RPGは地味なゲームだと思う。大作と謳われる作品が映えるのは、キャラや技の演出がリッチだからなんだよなって。ダメージ計算とかスキル周りとか、バランスを取りながら実装しても見栄えでウケないと目立たない。伝わりづらいモノばかりで切なくなる。
だからこそRPGが好きだ。面白そうなスキルの使い方を考えたり、レベリングする度に増えるダメージにニヤついたり、気持ちばかりの発見にウキウキするあの感じ。質素なゲームほど細部は光り、メカニズムの柔らかい部分が剥き出しになって愛おしい。
今回紹介するのはフリーゲームRPGの『タナトスチェイサー』。俗に言うツクール製の作品で企業が予算を掛けて作ったゲームではありません。でもRPGを理解した真面目な人が作っているのでめちゃくちゃ面白いんです。たっぷり語るからまぁ見ててってよ。
この記事は個人ゲーム開発者『プラカヴィ』さんの提供でお送りします
武器の魔改造で相手を破壊する戦闘特化RPG

タナトスチェイサーは武器を砕いてスキルを抽出&武器カスタマイズを楽しめるツクール性のフリーゲームRPGです。親しみのある人はとことんあるし、親しみのない人はとことんないかもしれません。
『結晶石』と呼ばれる特殊システムが存在し、武器を砕くことで固有のパッシブスキルを武器スロットに装着できるのが特徴。ブラッドソードを砕けば『攻撃時に吸血』のスキルがもらえるみたいな感じ。

また経験値とは別枠でスキルポイントが用意されており、ダンジョンを制圧(特定の戦闘数をこなすor最奥のボス撃破)もしくは、制圧後に登場する『賞金首』を撃破することで入手できます。
スキルの運用次第では、カチカチ前衛タンク&物理メイスのごりごりアタッカー編成なども可能に。スキル振り直しも容易なので、自由に組み直せる育成のハードルが低いのも魅力的ですね。

ひたすら敵を倒してダンジョンを制圧し、経験値とスキルポイントを貯めるサイクル。ドロップアイテムを結晶石にして武器カスタマイズを楽しみ、それでも余ったら売却して新しい武器を買う流れ。
系統としてはハクスラ系。戦闘面に関する要素が潤沢で飽きることなく戦闘を楽しめるのが印象的でした。武器を獲得するチャンスも多く、枯渇して強化が進まないなんてこともありません。

またHPやMPがダンジョン離脱後に全回復するため、今作の宿屋は『半永久バフ』を付与するものになっています。火力を伸ばして殲滅力を高めたり、アイテムドロップ率を上げることも可能です。
またダンジョンに食料を持ち込むシステムもあり、持ち込んだ食材によって様々なバフが掛かります。キャラ性能アップはもちろん、稼ぎに特化したものもあるので開発者さん分かってるなぁ~と唸りましたね。
武器を砕いてスキルを抽出できる『結晶石システム』

タナトスチェイサーで一番の目玉である『結晶石システム』。武器を壊してスキルを抽出するシステムは珍しくありませんが、ココを最大限に活かす仕様が随所に感じられるのが今作の魅力なんです。
アイテムドロップ率をとことん上げたり、中古品として安価の武器を購入できたり、武器商人も顔負けの武具仕入れを行えるのが今作の醍醐味。装備品の枯渇が起きにくくトレハン感覚で収集を楽しめます。

結晶石を埋める武器スロットは素材アイテム「インゴット」で増やせるので、その辺の武器を拡張して激強スキルをぱこっと埋め込めば普通に戦えます。どんな武器も化けるのがロマン感じて良いですよね。
また結晶石の効果は重複する場合もあるので、攻撃力を10%上げるものを2つ付ければ20%になります。これはもう「ぱわーっ!!」と叫ばざるを得ません。メキメキ強くなって気持ちよすぎるので。

ステータス強化や弱体化付与。追加攻撃で手数を増やして攻撃を全体化。従来はツキルツリーでおこなう強化を武器カスタマイズに逆輸入して、自由に付け替えできるシステムを組んだのは大発明だと思う。
ハクスラでよく見かけるランダム性能はありませんが、固有効果を頭に入れてビルドを構築するのは異なる気持ちよさがあって個人的に好きです。素材もサクサク手に入るので模索しやすいのも嬉しいポイント。
トレハン風ご褒美で戦闘が楽しくなる『妖精システム』

結晶石で武器を大量に砕くにも関わらず、枯渇しないと伝えたのには理由があります。武器の供給が枯渇しない理由は、ストーリーをある程度進めて解禁される「妖精」お助け機能です。
ざっくりいうと、戦闘後にご褒美として武具が貰えるシステムです。アイテムドロップとは別の扱いなので、頭空っぽで剣を振り回したり全体魔法の連打でザクザク素材が貯まるんですねぇ~。最高かよ。

貯まった武器は結晶石にしても良いし、売却して金策に回しましょう。余った防具は後述する「パッチワーク」に使用するとドーピングアイテムと交換できます。最高すぎるというか抜け目がなさ過ぎる。
妖精アシストはランダムではなく固定の戦闘回数をこなすのが条件なので、地道にコツコツ続けていれば必ず恩恵を受けられるのもアツイ。努力は必ず報われるのでやりがい搾取もおきません。

また中盤頃になると『バザー』が解禁。強力なスキルを持つレア装備や、ステータスを永久的に上げるドーピングアイテム、武器スロットを拡張するインゴット等のレア素材が購入できるようになります。
総じて戦闘をこなすことへのご褒美が凄まじく、ストーリーそっちのけでレベリングしたくなるゲームなんです。魅力的な寄り道とかじゃなくて戦闘ばっかりしたくなる仕組みが揃っているのが良いですよね。
HARF-WAY コマーシャル

