夏の暑い中、なんとなく集まって、なんとなく湖の近くで寝転がりながら過ごす…そんな少年少女がある日、探検をする中で1人の老人に出会った。小屋に籠もり太陽の光に怯えるその老人…吸血鬼『リスト』との出会いから、彼らの夏は忘れられないものになる。
『Varney Lake』は、全3作品から構成されるインタラクティブ・アドベンチャーシリーズ、ピクセルパルプの2作目だ。80年代のホームコンピューター風に彩られた、この夏最もアツい作品を紹介したい。
古めかしくも美しい、細やかな表現が目を引くグラフィック

今作はピクセル・パルプと呼ばれるシリーズの第2作目にあたり、20世紀半ばのパルプ小説と80年代のPCのグラフィックスにインスパイアされた作品だ。『Mothmen 1966』『Varney Lake』『Bahnsen Knights』の全3作品ごとにテーマカラーが決まっており、今作はイエローやブルーが基調になっている。
懐かしさを感じさせる洗練されたゲーム画面が美しく、ドットで表現される顔のシワや影が目を引いた。また今作と前作で人物の繋がりがややあるものの、単体でも楽しめるのが嬉しい。いきなりVarney Lakeから遊んでも問題はない。
あの子、には彼氏がいる

今作の物語は10代の少年時代と、40代の大人時代を行き来しながら語られる。幼いころの「あの夏」を共にするのは、賢くて精神的にも大人なクリスティーン。クリスティーンが好きだけど素直になれないジミー。2人の親友で少しやんちゃなふとっちょのダグ。
「見つかったらやばい」くらいのガキ大将もいる。クリスティーンには彼氏がいて、ジミーからの好意にも気付いている。なんだかリアルだ。彼氏がいない今のうちに、なんとか彼女の気を引きたい…でも素直になれない…淡い恋心なんて気にならないくらい、この夏に出会う『吸血鬼』の存在に私達は夢中になる。
吸血鬼は情に厚い

出会った吸血鬼は、いきなり襲ってくるわけではなかった。どうやら夏の日差しが強く、体力を消耗しているようだ。それを見た少年たちは近くのがれきを調べたり、布を広げたり、なんとか太陽光を遮ろうとする。物語の合間にほどよい謎解きやパズル要素もあるので、物語に飽きることもないだろう。
こうして無邪気な少年少女たちは、吸血鬼の「命の恩人」となるわけだ。このことが彼らの日常・未来を変えていくことになる。この出会いに私は非常に興奮し、それは物語のラストまで続いた。
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絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

シリーズを全部やらなくてもいい

「シリーズ作品なら、1作目から順番にやらなきゃいけないんじゃないの?」と思う人もいるかもしれない。もちろん全作面白いのでプレイしてほしいのだが、単体でも楽しめるのがこのシリーズの良いところだ。世界観は共有しているものの作品は独立しており、1つのテーマに沿った物語を味わえる。
『吸血鬼』というわかりやすい入り口から、ピクセルパルプシリーズそのものを知るのももちろんアリだ。全作に共通して『超常現象研究家』のルーというキャラクターが出てくるが、物語上できちんと紹介されるので初見プレイヤーにも優しい。
気になる、がずっと続く

steamのストアページを見ると、「ダグに一体何が起きたのか?」という文言がある。そしてタイトル画面には「MISSING」の文字とダグの顔。これらに気付いたのはプレイ後だったのだが、「そういうことか!うわーっ!」と言葉を失ってしまった。
「これってこういうことかな?」のあとにすぐ答えが出てくるのも嬉しいし、「もしかしてこうかも?」とこちらに考えさせる余裕があるのも良い。
とにかく全員やってくれ、面白すぎる!という気持ちで記事を書いているので、この作品の魅力が少しでも伝わっていたら嬉しい。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | Varney Lake |
| ジャンル | ビジュアルノベル |
| ストア価格 | 1,320円 |
| リリース日 | 2023年4月28日 |
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煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
無料で、どなたでも。スマホで、PCで、どこでも。
まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。
寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』

