絵が上手いとか、曲がカッコいいとか、好きなキャラが登場しているとか。ゲームを選ぶ理由が常に面白さとは限らない。どちらかというと、ゲーム性で作品を推し量る人が減った気さえする。
まぁ理由も分かる。これだけ沢山の娯楽が溢れた世界で、ある程度やりこんだ末に面白さが分かるんじゃ遅すぎる。数分、下手したら数秒。第一印象で判断しないと情報量に押し潰されてしまうから。
今回紹介する『首無し魔獣と双子姫』は、周辺情報から王道タワーディフェンスであることが伺えた。でもそれ以上は見えてこなかった。どんな特徴があって、どんな魅力があって、どんな楽しみ方があるのか。遊ぶまではハッキリと分からなかった。
でも面白かったんですよ。ゲームとして目指している部分が明確で、作った人が大切にしている想いも伝わってくる。この記事は、作品の面白いところを遊ぶ前に見つけちゃおう的な思想で書いてみました。
ごゆるりと楽しんで頂けると幸いです。
この記事は個人ゲーム開発者
『Nes』さんの提供でお送りします
『コンボ』が鍵を握るぬいぐるみタワーディフェンス

『首無し魔獣と双子姫』は左から右に登場するモンスターを迎撃するタワーディフェンス作品です。複数の進行ルートを制御するテクニカルな操作もなく、全兵力を真っ向からぶつける形で防衛していく流れです。
一度置いたユニットは後から動かせず、その場に固定されて射程圏内に入った敵をひたすら殴ってくれます。でもそれだけじゃ100%クリアできません。今作の特徴は『コンボシステム』に隠されています。
敵を攻撃もしくはウェーブ突破時に獲得できる『マナ』を消費することで、各ユニットが持つ固有スキルが発動。コンボタイマーが切れる前にスキルを繋ぐことでコンボが発生し、火力アップやボーナスコインを受け取れます。まごうことなきコンボゲーです。

ユニットの設置場所や敵との相性が噛み合っていても、操作がおぼつかないとボスキャラに踏み荒らされて終了。上手くコンボを繋げばオーバーキル濃厚。見た目は可愛いのに根っからのゲーマー向けでした。
最初は戦略的にユニットを配置する作品と思うじゃないですか。違うんです。高火力ユニットを適切な場所に固定して、長いコンボでバフを掛けてレールガンの如くスキルをぶっ放すゲームなんです。ホントに。

ぬいぐるみ兵士が可愛いのもポイントでして、普通の目をボタン目に変更することも可能です。レールガンなんて剣呑な言葉を出してしまいましたが、なんだかんだでやっぱり可愛いゲームでした。
コンボ数=超火力で爽快感◎

今作はコンボ数に応じてダメージ補正が入るシステムを採用しており、技を繋げば繋ぐほど攻撃力が増加します。100ダメージにも満たない威力がいつの間にか10,000ダメージに化けるので爽快感バツグンです。
コンボ=バフのような位置づけのため、ユニットを設置した後がホントの戦いといえるでしょう。またコンボ数に応じてボーナスコインが貰える点もポイント。ケチらず使うことで金策にもなる訳です。

しかし、スキルを使うためには『マナ』が必要です。マナはユニットの自動攻撃orウェーブ突破時のみ付与され、無尽蔵にスキルを放てる訳ではありません。限りあるリソースを何処でぶつけるかが肝になります。
タイマーを見ながらコンボが切れるギリギリまで技を粘ってクールダウンを調整しつつ、コンボ数をコツコツ稼いで高火力でボスを溶かす流れが美しい。各ユニットに役目が用意されてるのも好印象でした。

高火力だけどマナ消費の激しいユニットはコンボ稼ぎに参加させず、奥の手として後方に下げるのが吉。火力は低いけど連続技を持っているユニットは、逆に最前線でスキルをぶっ放した方が活躍できます。
最終ウェーブで登場するボスはDPSチェックを兼ねており、コンボを稼いで金策できていない場合は火力が足りずに止められません。瞬間火力を出すことはもちろん、戦力を整える点においてもコンボが一役買っていて面白かったです。
敵との相性が悪いとフルボッコ

スキルをぶつけてコンボを稼ぐ流れを作りつつ、戦略がマンネリ化しないようステージ構成にメリハリを付けている部分にも注目。「どのステージもやること変わらないじゃん!」とはなりません。
今作に登場する敵ユニットはいくつかの特性を持っており、対策を練らずに突撃するとボコボコにされます。調子に乗って編成を変えないで進むと、ボスウェーブに到達すらできないとかザラです。
どんな攻撃も被ダメが1になるメタル系は、連続技や特攻スキルで処理。一部の攻撃を無力化する飛行系は、攻撃の届く遠距離ユニットを中心に組む。こちらの戦力が限られている以上、敵への対策は必須です。

