ピクミンの星に存在した人間はどこへ?裏設定から見る怖い世界観

ゲームを遊んでいて、本編では語られない裏の設定を考えたことはないだろうか。

「実はこうなのかもしれない」

「こう考えると納得がいく」

設定や背景を深掘りし、様々な仮説を立ててみるのも一興といえるだろう。今まで見ていた世界が全く違うものに見えたり、見えなかったものが見えたり、作品の幅が大きく広がる。

本記事では、爆発的な人気を魅せる『ピクミン』を題材として、シリーズの背景に触れながら裏設定について考察していこうと思う。

可愛らしくも穏やかな雰囲気が特徴のゲームだが、世界観や設定をじっくりと見ていくと全く違うテイストの作品に思えてくる。

あくまで、作品では直接語られていないものであり、憶測の域を出ないのが事実だ。故に、自身の持つピクミンの世界観を壊したくない人は、読むことをおすすめしない。

ピクミンってどんなゲーム?

本題に入る前に、『ピクミン』というゲームの概略を説明しておこう。

根本的に何をするゲームなのかと言うと、「ある惑星で目的を達成して脱出する」ゲームだ。ナンバリング最新作である『ピクミン4』を含む、全作品を通して共通するテーマだと言える。

宇宙船のパーツを回収し、食料を集め、遭難者を救助し…ピクミンの力を借りつつ、生死に関わる結構ヘビィなミッションを達成していくストーリーが特徴だ。

その中で、CMお馴染みの「運ぶ」「戦う」「増える」を繰り返し、多種多様な特性を持ったピクミンを切り替えながら様々な敵やギミックを打破していく。これがピクミンの大まかな流れとなる。

惑星[PNF-404]について

『PNF-404』は、オリマーをはじめとする主人公たちが不時着した惑星であり、本作の舞台でもある。本記事では、この惑星に焦点を当てていく。

『PNF-404』は作中において謎の惑星とされているが、プレイヤーの多くは探索を進めていくうちに”ある仮説”へと辿り着くはずだ。

仮説を導くうえで、必要な情報をいくつか列挙する。

仮説となる要素はいくつもあるが、この情報からでも察しがつくのではないだろうか?

そう、『PNF-404』は“地球”である可能性が高い。

人間はどこへ?作中に垣間見える深い闇

『PNF-404』を『地球』と仮定した場合、1つの疑問が浮かび上がる。

いるはずのものがいないのだ。いくら探索を進めようと、様々な場所へ行こうと一向に姿が見えない。

「一体人間はどこへ?」

『PNF-404』の特徴や作中の設定を基に、いくつかの可能性を考えていく。

アブダクション説

「PNF-404は、何者かの大規模なアブダクションを受けた」

これが、1つ目の仮説である。

アブダクション(abduction)は”拉致”を意味する英語だが、オカルト界隈の間では、宇宙人もしくはUFOが人間や動物を攫う(さらう)行為として使われる。

『PNF-404』には人間を始めとして、犬や猫、牛や馬などの哺乳類、もしくはそれに近い動物が一切存在しない。いくら探索を進めても、姿を現すのは異形の生き物『原生生物』のみ。

さらに、フィールドに見える建造物やオブジェクトの状態、回収したオタカラの状態がどれも真新しく、少し前に人間や動物だけがパッと消えてしまったかの様な状態である。

まるで「誰かに攫われてしまった」かのように。

それだけではない。『PNF-404』は高い放射能を有する環境でもある。

キャプテン・オリマーの宇宙船『ドルフィン号』には、“ガイガーカウンター”と呼ばれる放射能を測定する装置が取り付けられており、指針は常時強く振れている。

「それがどうした?」と感じるかもしれないが、放射能とアブダクションには深い関係性がある。宇宙人、もしくはUFOの目撃情報や家畜被害(キャトルミューティレーション)などが多く発生した1960年代には、家畜被害の発生した場所の周辺で、高い濃度の放射能が検知された記録も残っているからだ。

『PNF-404』で検知される高い放射能は、大規模なアブダクションによるものだと推察される。これらのことから、『PNF-404』に存在していた人類は何者か、いや異星人の手によって連れ去られてしまったのかもしれない。

惑星自体が異次元空間説

『PNF-404』は、惑星自体が異次元空間になっている可能性がある。

まず理由の一つとしてあげるのは、同エリアにおけるフィールドの変化である。

『初代ピクミン』と『ピクミン2』では、名前は違えど同じエリアがいくつか存在するが、地形やオブジェクトの配置が変わっている。オリマーの航海日誌や、ストーリー上の時間経過を考えると、地殻変動や違うエリアへの着陸などの可能性も低いと言えるだろう。

