「釣りが面白いRPGは名作」。そんな言い伝えを聞くたびにホントにそうか……?と本気で考え込む。まぁ確かに割合は多いけど、関係ないような気もする。
ミニゲームが抜かりなく面白いからこそ、本命であるバトルシステムも良く見える。テイクアウト用のプラ容器で食べるより、白い大皿でパスタを食べた方が美味しく感じるのと同じ原理だと思う。
今回紹介する『シーファンタジー』は、釣りが主体のRPGです。果たしてRPGとして成り立つのか。それとも釣りは添え物にしかなれないのか。実際に遊んだ感想を並べながら紹介しようと思います。
釣りをしながら世界を回るRPG

シーファンタジーは釣りを題材にしたドット絵RPGです。戦闘パートは全て釣りでおこなわれます。「お金を稼ぎたいから釣りでもするか~」とか「実績解放のために頑張るぜ!」とかではありません。釣りを中心にRPGが展開されていきます。
戦闘は皆様おなじみの移動バーをタイミング良く止めるQTE方式。ビタ推しでパーフェクトが出せれれば無双できるし、タイミングが掴めず誤って二度押しすれば身体ごと食い破られて死にます。
コマンド式釣りバトルとかではなくて、ホントに想像通りの釣り。水面にぽちゃっと浮きを沈めて「引いてるッ引いてるッ!!」ってなる奴。たたかうをずっと選ぶゲームに比べたらそりゃ楽しい。

「最初は面白そうだけど後半になってマンネリ化しそうじゃん」と思った。これは他人がどうこうじゃなくて自分でそう思った。でも杞憂だった。飽きる前に新しいギミックが登場するし、見たことないルアーが次から次へと解放されるから飽きる暇もない。
そしてエンカウントが爆速。投げて待つ時間がほぼない。ヒュッと投げて着水と同時にデェエルスタート。わんこそばエンカウントで戦闘にストレスが全くない。戦おうと思ったときに出会って即バトルできるのがすこぶる快適だった。

ストーリーは色々あって世界を救うために奔走する流れ。数百年前から生きる伝説のシーアズ(この世界のモンスター)をボコって素材を剥ぎ取ることになるんですが、そんなんそっち抜けで見たことない島を巡って釣りばっかしてました。
壮大な物語だけど釣りの素朴さが損なわれていない。RPGの釣りがそのまま拡張されている。属性攻撃で弱点を突いて大ダメージもなければ、バフ・デバフを掛けて戦略的に立ち回るとかもない。ちゃんと釣りだけで世界が回っている。

釣りならではのステータスがあるのも面白い。クリティカルヒットになる黄色ゾーンを広げる『テクニック』や、敵の攻撃タイマーを遅らせて被ダメを抑える『視力』。プレイヤースキルの差を埋めることで、気を張って戦闘に望まなくても済む。
釣り要素がRPGの主導権を握っている状態。当たり前なのかもしれないけど、この完成度まで叩きあげてくれた開発者チームを全力で賞賛したい。このゲームは釣りRPGとして成り立っている。
レベルを上げて物理で殴れないなら装備を更新すれば良いじゃないと姫君が言ってました

シーファンタジーの良さでもあり分かりづらさでもあるのが成長要素。一般的なRPGのセオリーは「レベルを上げて殴る」ですが、今作はレベルアップよりも装備更新が重要です。弘法は筆を選ばずではなく、村人にエクスカリバーが正義です。
釣ったシーアズの素材を合成し、ルアーと針の2種類を随時更新するのがポイント。装備によってパラメータが爆上がりするので、こまめに装備を見直すと今作の面白さが見えてきます。ここに気づかないといつまで経ってもジリ貧です。

ダンジョンを隅々まで歩いて宝箱を探すのではなく、世界各地を移動しながらシーアズを釣って自分で装備を創り出すのが今作の醍醐味。図鑑を埋めながら素材とにらめっこして、昼夜問わず奔走するのが楽しい。
裏を返すと、店売り武器やダンジョン内で手に入る武器は性能がイマイチなので、能動的に武器を作る発想がないと苦戦します。ストーリー進行度は同じなのに一人は木の棒で、もう一人はアルミ合金でびゅんびゅんしなる高級ルアーなんてことも起こりえます。

釣り竿のほかに釣り針も重要な要素。シーアズの素材を2つ合成することステータスを上げるアクセサリーが作れます。素材によって能力値が決められており、上げたいステータスに応じて釣り針の厳選が可能です。
レア素材になるほど上昇幅も大きくなるので、仮に釣り竿で使わなかった素材も余すことなく有効活用できます。素材の中には能力値がランダムで変化するものもあるので、数字を吟味して最強の釣り針を狙う遊び方も出来ちゃいます。