余った防具を分解して種アイテムに変える『パッチワーク』

前述した妖精システムで大量の武具を集め、結晶石を作りながら金策して強くなるのが大きな流れになるのですが、まだまだやり込み要素があります。ツクール製のRPGといえば『ドーピングアイテム』ですよね。
今作には『パッチワーク』と呼ばれるシステムが存在しており、防具を分解することで永続強化アイテムが受け取れます。人によって呼称は変わりますが、俗にいうドーピングやら種アイテムって奴です。

パッチワークと結晶化でドロップアイテムが腐りにくく、無限に雑魚狩りを楽しめる訳です。戦闘に対するモチベーションをこれでもかと引き上げてくれるシステムには脱帽しました。お見それします。
レベル上限に達してもやれることが多いので、稼ぎ行為が大好きな方はめちゃくちゃ楽しめると思います。裏ボス撃破に向けての極限強化みたいな扱いなので、必須ではないのかなって印象です。

分解した防具によって獲得アイテムが異なるため、図鑑と睨めっこしながらドロップアイテムを調査。特定のエリアで粘りながらトレハンするのが地味に面白い。そこはかとなく古のRPG感があって好きです。
またパッチワークの完成数に応じて特殊なパッシブ効果を付与するアイテムも受け取れるなど、地味な強化の合間に重要スキルが差し込まれるのでメリハリも効いてて良きです。個人的に大満足のシステムでした。
人間を洗脳して操るタナトスを追う王道展開

物語は『タナトスの血魂』を執拗に追いかける青年主人公『ベザ』と、とある理由から一緒に旅をすることになった魔法使い(撲殺アタッカーにもなれる)『エアリ』を中心に物語は動きます。
今作は生きた人間を洗脳して意のままに操る『タナトス族』との戦いを描く王道RPG。シリアス過ぎる雰囲気もとくに感じることなく、ほどよくギャグを交えながら進行するので肩肘張って遊ぶこともありません。

クリア時間は難易度によって変動しますが、真ん中の難易度でのんびり遊んで10時間ちょっとかなって感じです。戦闘が爆速&オート機能があるので、動画見ながらレベリングしてサクサク進むと思います。
「RPGは高難易度じゃないとやる意味がねぇ!!」という方はLv1縛りモードもあるので、歯ごたえ的にもじっくり楽しめると思います。結晶石もあるし何とかなるんだと思います(筆者は未プレイ)。

物語後半では宿敵との決闘イベントも用意されており、風呂敷を広げたまま投げっぱなしになることもありません。安定感抜群で超王道です。古き良きJRPGって感じで良いですよ。
フリゲならではのぶっ飛んだ展開を求める人には合わないかもしれませんが、たっぷり解説したやり込みシステムと相まって腰を据えて楽しめるツクールRPGといえるでしょう。これが無料だと思うと、良い世界になったなと思うよホントに。
ちょっとした余談

ここまでの紹介で『武器を砕いて結晶石でゴリ押しするRPG』と思われたかも知れませんが、それはあくまで通常難易度の話です。今作は『レベル1固定モード』も導入されており、戦略でねじ伏せる遊び方も可能。
スキルで隊列を入れ替えてダメージ軽減&怯み付与で隙を作ったり、爆発的にステータスを引き上げる『息を止める』で一点突破したり、スキルを絡めた攻防も魅力。要するに攻略しがいのあるRPGです。

相手の行動さえ分かればレベル1でも完封できるのがスゴイ。遊ぶと分かるんですが、地味なスキルが多いんですよ。特定の状況だけ使える性能も多くて、相当バランス調整した形跡が見られました。
この辺を全部説明するのも野暮だと思うので、スキル調整力の光るRPGであると伝えておきます。壊れスキル連打で雑に突破するんじゃなくて、補助魔法や陣形移動でヒリついた戦闘も楽しめるよって感じです。
開発者『プラカヴィ』さんから一言

さらりと紹介されてましたが『レベル1固定モード』なんてもの、クリア後要素か何かのおまけだと思いますでしょう? 実は最初から解放されているのです。初見で遊んでも構わないのです。 FF5が好きでして。
強いボスと対面した時、たくさんレベルを上げて倒しました。 でもそんなボスも戦略によっては低レベルクリアなんて出来ちゃう代物なんです。どんな遊び方も出来ちゃうんです。 目指したのはそんな作品でした。
プレイヤーの発想次第でどんな構築だって出来て、悪知恵を存分に生かすのも良し、稼いでごり押しするも良し。 そんな懐の広い遊び心地の作品です。是非お手に取って確かめて頂ければ幸いです。
RPG沼に浸かった人間が作るいぶし銀フリゲー

「フリーゲームRPGの魅力は何ですか?」と言われたら「行き過ぎた愛情」と答えます。システム周りとかバランス調整は地味だし、ちゃんと考えるほど難しいジャンルだよなって思うんです。遊ばなきゃ伝わらない部分に命を削るのは凄いことですよね。
なんというか、RPGのシステムを根っから好きな人に触って欲しい。全員にハマらなくても良いから、誰か一人に届いて欲しいなと思いながら書いてます。戦闘のモチベを保てるシステムは客観的に面白いし、RPGへの愛情も感じる良いゲームでした。
ここまで読んで貰ったのも何かの縁だと思いますし、何より無料で遊べるゲームなのでビビらずに遊んで欲しいなと素直に思います。この記事がプラカヴィさんと読者のツクール初体験になったら良いな~とか思いつつ結びの言葉とさせて頂きます。
ダウンロードリンクはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/29463