要するにメタ構成が必要なんです。後半になるほどタワーディフェンス要素が増えてきて、ユニットの最適化を考える面白さが頭角を現します。レベリングして力押しは出来ないので、じっくり考えて攻略法と向き合いましょう。
また相手にデバフを与えるスキルも用意されており、火力を使って倒しきる以外の方法で敵を処理することも可能です。敵を鈍足にして足止めしたり、相手の防御力を下げたり、コンボ稼ぎと併走しながら敵を弱体化する戦略も。
ぬいぐるみ兵士を用いた可愛らしい作品と思いきや、中身はバキバキのストラテジー。タワーディフェンスの面白い部分を凝縮して、美味しい部分を分かりやすく組み込んだゲーマー向きの作品だなと感じました。
強化要素で自分好みの戦略にチューニング

コンボを繋ぐタイミングはもちろん、特定の状態異常中にヒット数が増加するスキルもあるので、全部を意識して最適解を出すのは至難の業。やり込みがいもあるので、見た目以上にメカニズム至上主義で個人的に好みでした。
だからといって、ミスが絶対に許されない緊張感がある訳でもありません。道中で『スクロール』と呼ばれる強化アイテムも手に入り、『マナ回復』や『コンボタイマー増加』など、痒いところに手が届く仕様も作り手のゲーマー気質を感じさせます。
また好きなユニットの火力UPやスキルクールダウンの短縮もできるため、自分好みの戦略で戦いやすい部分も印象的でした。そして強化ポイントの振り直しも自由。まさにノンストレス。分かってらっしゃる…



筆者は状態異常を絡めた立ち回りが苦手だったので、低コストスキルをぶん回してコンボでねじ伏せる戦略でクリアしました。初期から使える騎士と弓術士をフル強化するとどのステージも安定するのでおすすめ。
総じて『コンボ稼ぎ』を起点とした爽快感が強い一方、プレイヤースキルによって評価が分かれそうな印象も受けました。ゲームに自信がない人はEasyモードにしてフィーリングを楽しむとかでも良さそうです。
なぜEasyにしてまで進めて欲しいのか。それは単純にストーリーを追いかけて欲しいからです。突如ゲームの世界に閉じ込められた双子のお姫様が、ケンカしつつもお母さんのために奮闘する優しい物語についてちょっとだけ紹介しますね。
王道一直線の暖かくて泣けるストーリー

今作は一人の女王様が双子のお姫様に絵本を読み聞かせるシーンから始まります。「バチバチにコンボを決めるタワーディフェンスがこれから始まる…!」とは夢にも思えないほっこりとした導入ですよね。
このまま進むのかな~と思いきや場面は急転。謎のキャラ『ロボッコ』からルール説明を受けます。何やらゲームの世界に突然連れて来られたようです。理由は不明ですが、強制ワープか何かの類なんですかね。
双子の姉『アスナ』が面を食らっているところ、双子の妹『ムーナ』が登場。てっきり協力して脱出するかと思いきや、二人は絶賛ケンカ中なので妹のムーナは話を聞かずに先へと進んでしまいます。

双子姫がケンカしている理由は『ただの勘違い』。物語を進めると仲違いの理由も語られます。ちょこっと話すと、宝物庫を管理するアスナの目を盗んで、ムーナがとあるお宝を持ち出したことが原因です。続きは遊んで確かめてくれい。
険悪な雰囲気を漂わせていますが、最終的に伏線を回収して大団円になるので安心して遊べます。最後は普通に泣きました。おじさんゲーマーは涙腺ゆるゆるだと思うので、十中八九泣くと思います。
物語と連動してユニットが解放されるため、クライマックス付近で強力な兵士がアンロックされるのも激熱でしたね。ああいう演出に弱いのでグッときました。ゲーム性も面白いけど、物語も見せ場があって良い展開だったなと思います。
まとめ
そもそも、タワーディフェンスに馴染みがなかった。にゃんこ大戦争すら飽きてしまった人間に面白さが分かるのか不安だった。1面の最終ボスに到達し、コンボを叩き込んでボコボコにした時、疑惑は晴れました。
ゲームの魅力は触らないと分からない。そんな当たり前のことを思い知らされる作品だった。絵本のような可愛らしい見た目の裏側に、思いも寄らぬ体験が待っていることもある。ゲーム性で勝負している姿勢が伝わってきて良かった。
タワーディフェンス入門におすすめ!と大口を叩けるほどジャンルに精通している訳ではありませんが、コンボの数だけ火力が伸びるゲーム体験はジャンル問わず爽快感のあるものでした。大体100カウントを越えた辺りからシーケンスを破壊した感覚になれます。
見た目が可愛いからでも良いですし、タワーディフェンスが好きだからとかでも良いですし、気になった方は気軽に触って欲しいな作品でした。ゲーム性重視で選ぶ人もきっと唸るバランスの良さだったので胸を張っておすすめできます。
〈詳細情報〉
ゲーム名 | 首無し魔獣と双子姫 |
ジャンル | タワーディフェンス |
ストア価格 | 1,480円 |
リリース日 | 2025年6月18日 |