ちょっとした悩みを抱えた人々と、どこかヘンテコだけど愛らしい雰囲気をまとう仲間たちが暮らす国。童話に出てくるようなキャラクターを操作して島のあちこちを歩き回りながら、アイテムカードを集めて人々の問題を解きほぐしていく。
今回紹介する『Pilgrims』は、不思議な世界を探索しながら集めたカードを使い、物語を進めるアドベンチャーゲームです。思いつきで試した組み合わせが思わぬ形で道をひらいたり、誰かの笑顔につながっていく心地良さを体験してほしくて筆を取りました。
メルヘンな空気に包まれた、1時間ほどの小さな冒険。
そこには、自分がおとぎ話の主人公になったような、やさしい魔法が待っています。
静かな旅のはじまり——逃げた青い鳥を追って

本作はカードゲームをモチーフとした謎解きADVの形式を取り、プレイヤーが操作するのは、”Pilgrim(以下、ピルグリム)”と呼ばれる放浪者です。
国境を越えてあちこちを巡り、時には焚き火を囲みながら眠り、気ままな旅を続けている彼ら。そんな旅の途中、とある川岸で船に乗ろうとしたところ、思わぬトラブルに巻き込まれてしまいます。
船頭が相棒の青い鳥と喧嘩をしてしまい、鳥は怒って飛び去ってしまったのです。鳥が戻るまで船は出せないと言われ、ピルグリムは仕方なく鳥を探すことに。こうして、“逃げ出した青い鳥を見つける”小さな冒険が始まります。
主人公は地図上のさまざまな場所を自由に歩き回り、そこで出会う人々の悩みを解決したり、仲間やアイテムを集めながら旅を進めていきます。
手に入れた仲間やアイテムは“カード”として手札に加わり、困りごとを解決するための切り札に。ときにはトラブルを仲裁したり、誰かのためにアイテムを譲ったり、物々交換を通して新たな道が開けることも。
一見のどかでありながら、どこか不思議な空気が漂う世界。ほんの少し皮肉であたたかみのあるキャラクターたちとの出会いが、旅の印象をより深くします。 淡々と進む物語の中に、プレイヤー自身の想像を誘う“余白”があるのも魅力的です。
旅情とユーモア、そしてひと癖ある雰囲気。
そんな独特の味わいを持つ作品となっています。
使い方次第で変わる、無数の解決方法


本作の見どころは、問題の解決方法が何通りも存在するところ。同じシチュエーションでも「誰を使うか」によって展開が変わるのがポイントです。
たとえば、画像のようにホウキを持った偏屈そうなおばあさんに主人公のピルグリムを会わせた場合と、仲間のGranny(おばあさん)を会わせた場合では、相手の反応がまったく異なります。
どうやら以前いざこざがあったGrannyは、ニヤニヤと挑発的な様子。このように、キャラクター同士の相性や関係性が見えてくるのも、本作ならではの魅力といえるでしょう。
また、仲間になるキャラクターたちは、それぞれ得意分野や使いこなせるアイテムが異なります。
主人公は旅で培った話術を活かした交渉が得意で、Bandit(盗賊)は少々荒っぽいものの、銃の腕はピカイチ。こうした個性や特技をヒントに、最適な行動を見つけ出していくことが重要になります。
仲間たちの特性を理解し、誰をどう使うか考える過程こそ本作の醍醐味。頭を悩ませて生まれる意外な発見やユーモラスな反応を、ぜひ楽しんでみてください。
誰でも楽しめる、親しみやすい操作性

複雑さのないゲームUIも本作の魅力。見てのとおりスッキリしています。ゲーム性もシンプルで、画面下部に並ぶカードの中から使いたいものを選んで上画面へドラッグするだけ。簡単操作で手触りも良く、ゲーム慣れしていない人もすんなり楽しめるといえます。
画面上でアイテムを受け取ったキャラクターは豊かなリアクションで場面を盛り上げてくれるので、飽きることなくゲームを進められるのも嬉しいところ。
また、本作に登場するキャラクターたちは、さまざまな言語が混ざったような不思議な言葉で会話をします。難しい言葉が出てくる訳でもなく、絵本のような世界観で大人から子どもまで幅広い層が楽しめる作品に仕上がりといえるでしょう。
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絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

試行錯誤も楽しめる!やり込み派に嬉しい豊富なトロフィー

前項でも触れたとおり、本作では与えるアイテムによってキャラクターがさまざまな反応を見せるのが特徴です。それに合わせて、ゲーム内には実績も豊富に用意されています。
その数なんと45種類!
思わず全解除を目指したくなる、やり込みがいのあるボリュームです。
もちろん、一周で全ての実績を解除できるわけではありません。数の多さに少し気圧されてしまうかもしれませんが、そこはご安心を。
実績画面に並ぶ裏返しのカードをクリックすると、一瞬だけカードがめくれ、うっすらと絵柄が見えるというおしゃれなヒント機能もついています。コンプリートが難しいと感じたときは、この仕掛けをぜひ活用してみてください!
カードと仲間で紡ぐ、多彩な物語の結末

カードの使い方を工夫しながら、仲間とともに世界を少しずつ変えていく。それが誰かにとっていいエンディングだったり、時には考えてしまうような終わり方だったりするのがこのゲームの面白いところです。
試行錯誤の中で生まれるユーモラスな展開や、キャラクター同士の意外なつながりがプレイヤーの好奇心をくすぐり、最後まで飽きさせません。
短いプレイ時間の中にも手応えと満足感がしっかりと残り、実績を解除し終わる頃にはキャラクターたちを愛おしく思うこと間違いなし。
絵本の世界を旅するようなやさしい冒険を求める人にこそ、ぜひ触れてほしい一作です。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | Pilgrims |
| ジャンル | ポイント&クリックADV |
| ストア価格 | 850円 |
| リリース日 | 2019年10月7日 |
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煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
無料で、どなたでも。スマホで、PCで、どこでも。
まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。
寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』

