性を固められる。運と実力の塩梅が絶妙で周回も捗るし、遊ぶたびにカードやアーティファクトが解放されるのでマンネリ化もしにくい。お手頃価格で遊べるのに堅牢な作りで安心して推せる作品です。
サクッと30分で回せるスナック育成で差別化

使用できるモン娘はゲーム内ポイントを消費して回せるガチャによって獲得できる。難易度を上げると獲得通貨に倍率が掛かるため、頑張って集めようと思えばサクッと集められるはず。たぶんきっと。
キャラのほかにも初期ステータスの向上や新カード、戦闘を有利に進める有能なアーティファクトも解禁される。「アンロックしすぎて欲しいアイテムをピックできねぇ!!」とはならない程度の増加量だと思う。

モン娘の強みとなるステータスや戦闘スタイルはそれぞれ異なるため、デッキを新しくチューニングし直す必要もある。毒を使った耐久力メインのスライムちゃんをインテリヤクザに育てても良さを活かしにくい。
数時間遊んでみてゲームの核となる部分に触れると、モン娘ごとに成長方針もしくは戦い方が差別化されていることに気づける。メカニズムの面白さに目を瞑って可愛い見た目だけ消費するのはあまりに勿体ない。

偉大な先人『モンスターファーム』をリスペクトしているのも伝わってくる。戦闘は時間経過で回復するAPを使って技をぶつけ合う形。技の数は多くないけど、成長仮定を楽しむゲームに舵を切っている印象。
愛でて、育てて、競い合う。プレイ時間を縮めているのでサクッと再走しやすいのも魅力。本腰入れてがっつり育てるのが苦手な人ほど楽しめる。可愛いだけではないことを是非知っておいて欲しい。
HARF-WAY コマーシャル

大本命!
細部に熱籠るかわいいモン娘

ここからは番外編。個人的に好きなキャラを軽く紹介しようと思います。性能的な特徴やおすすめの成長方針とか好き勝手喋りますね。プチ攻略情報みたいな感じだと思って続きをご覧ください。
スライム

毒の状態異常を操るスライム娘。敵にやられると中央のコアが消えて無表情のまま動かなくなる。メカ味があってただならぬ何かを感じる。緑で可愛いゲルですね。良いッ!!

初期アーティファクト『スライムコア』で毒ダメージに回復効果が付与されるので耐久型の育成がおすすめ。カチカチビルドが無難に強く、ダメ反射アイテムとの併用で宇宙になります。
モビー・ディック(白鯨)

逆わがままボディのちんまいクジラ娘。体力が10%を切ると火力が上がったり、物理・魔法ともに成長バフを受けられます。相手の弱みを突いてダメージを稼げる反面、器用貧乏になりやすいのが玉にキズ。

消費APが重めながら高命中&高火力の技を覚えるので、ジリ貧を一気にひっくり返せるカウンター力が魅力。火事場性能を活かすためにHP中心の育成をしながら、ゆったり戦うのが個人的に好きです。
まとめ

インディーゲームは作り手の尖った癖があってナンボ。いつからかそんな風潮を感じるようになった。でも刺すと刺さるは違う。こういう土台ありきの個性がほんとのヘキって奴なんだと思う。
今作は尖りとかそういうものじゃなくて、逆に丸みのような柔らかさを感じた。酸っぱいパウダーの付いた飴玉のように、最初は刺激を感じるけど舐め続けるうちに甘みが増してくる。癖という言葉だけで完結させない努力や工夫が詰まっていた。
単純にゲームとしてのコアが純粋に面白い。だからこそ愛あるモン娘が光る。「こういうので良いんだよ」のツボをひたすら押してくるマッサージ師みたいな作品でした。面白いし安いので是非どうぞ。
〈詳細情報〉
ゲーム名 | モン娘ぐらでぃえーたー |
ジャンル | デッキ構築型育成RPG |
ストア価格 | 520円 |
リリース日 | 2021年7月15日 |