誰もいないはずの空間に、なぜか居心地の悪さを覚えることがある。
人気のない廊下や、静まり返ったプール。どこまでも続きそうなその景色は、どこか現実から切り離されたような感覚を伴う。
こうした空間は「リミナルスペース」と呼ばれ、海外発のネットミーム「The Backrooms」をきっかけに広く知られるようになった。美しさと不気味さが同居する、いびつな魅力を持った空間だ。
『P4ST3L(パステル)』は、そんなリミナルスペースとFPS/TPSを掛け合わせたサバイバルホラーである。
異質な空間を探索しながら限られたリソースをやりくりし、時に逃げる判断を迫られる本作は、プレイヤーに一種の緊迫感や焦燥感を与える。
本記事では、筆者が本作と出会い、そして挑んできた実体験をベースに魅力をお伝えしようと思う。
この記事は『うさぎのDJ』様の提供でお送りします
いびつな世界に引き寄せられて――P4ST3Lとの出会い

筆者が初めて『P4ST3L』に出会ったのはとあるゲームイベントだった。
ブースのモニターに仄暗いプールのような空間が広がっており、思わず足を止める。違和感とも美しさともいえる世界に目を引かれていると、唐突に話しかけられ我に返った。
「もしかして以前も来てくださいました?」
「……? 人違いです」
初めて来たことを伝えると、ゲームに関する紹介をしてくれた。
この作品がバックルームのようなリミナルスペースを舞台にしていること。そして、ファウンド・フッテージやサバイバルゲームの要素を取り入れていること。世界観も含めて丁寧に教えてくれた。
声をかけてくれた売り子の方は、本作の主人公の声優もしているそうだ。
不思議と興味をそそられる。

気になって試遊すると、そこには水を湛えたタイル張りの空間が広がっていた。モニター映像で見たプールの印象は間違いではなかったが、想像以上に広い。
道を進む。仄暗い空間は迷路のように入り組んでいた。異質な鳴き声が響き、ひたひたと何かが近づいてくる。
目の前には血を抜かれたような浅黒い肌の生物が佇んでいた……クリーチャーだ。
警戒はしていても実際に遭遇すると焦る。とっさに銃を構えるが、シューターに慣れていない筆者の攻撃はなかなか当たらなかった。

結局クリーチャーを倒した後、とある螺旋階段を登った先で転落。一回目のプレイは静かに幕を閉じた。
落下ダメージを想定していなかったことが敗因だ。悔しさを感じつつその場を後にする。売り子の方から「何か気になる点は無かったか」「バグは無かったか」と聞かれ、熱心だと思った事を覚えている。
後日、同じイベントで『P4ST3L』に出会った。
「以前も来てくださいましたよね?」との確信を持った問いに今度は「来ました(グッジョブ)」と答える。前回は喉に小骨が詰まった気分で終わりを迎えていたが、その雪辱を果たす時が来たのかもしれない。
見覚えのある道をするすると進み、前回よりも進めていると思った矢先に事件は起こった。
「攻撃が効かない…?!」
それは他とは明らかに違う風貌をしていた。神経を逆撫でする鳴き声が響く。銃撃がまったく通らない。以前の試遊では到達出来なかったボスクリーチャーだ。
逃げるしかない。初めて取る選択肢に動揺しつつ足早に立ち去る。攻撃が効かないと気づいた頃には既に銃弾は無くなっていた。HPもアイテムも底を突きかけている。
「うおお、頑張れ…!」と売り子さんの声が聞こえる。その後ろで開発者様も息を呑んで見守っていた。

息もつけぬ状況の中、頭はどこか冴えていた。
脱出ルートを直感で判断し先へ進む。背後からボスが迫る音がする。無我夢中で走り続けた先で、遂に出口を見つけた。もう真後ろにボスがいる。振り向かず前だけを見て走る。スタミナが切れそうだ。
「おめでとうございます!」
不意に周囲から歓声が上がった。画面に映る演出がクリアを意味することに数秒遅れて気付く。ゴールだ。時間の感覚が麻痺するほど長く感じた。
だが、この時はまだ気付いていなかった。
『P4ST3L』が本当にプレイヤーを試すのは、ここからだということに。
リミナルスペースの先で見つけたもの――P4ST3Lの魅力とは

