夢を見ているときに、「あ、コレ夢だな」とわかってしまう。
あまりにも現実と差異があったり、実際にはありえないことが起きたりすると、ふっと現実の掛け布団やまくらの感触を思い出す。
私たちが見る夢と同じように、やっぱりこのゲームの中でも現実ではありえないことを何度も経験する。けれど、なかなか現実には戻れない。
『さよならナイト・キャップ』は、Lo-Fiミュージックの流れる不思議な夢の中を女の子と探索するクリックアドベンチャーゲームだ。
Lo-Fiミュージックの流れる夢の中を女の子と探索しよう

主人公は見知らぬゲームセンターで目を覚ます。
目の前の女の子に話しかけると、ChillなLo-Fiミュージックが流れ始め彼女を仲間にできる。
2人はゲームモニターの中のカッパとラップバトルをしたり、マップ上に散りばめられたヒントをもとに暗号を解いたりして脱出を目指すことに。
ゲームセンターからなんとか脱出した後も、行く先々で主人公は何か大切なことを思い出しそうになる。けれどその度に、仲間の女の子が邪魔をしてくる。
そんな女の子と主人公は、無事にこの世界から脱出することができるだろうか。
没入感たっぷりのマップ

このゲームはクリックアドベンチャーだ。例えば、クレーンゲームの中に脱出のカギとなるアイテムが混じっている。じっくりマップを眺めていると、システム機能のボタンが背景に溶け込んでいるなど、魅力的なグラフィックにも気づくだろう。
ゲームセンターのマップであれば筐体のひとつひとつに仕掛けがあったり、女の子の反応が見られたりと、謎解き中にも飽きさせない。
マップごとにBGMも変化し、中華街風の背景ではBGMにもチャイナ風の楽器の音が混ざるようになる。また場面によって変わる女の子のコスチュームも必見。
ミステリアスな女の子の真意は?

物語の一番最初に仲間になってくれる女の子は、ずっと主人公と行動を共にしてくれる。無邪気にはしゃいでいたかと思えば次の瞬間には意味深な発言をしているような、ミステリアスな雰囲気が魅力だ。
攻略を進めて行く中で、主人公は度々何かを思い出しそうになる。幼いころのささやかな思いでがほとんどだ。昔飼っていた犬との思い出だったり、ちょっとした悪さがバレて気まずい思いをした記憶だったり。
そんな小さな記憶のカギになりそうなアイテムを女の子は何故か壊したり、なんならNPCを手にかけてしまうことも。そうなってしまうと、思い出しかけていたはずの主人公の記憶は霧散してしまう。
彼女の不可解な行動の真意を想像するのもこのゲームの楽しみの一つだ。
これは夢…?と気づかせてくれる不思議な出来事たち

主人公と女の子は探索中、不思議な出来事に巻き込まれたり、首を突っ込んだりする。行く先々で出くわす無茶苦茶な展開に、少しずつ「これって絶対現実の話ではないよな……」という確信を強めていく。
クレーンゲームのぬいぐるみが暴れだしたり、人がシュウマイになったり、悪夢という程ではないにしても突拍子のなさはかなり夢っぽい。
その状況にいわゆるツッコミを入れてくれるキャラクターもいないので、プレイヤーは道中「なんかおかしいな……」という感覚を抱えることに。
この違和感が最終章やエンディングの演出に繋がる。
いつかナイト・キャップを外して

どんなに不思議で楽しい夢も、優しい夢でさえも必ず終わりが来るものだ。覚めてほしくないと願っても、そうはいかないのが悲しい。
夢の中でどんなに懐かしいものや人に出会っても、あくまでそれは思い出の反芻であって、現実に彼らが帰ってきてくれるわけではない。
いつか君も、目を覚ましてナイト・キャップを外さないといけない。その先にどんなにつらく、寂しい現実が待っていたとしても。
『さよならナイト・キャップ』は、寝起きに感じる夢の余韻に浸らせてくれるようなゲームだった。
〈詳細情報〉
ゲーム名 | さよならナイト・キャップ |
ジャンル | ポイント&クリック |
ストア価格 | 無料 |
リリース日 | 2023年8月25日 |