それと忘れがちなのが餌です。餌は消耗品ながらも任意のステータスを10以上伸ばせるので、素材の売却で荒稼ぎした後、まっ先に確保したいアイテムといえます。これがあるとないとでは雲泥の差です。
「ザコ敵なのに硬すぎワロタw」となっている原因の一つが餌の付け忘れです。装備するだけで実質10レベル上がるようなもので、ケチらず買って朝から晩まで釣りましょう。
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強くなるために図鑑と睨めっこ

コツコツと同じ事をくり返すのではなく、色々な場所を探索して新しいシーアズを釣り上げて、図鑑を埋めるのが面白い。図鑑には生息地と出現時間が記載されており、新種の目星が着きやすいのもポイント。
釣り竿クラフトには何らかの素材が必要になるため、手持ちの素材で作れなかったときは図鑑とにらめっこ。新しいシーアズが合成に必要な素材を持っていることが殆どなので、自然と探したくなる導線が作られてて上手いなと思いました。

釣ったシーアズが規定サイズを超えると『王冠マーク』が追記されるため、素材集めとは別のモチベーション維持にも一役買っています。獲得できる素材も増えて一石二鳥なので、レベリングにメリハリが付くのも嬉しいところ。
またコレクション要素として『黄金魚』が隠されており、釣った魚はとある場所で貴重なアイテムと交換してもらえます。ネタバラシするのも気が引けるので、実際に釣って正体を確かめてください。

図鑑を起点とした一連の導線作りが綺麗なので、RPGとして違和感なく機能している印象。コレクション欲+成長要素をゲームに上手く落とし込んでいて、そのために店売り武器を意図的に弱くしてる気がする。
何を魅せて何を隠すか。取捨選択がしっかりしていてコンセプトも明確。かといって好き勝手やるんじゃなくて、遊び手のストレスを出来る限り抑える努力も感じる。こういうゲームが増えると良いなと心底思う。
2Dアクションで釘を刺す

今作は二人の主人公を交互に使い分けながら物語を進めていきます。
- 『釣り担当』のロッド
- 『戦闘担当』のアクセル
実はこのゲーム、釣りだけじゃないんです。とくにボス戦はアクセルの2D戦闘パートで弱らせた後、ロッドの釣りパートで吊り上げて撃破となります。このアクション部分が賛否両論っぽいのですが、個人的な意見を述べるとポジティブ評価です。
アクション性だけを見れば物足りなさも感じますが、そういう意味ではなくて釣りゲーの中にアクションパートが存在するのが重要。ボスを弱らせて釣ることで他のシーアズよりも格上であることを自然と主張できるし、釣りのマンネリ回避にも繋がっている。

RPGにミニゲームが用意されている理由と同じです。メインパートから意識を引き剥がすサブパートを用意することで、本命である釣りが盛り上がる。「釣りが面白いRPGは名作」と同じ原理かなと思います。
とはいえ、アクション部分がめちゃくちゃ面白いという訳ではありません。全力でリソースを割いた訳ではないと思うのでそりゃそうだと思いますが、過度な期待を持たないよう余計な一言を残しておきます。

色々書きましたが、2Dアクションの部分がなかったら間違いなく『非常に好評』にならなかったと思う。ここが素晴らしくて紹介記事を書いた節もある。在るのと無いのではボス戦の盛り上がりが全然違うから。
闇雲に組み込んだ訳ではなくて、ストーリーの盛り上がりに貢献しているからこそ親指ガン反りで上向きにしています。「あった方がウケ良さそうだし、テキトーに入れとくか~」って印象を受けていたら当然ネガティブ評価です。
精神論を持ちだすのも気が引けますが、少なからず自分は2Dアクションパートに誠実性を感じたので、メディアを介して面白かったと伝えさせてください。
映えと面白さのバランスが良い超王道RPG

見た目的に軽めのRPGかなと思いきや、自分で考えてルアーや釣り針を更新していく硬派なRPGでビックリしました。RPGに馴れていない人は苦戦するかもですが、図鑑を埋めて装備を揃えることさえサボらなければ戦えるのでご安心を。
映えを意識してゲームの根っこをおざなりにする作品も多いなか、丁寧に作られた国産RPGに出会えて大満足です。ちゃんと真面目にゲームを作っているので、上手いこと売れてDLC出てくれたら嬉しいですね。
参考までにいうと、筆者のクリア時間は7.6時間でした。図鑑は3匹残してラスボス戦に突入しちゃったので、のんびり遊んで10時間前後かなと思います。
真面目な王道RPGを遊びたい方は是非どうぞ。
〈詳細情報〉
ゲーム名 | Sea Fantasy / シーファンタジー |
ジャンル | ドット絵RPG |
ストア価格 | 1,650円 |
リリース日 | 2025年1月7日 |