あの美しくも異質な空間が脳裏に焼き付いている。ボスに追われ苦しみながらも脱出した時の光景が頭から離れなかった。
そんな折、『P4ST3L』の早期アクセス版が公開された。試遊版では全貌が見えなかった部分もあり、再戦を待ちわびていたところだ。
起動すると、試遊版にはなかったタイトル画面やチャプター選択画面を見れた。筆者が試遊した通常モードの他に「拡張モード」や「ハードモード」と書かれた選択肢もある。高難易度コンテンツだろう。
改めて遊んでみると、銃弾やアイテムなどのリソース管理が重要なゲームだった。主人公の”喉の渇き度”や”空腹度”、迷路のような空間を彷徨いながらも複数の要素を管理しなければならない。
道中、さっそく洗礼を受けてしまった。
銃弾を切らしHPも残り少なくなってきた時、弾を探すために走り続けていた。本作では銃弾は貴重で、無くなれば敵と戦う手段をほぼ失う。その矢先でクリーチャーと遭遇してしまう。最悪のタイミングだ。
逃げようとするがずっと走り続けていたためにスタミナが切れている。スタミナが切れると走れない。回復するまでの数秒のラグ。その数刻はクリーチャーがプレイヤーを狩るには充分な時間だった。
……ゲームオーバーだ。
後になって気付いたが、空腹度や渇き度が低下していたためにスタミナの最大値も減っていた。残弾数とHPばかり気にしていた為に気付かなかったことだ。リソース管理の重要性にこの時気付かされる。

こうしていくつもの失敗とゲームオーバーを繰り返し、ひとまず通常モードをクリアした。
何事も出来るようになると嬉しいものだ。本作も例外ではなく、その成長曲線の塩梅がちょうど良い。徐々に上手くなっていく自分自身に高揚感を覚える。
そして次は「拡張モード」と「ハードモード」だ。
おそらく高難易度であろう。そう身構える一方、通常モードで培った経験が筆者にわずかな過信を生ませていた。「充分に上手くなったのだから大丈夫」と。
しかし、これまでの筆者の立ち回り方はまだまだ甘かった。リソース管理も戦闘時の判断もアイテムの使い時も、全然甘い。頭をかち割られた気分だ。
これはサバイバルホラーなのだ。
リミナルスペースという美しくも歪な世界での。

幾度にも渡るリトライを重ね、「拡張モード」と「ハードモード」をクリアした。実績も少しずつ埋まっていき、早期アクセス版の完全クリアも近そうだ。
しかし、これで全てでは無かった。
もう一つ高難易度モードがある。
「BLACKOUT」だ。
ネタバレになるため詳細は伏せるが、一度クリアしたはずのチャプターをさらに歯応えあるステージにしたものだった。
本作の肝であるリソース管理やマップの把握、対クリーチャー戦・ボス戦を体で覚えていく必要がある。通常モードや「拡張モード」、「ハードモード」をクリアしてもなお経験が足りないと感じさせる。
そうして筆者は思った。
かつて試遊した時には気付かなかった『P4ST3L』の醍醐味はそこにあるのではないか。
何度も何度もプレイを重ね、上手くなったと思ってもまだまだ通用しない。それでも、成長曲線は絶妙で三度繰り返せばまた乗り越えられる。徐々にプレイヤーを沼らせていくのが本作の魅力なのではと。
少し遊んだだけでは気付かなかった。
この臓を突く恐怖の中、リミナルスペースを彷徨った先でようやく見つけた本作の醍醐味。それが『P4ST3L』随一の魅力といえるだろう。
精力的なイベント出展――遊び心に満ちたブースの展示

