何かして欲しい。何かしてあげたい。これってまさに愛ですよね。
誰も死なない愛の作品「プリンと盾琴」をレビューします。
プリンと盾琴の概要
死にやすい騎士『リュラ』を操り、大賢者『シグナス』と一緒に王国を襲撃してきた魔物を撃退するパズルSTG。
主人公の持っている盾琴を使用すると、生命力と引き換えに敵弾をはじき返せるため、最適解を探しながら敵弾を跳ね返すパズル要素が特徴です。
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リュラさんは相手の弾を跳ね返す呪いのクソゴミ盾琴を持っているけど、ボクの魔法「幸福リング」があれば、盾琴を使う意味も理由も必要性も全くないよ。
しかも呪いの盾琴を使うと魔法のリングが消えてしまうから、使う理由が全くないクソ武器なんだ!
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おすすめポイント①
面白くも歪んだゲーム性
プレイヤーを突き放す距離感
なんといっても、このゲームは不親切。チュートリアルもなければ、どこにいって何をするかも明確になっていない。手当たり次第にゲームモードを試しながら、何が起きるか検証する必要がある。
裏を返せば、全てを自分で見つけないといけないため、一種の言語解析をしているような心地よさも感じられる。一つづつ謎が解けることで設定や時代背景が浮かび上がり、うっすらと概要や物語の断片が見えてくる感じが心地良い。
理不尽なほど不親切なんだけど、ユーザビリティから逆行することでしか味わえない体験を楽しめる。具体的な操作を伏せることで、プレイヤーの自主性を小突くスタンスが特徴的だった。
見習うべきか分からないけど、作家性を存分に発揮してる独自性の高い作品だと思う。
STG×パズル×アクション=覚えゲー
今作は弾幕STGの形こそとっているものの、魔力を使えないリュラは弾を発射する能力を持っていません。そこで活用するのが盾琴です。
盾琴を使用することでHPと引き換えに弾幕を跳ね返すバリアが発生し、相手の攻撃を弾き飛ばすことで敵を撃破できます。敵弾が密集する場所に移動し、タイミング良くバリアを発生させるなど、従来のSTGっぽさを残しつつパズル的な要素を組み込んでいます。
バリアを利用するために生命力も削られるため、回数を減らしつつ効率的に敵を撃破するのがポイント。
- 【STG要素】弾を誘導してポジションをキープする
- 【パズル要素】跳ね返し角度・跳ね返し方法
- 【アクション要素】跳ね返すタイミング
単純に色物ということではなく、ゲームシステム的にも練りこまれてて面白い。
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ボクの生み出した魔法のリングがあるから、盾琴を使うことは一回もないよ。
寄り道しないで魔王を倒しにいこう!
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おすすめポイント②
愛が重すぎる死にたがりなキャラクター
スグ死んじゃうけど勇敢な騎士
『リュラさん!』
リュラさんはとっても勇敢な騎士で、ボクと一緒に悪の魔王を倒してくれる大切な理解者なんだ!
ぼくの魔法を壊すクソゴミ盾琴を手放さないのは許せないけど、ぼくのことを尊敬している良い子だよ!
とってもすごい賢者
『シグナス』
ボクは魔法が大得意な大賢者なんだ!
魔王が王国に襲撃してきて、ボクとリュラさん以外はみんな死んじゃったけど、一緒に悪の魔王を倒しに行くんだ!
真相に気付いた若き王
『アクシェラ』
シグナスが大賢者になった理由に気づき、彼を救済するために奮闘する若き王様。
幼き頃からシグノスを慕っており、実はリュラの弟だったりする。
ネタバレを考慮して深く触れませんが、メインキャラクターの1人です(これを見ている人は既にプレイ済みかもしれませんが…)
おすすめポイント③
伏線だらけの謎めいたシナリオ
アイテムから分かる断片的なストーリー
特定の条件を満たすことで、各ゲームモード内でコレクションアイテムが入手可能。各アイテムを閲覧することで世界観や時代背景を知れるため、試行錯誤してコレクションを増やすことも目的の一つです。
またキーアイテムが順番通り揃うとは限らないため、歯抜けの情報が断片的に集まることも。各アイテムの入手方法は完全に伏せられており、探すまでの工程すらも仮説検証が必要になります。
個人的な願望としては、ちょっと調べるだけでネタバレ情報も見つかるので、答えを見ながらでも最後まで遊んで欲しいなって思ったりします。アイテムを集めて考察すると、物語でバラまかれた伏線は回収できるのでご安心を。
キャラクター全員、愛だらけ
ネタバレになるのでいえませんが、もう愛が深い。どうしようもないくらい、矢印がデカい。漏れなく全員のメンがヘラってるので、好きな人には刺さるだろうなって感じ。
いや、ホントはめっちゃ言いたいんですけど、こればっかりは遊んでくれとしかいえないのですよね。値段も高くないですし、サクッと触って欲しい。そして、あわよくば沼って欲しいですねぇ。
プリンと盾琴の魅力
プレイヤーの技術力に依存するゲームデザイン
基本的なゲームシステムもさることながら、ゲームの作り方が上手い。敢えて不親切にすることでプレイヤーが強制的に試行錯誤しなければならない環境が作られていて、何度もリトライすること技術が向上する。弾避けも『パターン避け』が通用したり、所詮はタイミングゲーみたいな部分もあるから、覚えてしまえば反射神経もクソもない。
プレイヤーの技術介入や好奇心がストーリーに影響を与える体験としては、不親切ながらも面白いゲームだったと思えた。プレイを強制させる胆力もそうだけど、こんなゲームを作ってしまう開発者さんがおもしろい。死んだらリトライじゃなくて、謎が解けなくても永遠とリトライだし、完璧な操作を成功させたところで、何も変化しない場合も珍しくない。
不親切と向き合い、自分で解読する。ゲームの前提がすっぽり抜け落ちているからこそ一種の中毒性があるし、このゲームでしか得られない栄養素が存在する。ネタバレなしでやってくれ…とも思うけど、人によって遊び方の好き嫌いもあるし、個人的にはネタバレしてでも最後まで遊ぶことを推奨したい。
まとめ総評:自分だけの秘密にしておきたいけど、有名になって欲しい名作パズルSTG
やっぱり不親切。だから良いのかもしれない。一つ言えるのは、人を選ぶから間違いなく企業では出せないと思う。遊びやすさの前提を壊しているし、そりゃ批判の声も上がる。謎解きも強制させられるし、開発者の意図を当てろと言われているようなもので、分かるまでが遠い上にほぼノーヒント。
だからこそ良いというか、それがまかり通るようなゲームデザインがスゴイ。丁寧なチュートリアルがあるわけでもなく、ところどころで物語は欠けており、放り出された状態で終わる人もいるかもしれないのに、作家性を貫く姿勢に清々しさすら覚える。
必要最低限の情報だけを与えて、プレイヤーに問いかけるような。こちらにお膳立てする気が一切なくて、「俺、こんなの作ったんだ」って言ってるような。すっごい、人の存在を感じた。癖が強くて万人受けはしないけど、埋もれるには勿体ない作品でした。