今日はエイプリルフールですね。嘘ついても良い日ということで、嘘をテーマにした作品を紹介しようと思います。嘘にも種類があって、人を陥れる嘘もあれば、痛みを和らげる優しい嘘もありますよね。
今回紹介する『嘘の手紙』は、優しかったり、卑しかったり、色々な嘘が詰まっていました。今作は、主人公『原田』の元に差出人不明の手紙が届くシーンから物語が始まります。手紙を開封してみると、それは10年前に友人『山中』が渡そうとした遺書でした。
僕は死にます
『嘘と手紙』山中の手紙より引用
君のせいじゃない
こんな身体はもういやだ
突如届く10年前の手紙。中身は3行で書かれた遺書。仕事の疲れから手紙を握りしめて眠りについてしまった原田は、夢の中で学生時代の朧げな記憶を彷徨いながら真相に迫ります。
今作は、学生時代の旧友と会話しつつ、遺書の一部分に含まれた嘘の正体を探っていく作品です。
記憶の世界を探索していくと、プレイヤーの行動によって手紙の内容が一部分だけ変化します。
遺書に書かれた内容が上書きされ、別の言葉が浮き出る素敵なギミックが印象的でした。
モノクロを基調とした寂れた世界観も作品とマッチしており、変化していく手紙を眺めながら想い馳せる感覚は今作ならではのエモさといえるでしょう。
嘘の種類によってエンディングが3種類に分岐し、全エンドを回収することで真エンドが解放されます。一部に血の演出が盛り込まれていますが、グロテスクなシーンは全くないのでご安心ください。
1つ目のエンディングを回収すると『ヒントモード』が解放。エンディングに必要な嘘が表示され、難しいことを考えずとも全エンディングが回収可能です。
筆者はルート分岐を把握するのが苦手なので、分岐条件が色付きで表示される仕様をバリバリ活用して真ENDまで到達できました。ホントにありがたい…
さらに、1番大事とも言えることなんですが、開発者である『弐藤(ニトー)』さんの公式HPにて開発後記が閲覧できます。この紹介記事の最下部にリンクを貼ってあるのでブクマ推奨です。
開発者の意図や作品に込められた想いだけでなく、各ルートの解説も記載されており、作った人と答え合わせできるのが嬉しい。
「コレってもしかして…」と感じる不確かな伏線をバッチリ手繰り寄せられるため、ノベルゲームに慣れていない方にも優しく寄り添ってくれます。
また短編作品ということもあり、全ルート回収まで1時間も掛かりません。ヒント機能もありますし、エイプリルフールだからやってみるか〜と手を取りやすい作品と言えるでしょう。
ということで、ここまでざっくりとした紹介をしました。ここから下では、自分なりに思うことをぬぼーと書き残しています。
嘘は欠損した部分を補うものでもある。自分の卑しさを虚空で埋め、一つの物語に仕立て上げる。言うならば接着剤。事実と異なる歪な分岐を繋げてしまう。
嘘は良くも悪くも作用する。事実と違うから絶対悪というものではない。でもやっぱり、偽りからは無機質な香りがする。人の残り香を奪い去っていく。嘘の物語も悪くないけど、嘘を信じ続ける世界はしんどい。
『嘘の手紙』は、プレイヤーに嘘の物語をちゃんと踏ませている。夢の中を何度も行ったり来たりするよう仕向け、彷徨うように本音を探らせる。嘘と泥臭くぶつかり合って、痛みを背負うことで本音に到達できるようになっている。
冗談に聞こえる友人の嘘。後ろめたさを真正面から浴びても尚、後悔を原動力に変えて前に進む主人公『原田』の背中が愛おしい。
手紙の嘘に気づいて欲しいと願う友人『山中』の青さも存分に詰まっており、心がキュッと締め付けられる作品でした。3種類のENDを回収して、遺書の真意に是非触れてみてください。
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