また、ピクミン2から地上と時間の流れが異なる“洞窟”と呼ばれる地下空間が登場する。ナンバリングによって異なるが、洞窟内にいる間は時間が止まったり進みが遅くなったりと、時間軸に歪みが生じている。

しかし、特殊なのは時間だけではない。地下エリアでは「空間」にも歪みが発生しており、ピクミン2では地下に入る度に地形が変化する。

洞窟内には“アメボウズ”と呼ばれる原生生物が存在しており、この生物を分析すると「生体反応が無い」「次元に生体が固定されていない」という結果となる。時間や空間はおろか、「生物」までもが歪んでいるのだろう。

『PNF-404』では至る所で時空の歪みが発生しており、人類が主人公たちとは違う次元に存在しているのかもしれない。

人類の滅亡、消失、そして?

先にも示した通り、『PNF-404』は大量の放射能を有している。

惑星の寿命による崩壊、大規模な科学実験、あるいは外部からの攻撃…何らかの影響により、人類が住めなくなったこの星に、一体何が起きたのだろうか。

収集する『オタカラ』の中には人型の頭蓋骨(古代生物の化石)も存在し、人類の滅亡を示唆している。やはり、放射能に耐え切れず滅びてしまったのか。

否、アブダクションの末に異なる惑星で文明を築いたのではないだろうか。

オリマー、ルーイをはじめとする『ホコタテ星人』。アルフ、ブリトニーなどの『コッパイ星人』。彼らは異星人でありながら、共通して人型である。もしかすると、他の惑星に移り住んだ人類の子孫なのかもしれない。

いずれにしても『PNF-404』に人類の姿はない。とすると、この惑星で「人類に代わる存在」は誰なのか。異形のビジュアルを成し、凶悪な原生生物が数多く生きるこの惑星を統べるのは、一体何者なのだろうか。

行き着いた答え、真の黒幕はすぐ傍に

様々な仮説を立て、思考した末に私が行き着いた答えはこうだ。

「“ピクミン”がこの惑星の支配者なのではないだろうか」

このように考えると、この惑星で起こる全てが結びつくように感じる。

まずは、凄まじいほどの繁殖力だ。

彼らの母体である『オニヨン』は、回収した植物、昆虫、その他の原生生物、あらゆるものを取り込み個体数を増やす。数が増えるほど指数関数的な増加し、その気になれば1日で100や200ずつ個体数を増やしていけるだろう。

もう1つの理由は「主人公たちを襲った謎の事故」だ。

シリーズに共通して『PNF-404』を訪れたキャラクターたちは、不測の事態によりこの惑星に不時着している。隕石への衝突や宇宙船の操縦不能など、いずれも「原因不明の事故」が彼らを襲っているのだ。

しかし、これは本当に事故なのだろうか。こんなにも立て続けに発生するものだろうか。これがもし「事故ではなかった」としたら。これがもし「人為的に起こされている」としたら。

オリマーは遭難中の航海日誌にこう記している。

もしかすると、ピクミンは私が来るのを

待っていたのではないだろうか。

いや、厳密には私ではなく、彼らとともに戦う

私のような異星人を。

この星では、ピクミンはとても弱い存在だが、

異星人をブレーンにして戦うことで、

彼らは、この星の生態系の頂点に

立とうとしているのかもしれない。

そう考えると、利用されているのは

私なのではないだろうか。

オリマーの航海日誌より引用 

ピクミンは個体数を増やしつつ敵対する生物を滅ぼし、『PNF-404』の支配を企む黒幕的存在なのかもしれない。そのため、オリマーたちのようなブレーン(統率役)が必要だと判断して事故を誘発させた。

末恐ろしい話ではあるが、こう考えると合点がいくのも事実だ。

可愛らしいビジュアルや、穏やかな雰囲気が特徴のゲームであるが、設定や背景を深堀していくと”生物学的な怖さ”にぶち当たる。

よくよく考えるとゾッとする怖さも、ピクミンの魅力ではないだろうか。

まとめ

本記事では、ピクミンの設定から見えてくる裏の部分に関して考えてみた。

作中で直接語られずとも、要所要所に垣間見える黒い部分を繋げてみると、闇が見えてはこないだろうか。視点を変えて、見えていない部分を見ながらゲームを遊んでみると、いつもとは違った面白さに出会えることだろう。

タスクマネジメントにやりがいを感じる人もいれば、可愛らしい世界観に思う存分浸る人もいる。なかには、命の大切さを体感する人もいるだろう。きっと、楽しむものが人それぞれ異なるはずだ。

自分自身の最高の楽しみ方を是非見つけてほしい。

今回はピクミンの舞台となる『PNF-404』にテーマを絞ったが、ピクミンはまだまだ“本質的な怖さ”を秘めていると考えている。

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