押し入れから埃の被った黒いケースを引っ張り出し、なかからカリンバを取り出す。台形の木箱に金属の鍵盤が付いており、親指で鍵を弾くと伸びやかなオルゴールのような音が鳴る。
ぽ~ん、ぽ~ん。癒されるような、情けないような。高音のドレミが部屋に響く。おりん(お寺にあるキーンって鳴らすやつ)を彷彿とさせる。
ドレミファミレド、ミファソラソファミ。かえるのうたが聞こえてくる。小学校で習う歌といえど、いざ演奏してみると楽しくなる。たったこれだけでご機嫌になれるのだからお得な性格だとつくづく思う。
一時期、ストレス発散としてカリンバで遊んでいた。YouTubeの教則動画を見ながら千と千尋の神隠しに流れる曲を練習していた頃は、それなりに充実した人生を送っていた気がする。
ドハマりした結果、四六時中ぽろんぽろんして家族に怒られ、それ以来触っていなかった。どれだけ下手でも騒音になりにくい楽器だけど、音程を外しまくっていたので気味が悪かったらしい。ごめんなさい。
「カリンバをやってました!(マジでほんのちょっとだけど)」と話すと、大抵の人は「あっ、オルゴールみたいな奴だよね~」と反応してくれる。そして、「そう!オルゴールみたいな音が鳴る奴!」と返す。
構成しているパーツはオルゴールとほぼ同じで、「振動版」と呼ばれる鍵盤が内包されて自動で弾かれるのがオルゴール、鍵盤が露出して手で弾ける状態になったものがカリンバである。
原理は、ほぼ同じ。
でも、違いますよね。
昨日、Twitterで『Vocaless』というゲームを紹介した。流れてくるノーツに合わせてジャンプやダッシュを繰り出せるリズム2Dアクション。操作性も良好であまり見かけないタイプの作品だった。
デモ版とはいえ反響も良く、リプライやら引用リポストで沸いていた。リポスト先を追いかけてチェックする根気はないので、引用リポストのみ軽く見てみると、予想に反したテキストが載っていた。
「MAD RAT DEADと同じやん」
どうやら、似た作品が既に発売されているらしい。調べてみると、確かに似ている。特徴的なノーツに合わせてキャラが回避行動を取る挙動もあり、ビートに合わせてダッシュしているからだ。
その反面、「同じに見えるんだ」とも思った。
MAD RAT DEADを遊んでないから分からないけど、動画を見る限りは違う感じもする。動きの軽さも違うし、何処に重点を置いてるかも違う。少なからず自分にはそう見える。
同じだと思ったら、同じものにしか見えなくなる。
少し違うと思ったら、違うものとして見ようとする。
たったこれだけのことなんだけど、見える世界は結構変わると思う。同じだと認識したらすべてが止まってしまう。些細な違和感を放置しないで、ちょっとづつ感覚を膨らませていくと、人生がちょっぴり豊かになる気がするから大切にしている。
これは知識や経験の話じゃなくて、粘り強さだったり心意気の話であって、やろうと思えばいますぐにでも実践できるからおすすめ。
同じようなゲームを大量に遊んで、似たようなマーケティング本を大量に読んで、毎日同じようなこと書いて来たからこそ思う。一見同じようなものを大量に摂取すると、これはこれで面白いんですよね。
目新しさに面白さを見いだすのも良いけど、「同じだと思っていたものから差別点を見つけるのも楽しいよ~」ってことを書きたくてもちゃもちゃしました。
全部ちょっとだけ違う、そう思うだけで世界の解像度って上がるよな~と思った次第です。