デッキ構築型ローグライクが苦手だった。スレスパと毎回比較される風潮も好きじゃないし、そもそもカードが強いのか弱いのか基準が分からん。そういうと「このゲームは簡単ですよ~」みたいなことを言われるけどそういうことではない。苦手意識を持った人には難易度以外の部分でやりたいと思わせる導線が必要であって、そこまで丁寧に教えてくれる人もいないからひっそりとジャンルから去る事態に陥る。
ゼットジリオンズを遊んだ理由はホントに偶然で、見た目が馬鹿っぽくて好きだったから。ぬるっと遊び始めて気づけばモラルもくそもないヤンチャなフレーバーテキストに心を撃ち抜かれていた。加えて、同パブリッシャーからリリースされている「ウルフストライド」が好きだったこともあり、最後まで続けてみるかぁ~みたいな感じでやり込むことにした。
「遊ぶたびに戦略が変わる」を全員が求めているわけじゃない
このゲームの何が好きかを一つ挙げるならば、割とテキトーに遊べる部分が好きだ。綺麗にいうと大雑把に遊んでも許される懐深さともいえる。「これが強い」さえ知っていればラスボスも倒せるし、後述する理由から再現性も高いので気持ち的にもすんごいラク。
そもそも、このゲームは素のシステムからして遊び手に甘い。デッキを使い切るまで手札は保持され、手札は常時7枚まで補充される。要するに超高回転でデッキが回るようになっており、ドロソが尽きてお陀仏みたいな事故が少ない。大体ノリで何とかなる。
さらには手札のカードを合体させて別カードに変化させるシステムも搭載。「手札事故!ファッキュぅ!!」でもカード合体をさせると大体解決する。意図的に合体させて強化するカードもあるし、機転を効かせてその場を凌ぐこともできる良心的なシステムだ。ありがとうな、ゼットジリオンズ。
単体でも最強の呼び声高い『エリクサー』にも触れておきたい。効果は「使用ターンの与ダメを6増やす」バフの付与。ここだけ聞くと微妙っぽいんですが、もう一つの効果「使うたびにバフの量が6増える」がめちゃくちゃ強い。正直、これ一枚で壊せる。
いつのまにかバフが18とかになっているので、なんの変哲もない連続攻撃カードがバグった火力をたたき出すこともある。相手の被ダメを増やすデバフと組み合わせると、普通に遊んでいるだけでボスが溶ける。これでいいんだとはまさにこのこと。
みんなが高難易度を求めているわけではない。カードの効果を覚えてシナジーを理解してデッキ圧縮して、レリック拾いつつ最後は運頼みして脳汁どばぁ~をみんなが求めているわけではないのよ。雑に遊んで俺つえぇーをしたい人もココにいる。ラクしたいとかじゃなくて、デッキ構築って普通に難しくないですか?
エースカードとシステムが強くてリソース管理も甘め。加えてドロソにも困らない。以上の点を踏まえてゼットジリオンズに大満足しています。知らないだけでもっと強いカードとかあるんだろうけど、ここだけ押さえればイケるっすが分かりやすくて最高。
人間はトラッシュで、ゴミはジャンクで、惑星はイカれてる
どんなゲームにも言えるけど、作風を色濃く感じるフレーバーテキストが好きだ。意味が分かればテキストとして合格と思う人もいるけど、作品の世界で使われる言葉を当てはめてバチっと意味が伝わる作品こそ至高だと思う。じゃないと気持ち良くない。
今作は人間を『クズ生命体(トラッシュ)』と呼び、使えないガラクタを『ジャンク』と呼ぶ。言葉を丸めるなんてことはなくて、画面に居座るコイツらが荒い口調を吐く捨てることで作品の輪郭が筆圧ごと浮かび上がる。やるならとことんやるぜって感じが頼もしい。
カードを砲弾にしてドッカンドッカン飛ばすのが痛快。トラッシュ(人間)をぶち込んで相手を占領すれば気絶もしくは特殊勝利できるシステムも素晴らしい。俗にいう『ブレイクゲージ』が世界観に溶け込んでおり、爽快感を損なわずゲームを成立させてて超クール。惑星の周りを無視みたいに飛び回る人間の姿に人権のなさが滲みでててそこも最高。
変わり映えしないシステムだとしても、ゲームの世界観を崩さず相乗効果を生んでいるならば、受け手の印象は大分変わると思う。ゲームが面白ければいいってもんじゃない。革新的なアイデアは第一印象を艶やかにするけど、肌に馴染むかどうかは別問題で、統一感を意識して作られてこそ作品に神は宿る。
気分晴らしでボケっと遊んでいたはずが、ときおりゲームそっちのけで物語を楽しんでいる自分がいて、薄らぼんやりとこのゲーム好きだな~と思っていた自分の直感が正しかったんだなと確信した。
開発者のやりたいことが詰まっていて、ぽろっとでた本音が何にも邪魔されずにプレイヤーに届く。客観的に面白いと感じさせつつも、ここぞという場面では作り手の思想を全開に出していく。こういうゲームが好きだ。熱量が論理を超える瞬間、わずか数分かもしれないけど、このために遊んでいたと思える瞬間があって、ありがてぇなと思う。
結局のところゼットジリオンズは町中華である
このゲームの良さは遊んだ感を手軽に残せるところだと思う。大味だけど食べたくなる近所の町中華。『これで良いんだよ味』をサクッと堪能できるのがゼットジリオンズの醍醐味であり魅力だ。
頭を使って強敵を打ち破るとかキレイなものではなくて、なんとなく強そうなカードを集めて押し勝つ。シナジーをすっ飛ばして困ったら『エリクサー』と『シュレッダー』を積んで、イベントマスに突撃しまくって要らないカードを捨てれば大体クリアできる。
「それじゃ似たり寄ったりのデッキしか組めないのでは?」と思う方もいるかもしれない。その通りだ。そしてそれで良い。自分みたいなデッキ構築型ローグ落伍者にとって、これで良いんだと許されるぬるまったい環境が必要なんだ。
実際問題、今作のバランスが良いかと言われれば微妙だと思う。ネガティブな言葉で圧殺もできるけど、この世界観で窮屈なゲームプレイをするのは違うよねって思うんですよね。ほかのゲームやれよって話。
自分みたいにデッキ構築のセオリーを知らない人に味が無くなるまで遊んで欲しいし、無味の余韻をダラダラと楽しんで欲しいなと心より願ってます。
終わり。
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