『Illusion Carnival』は、迷える魂が冥界の遊園地を旅するアドベンチャーRPGだ。しかけ絵本のような2.5Dで描かれたコンフェッティアは、色鮮やかで可愛らしい。しかしその裏には「異常」が潜んでいる。
「異常」は魂から染み出る恐怖と絶望を食らう存在だ。この世界では肉体が傷つかなくても精神が完全に蝕まれると、狂ったまま元に戻れなくなる。弾幕を回避し折り紙で敵を浄化しながら、謎めいたキャラクターたちと共に出口なき旅が始まる。
精神だけが死ぬ、冥界の遊園地

入園した瞬間、目に飛び込んでくる色鮮やかな世界にワクワクした。何も知らないまま足を踏み入れたコンフェッティアは、しかけ絵本でありおもちゃ箱のような世界観だった。画面の手前に装飾が流れてくると、平面のようでいて奥行きがあることに気づく。絵本の中を歩いているような感覚が心地よい。
しかしこの遊園地には異常が満ちている。ここは死者の魂が行き着く冥界であり、肉体は傷つかない。その代わり精神だけが死んでいく世界だ。異常たちは恐怖と絶望を食らおうと、主人公を狙い続ける。
冥界だから精神だけというのは納得感があり、同時に面白い設定だと感じた。遊園地のようなワクワク感と異形の存在が入り混じり、心地よさと不気味さが同居している。敵に触れると精神ゲージが削られ、ゼロになればゲームオーバー。可愛らしい見た目と不気味な演出のギャップが、このゲームの持ち味だった。
魅力的だが狂気を放つ園の案内人たち

コンフェッティアで出会うキャラクターたちは、一癖も二癖もある存在ばかりだ。中でもガイド役を名乗るデリリーニは、序盤から怪しさを隠そうともしない。瞬間移動で突然現れたかと思えば、こちらを覗き込むような動作を見せる。奇抜な立ち振る舞いからはゲームマスター的な存在感を感じ、怖さよりも面白さが勝った。
一番惹かれたのはイリューシアだ。全てを見通すような恐怖と見た目の美しさに心を掴まれた。彼女は「これ以上主人公を邪魔すると観客たちが怒るからさ」と口にするなど、第四の壁を破る発言をする。ゲームの外側にいるプレイヤーの存在を認識しているかのような素振りが不気味で、同時に興味深い。
一方、主人公と共に旅をするデメトリアには安心感があった。戦闘には参加しないものの、ホラーゲームで二人で行動できる心強さは大きい。しかし「あまり生きることに興味がない」という言葉には、どこか破滅的な影も見えた。他にも魅力的なキャラクターは登場するが、本筋には深く関わらないので今後の活躍が楽しみだ。
可愛さとサイコホラーの融合体験

可愛らしいビジュアルに惹かれてプレイを始めたが、想像以上にダークな世界が待っていた。とてつもなく怖いわけではない。しかし適度なホラー要素と遊園地に異形がいる世界観が、静かに恐怖を積み重ねていく。このバランスがたまらなく好みだ。
多数の手が追いかけてくる場面では、迫る恐怖と焦りを感じた。デリリーニとの初対面では「第1幕 主人公死亡」と宣言され、トゲやチェーンソーで串刺しにされる。しかし傷一つない。痛みも感じない。案内役としてのデリリーニの立ち振る舞いが、恐怖よりも興味深さを感じさせた。
BGMも雰囲気作りに一役買っている。探索中は遊園地に流れていそうな楽しげな曲が自然に耳に入ってくる。一方で異常から逃げている時には不協和音のような歪な音楽に切り替わり、可愛らしい世界観の中に潜む危険を引き立てていた。場面に合わせた音の変化が没入感を高めてくれる。
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絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

遊園地に潜む敵と弾幕回避

本作の戦闘は弾幕シューティングの要素を取り入れている。”異常”と呼ばれる敵の攻撃を回避しながら、「式」という折り紙で浄化していく。ステージ前半は簡単だが、終盤になるにつれて難易度も上昇。ゲーム全体を通して焦りとドキドキが常にあった。
Shiftキーでペーパーボートに変身してダッシュする操作は快適で、無敵時間を利用した回避は必須テクニックとなる。式を使って異常をリバースする瞬間は気持ちよく、不気味な敵が浄化されていく様子には爽快感があった。
数回ゲームオーバーになったが、その画面すら可愛らしい。「精神が楽園に包まれたまま崩壊しました」と表示され、どんな時でも世界観が守られている。この細部へのこだわりが非常に良かった。
主人公「ペーパー」の出口なき旅

序章と第1章をプレイし終えて、余韻が残った。キャラクターデザインが好みだったジップの出番が少なく、「もっと見たい!」と思わずにはいられなかった。物語の謎もキャラクターの背景も、まだまだ明かされていない。続きが気になるドラマの最終回を観た後のような気持ちで、続編が待ち遠しくてたまらない。
物語は第1章で綺麗に区切りがつくわけではない。むしろ謎が深まった状態で幕を閉じる。デリリーニは「コンフェッティを救う」という選択肢を最悪の結末だと警告し、他のキャラクターからは遊園地がおかしくなった原因だと怪しまれている。誰を信用すべきかわからない緊張感が残ったまま、続編が待ち遠しい終わり方だった。
これだけのクオリティでありながら、本作は無料でプレイできる。Steamレビューが全てではないが圧倒的な支持を得ており、その評価も納得の出来だった。可愛らしいビジュアルとダークなテーマのギャップを楽しみたい人に、ぜひ手に取ってほしい。遊園地のチケットは既にあなたのもとへ届いているかもしれない。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | Illusion Carnival |
| ジャンル | 探索型アドベンチャー |
| ストア価格 | 無料 |
| リリース日 | 2024年7月12日 |
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