「ふわふわとMVを映画監督と作ることになったのですが、制作過程とか記事になったりしますかね?」
この人、何を言っているんだろうと思った。
「面白そうなのでOKです」と二つ返事を返した。
『カルトに厳しいギャル』を筆頭に、ブーマーシューター作品を中心にリリースしているゲーム開発者「Bhaskara(ばーすから)」氏は、映画監督である佐々木勝己氏と共同制作したMVを公開しました。
主演の穂紫朋子氏は人気アーティスト秦 基博氏のMVにも出演しており、ノリで作ったとは思えない力の入りよう。「あなた、ゲーム開発者ですよね??」と思ったのは、きっと筆者だけではないでしょう。
MVの監督を担当する佐々木勝己氏も一目置く俳優さんとのことで、「パフォーマンスはもちろん、現場で非常に安心して頼りにできるカッコ良い俳優の方です」と教えてくださいました。
そもそも、
なんでMVを作ることになったのでしょうか。
話は遡ること今年の2月、ばーすから氏が新作『ギャルトムラ』をSteamネクストフェスに出したときのことです。ほら、あれですよ、ギャルが包丁とショットガンを持って因習村にカチこむヤツ(とても物騒)。
この作品には規定時間内に敵を殲滅する「アリーナモード」が搭載されており、そこで流れるBGMが予想よりも好評だったことから、MVを作ってみようと考えたのが発端だそう。バイタリティが凄すぎる。
ばーすから氏といえば、ボーカル入りのエンディング曲など、自作の楽曲を用意しているのも記憶に新しい人物。気分が乗って実写MVを作ることになったとしても、まぁあり得なくはないのかもしれません。
でもどうやって、制作を進めているのか。
まず、ばーすから氏が楽曲のイメージやアイディアを映画監督に共有し、そこからキャスティングや絵コンテを作って頂いて形を固めたとのこと。こういった話は滅多に聞くことがないので面白いですね。
実写MVの構想は「Y2K邦楽ロックのようなビジュアルで、楽曲はバイレファンキ(ブラジルの音楽ジャンル)風のボカロ曲を使います」とアイディアを提示したとのこと。
何をいってるのか分からなかったので調べました。
Y2Kは「Year2000」の略称で、1990年代末から2000年代初頭にかけての時代感を指しているようです。当時の邦楽ロックで思いつく人でいえば、「ASIAN KUNG-FU GENERATION」や「銀杏BOYZ」辺りでしょうか。
筆者は音楽の知識に疎いのですが、音楽に詳しい方ならピンと来るはずです。
ちなみに、ばーすから氏が映画監督に共有したY2K邦楽ロックはというと…
すいません、思っていたのと全然違いました……。
続いて、バイレファンキはブラジル発祥のダンスミュージック。ラップやHIPHOPの系譜であり、「baile」はポルトガル語で「ダンスミュージック」を指すようです。こちらも初めて知りました。
「ダンスミュージックだけど前のめりの明るいものではなくて、疲労する日常生活の中でヤケになって爆踊りするような映像作品」といったところでしょうか。双方の良さをうまく取り入れたような印象です。
ばーすから氏が自称する「アンダーグラウンドディベロッパー」らしく、仄暗く暴力的。抑圧されたものが溢れて爆発する感じがイメージ通りで、因習村にカチ込む本作とピッタリだと思いました。
とまぁ、トントン拍子で話は進んでいくのですが、個人的に”実写”MVにした理由も気になるところ。ばーすから氏、過去作の「カルトに厳しいギャル」でシキ式氏によるアニメーションMVも出していますし。
さて、閑話休題。
「なんで実写なんですか?」と率直に聞いてみたら、「普通のボカロMVを作るよりも変なことをしたかったからです」と返ってきて横転。人間って、そんな単純な理由でここまで動けるんだなと笑っちゃいました。
変な人だな~(失礼)と思いながらさらに話を伺うと、実写MVを構想する少し前に起きた出来事について教えてくださいました。
ばーすから氏が何気なくXを眺めていると、「ボカロはMVも用意しないと聴かれない」というポストが流れてきたとのこと。確かにと思いつつ、どうせやるなら作ること自体に楽しみが欲しいと思ったそうです。
ばーすから氏はちょうどそのとき、『my BEST life my PEST life』に楽曲を提供してくれた中村修人氏が映画関連の仕事をしていることを思い出し、「映画監督にMVって頼めるんですかー」と打診してみることに。
思いつきで聞いてみたところ、想像よりも費用感は問題なかったとのこと。「聞いてみた時点で面白そうだったので、やることにしました」と即決したそうです。この人、バイタリティが凄すぎる(2回目)。
そして今回、映画監督の佐々木勝己氏にもお話を聞くことができました。