『P4ST3L(パステル)』の開発者である「うさぎのDJ」氏は東京ゲームダンジョンを始めとしたインディーゲームイベントに精力的に出展している。筆者が出会ったのも東京ゲームダンジョンだった。
出展時はP4ST3LのキービジュアルがプリントされたTシャツやアクリルスタンド、缶バッチ、プレイステーション2のパッケージを彷彿とさせるSteamキー入りパッケージも売っていた。
2月8日に開催された東京ゲームダンジョン11では、バレンタインデーが近かったこともあり「DECOチョコ(※)」を利用したP4ST3L版チロルチョコも配布していたことが記憶に新しい。
主人公の奈都ちゃん(西園寺奈都)をデフォルメしたイラストが可愛らしかった。
※オリジナル画像をプリントできるチロルチョコのネットサービス

そして、2026年3月28日(土)に開催された大阪ゲームパビリオンからは試遊台も1台から2台に増え、回転率が上がって試遊しやすくなっていた。出店回数を重ねるたび豪華になっていき筆者も嬉しく思う。
うさぎの氏のブースは、いつも遊び心に溢れた楽しい展示になっている。もしどこかのイベントで本作のブースを見かけた時はぜひ立ち寄ってみてほしい。
さらなるアップデート――まだまだ拡がる『P4ST3L』の世界

現在『P4ST3L』は早期アクセス版がリリースされており、記事公開時点でChapter.1〜2までが公開されている。今後も新たなチャプターが追加予定だ。
本作の戦闘は銃で戦うシンプルなものだが、今後はスキルシステムが導入されるとのこと。スキルによる攻撃や回復、トラップ生成が追加されるようだ。
過去に投稿されたYouTube動画では、主人公が魔法を使うシーンも伺える。
さらに今後予定されている大型アップデートでは新武器「パイプレンチ」や新要素であるランダム生成マップが実装予定だ。本作のプレイフィールに大幅な奥行きが生まれるだろう。
WIP_P4ST3L_プロシージャル生成3
— うさぎのDJ🐰P4ST3L (@UsaginO_DJ) March 18, 2026
前、右、左を判定して空いている方向に通路を伸ばしたり、確率で左右に曲がるようにしました。カラフルな線は判定のレイです
空きがなくなると行き止まりとなり、小部屋やカードリーダーを生成できます🌸やったあ#ゲーム制作 #ゲーム開発 #indiedev #gamedev pic.twitter.com/uPfZCYUmFf
ランダム生成マップについては、うさぎの氏のXで制作過程が公開されている。実装方法が気になる人はぜひ覗いてみていってほしい。UnrealEngine5を使った制作方法の一例が掲載されている。
スキルや新武器・新衣装、ランダム生成マップなど、試遊時には予想もしなかった変貌を遂げる本作。今後も続いていくアップデートの内容が非常に楽しみだ。
初心者から熟練者にまでおすすめしたい――ホラーゲームの一つの形

筆者はこれまで一人用FPSやホラーゲームにはあまり触れてこなかった。
しかし、そんな人間でも『P4ST3L』は十二分に楽しめたのだ。不気味な音を立てて近づくクリーチャーに慄いたり、迷宮のようなマップで慌てふためいたり、緊張感と焦燥感が筆者に強いインパクトを残した。
リミナルスペースの空間も美しく、チャプターごとに変貌を見せる世界には毎回惹き込まれるはずだ。
そんな本作は、うさぎのDJ流とも呼べるホラーゲームの一つの形となっている。サバイバルホラーに慣れているプレイヤーも、独特なP4ST3Lの作風を楽しむことが出来るだろう。
ホラーやシュータージャンルの初心者、はたまた経験者まで『P4ST3L』の拡がりを見せる世界に今後も注目してほしい。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | P4ST3L(パステル) |
| ジャンル | FPS/TPS |
| ストア価格 | 890円 |
| リリース日 | 2025年12月24日 |