(写真提供もありがとうございます!)
――個人ゲーム開発者から実写MVの依頼が来ること自体珍しいことだと思うのですが、声が掛かったときにどう思いましたでしょうか?
佐々木氏:正直な所、かなり驚きました。これまで全くご縁のなかったタイプの依頼でしたので、どういう経緯で知られたのか、依頼に至ったかなど色々と気になりました。
同時に本当に珍しい事だったので、実際に依頼いただけるか?何を作るか?など楽しみも大きかったです。
――穂紫朋子氏が持つスティックや公園のシーンで登場するぬいぐるみなど、魔法少女のような印象を受けたのですが、ここはゲームからインスピレーションを受けているのでしょうか?
佐々木氏:スティックやぬいぐるみは完全にbhaskara氏のゲームからの引用です。映像は実写ですが、ファンの方々にニヤッとして頂ける様なイースターエッグを仕込みたいと、依頼時から思っていました。
実際、世の中の多くのゲームはそういった小ネタを多々取り入れており、自分もそういったオマージュ文化が好きですので。


――映画での映像作りと比較して、ゲームのMVを作る際の難しさや面白さ、といった部分はどの辺りになるのでしょうか?
佐々木氏:自分はどうしても長い尺をかけてストーリーを書くのが得意な方なので、MVの様な短くインパクトのある工夫が実は苦手で…ここはいつも苦労しています。あとはセリフが使えないとか(笑)。
ただMV的な、音に映像をはめ込んでいく作業はとても好きで、撮影したカットを刻んでパズルの様に飾り付けていくのは本当に面白いですね。
――原作『ギャルトムラ』はポップながらもゴア表現を含んでおり、一風変わった印象を受けたのですが、佐々木様が本作に感じた印象を教えてください。
佐々木氏:控えめに言って最高ですよね。ギャルもゴアも因習村も異形も全部大好きです。またそういった過激な要素や、ホラーな要素をポップさで演出するのは大好物です。
自分も映画などでポップに幽霊や異形がぶん殴ったり、ぶん殴られたりする事が多いので『ギャルトムラ』はコンセプトからして好きです。

――ばーすから氏の構想を受け、実際のMV撮影でこだわった部分がございましたら教えてください。
佐々木氏:独特な世界観を壊さない事にこだわりました。裏設定が、「使い魔に先立たれ魔法少女の辞め方がわからないままOLになったスレた女性のダブルワークの話」なので、メインの芝居場になる部屋をスカスカでなく、ちゃんと汚く雑多にするなど背景はかなり力を入れたつもりです。
また一方で公園でのダンスなど、アンバランスなシュールさやギャップも大事にしました。元々の詞が非常に良いので、感情移入しながら構想を考えるのが楽しいMVでした。bhaskara氏も自分も作家性を非常に尊重してくださり、かなり自由にさせて頂きました。

――貴重なお話をありがとうございました!
こうすればインプレッションが伸びる、ああすればウィッシュリストが増える。そういったマーケティング論を毎日のように耳にするなかで、面白そうだから実写MVを撮る人もいるのって面白いですよね。
世の中捨てたもんじゃないと思いました。
こうありたいものですね。
もう一度、実写MVを覗いてみてください。もし気に入るようであれば、ぜひゲームも遊んでみていただけると幸いです。きっと、やんちゃでダーティーな世界が広がっていると思います。
余談(クリックで開く)
ばーすから氏を知ってる人なら、一度は聞いたことのある作品&人物がいくつかゲスト出演してるので探してみてね~
監督:佐々木勝己
@reclamation_day
主演:穂紫朋子
@ho_shi_0729
作詞作曲アレンジ:ばーすから
@Cynoroid
ミックス:中村修人
@NakamuraSyuto
〈ゲームの詳細情報〉

| ゲーム名 | ギャルトムラ |
| ジャンル | オールドスクールFPS |
| ストア価格 | 500円 |
| リリース日 | 2026年3月11日 |
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