凍える密室での救済なき物語『氷点下30度の絶望』

「冷凍庫に閉じ込められる」という、
あまりにもシンプルで最悪な状況。

そこに放り込まれた二人が極限状態の中で迫られるのは、心理と選択の連続。ドット絵の可愛らしい雰囲気とは裏腹に、タイトルどおり絶望の淵に立たされた人間たちの結末が描かれます。

本作『氷点下30度の絶望』は、選択式のアドベンチャーゲームです。

重い扉に閉ざされた密室で、次々と降りかかる問題にどう向き合うかを選んでいきます。刻一刻と冷えていく部屋の中で、果たしてどこまで生き延びられるのでしょうか。

そして、さまざまなエンディングを見ていく中で、二人の過去も少しずつ明らかになっていきます。彼らはなぜこの部屋に入り、ここへ導かれたのか。その真相に迫っていく過程も、本作の大きな見どころです。

冷凍庫に閉じ込められた二人を描いたビジュアルノベル

▲主人公と一緒に閉じ込められてしまう十二村結

本作『氷点下30度の絶望』は、この部屋に閉じ込められてしまう黒髪の男・口無荼毘(クチナシダビ)の視点で進んでいきます。主人公としてはなんとも不穏な名前…

ともに案内された十二村結(トニムラユイ)と入った部屋には、謎の数字が表示されたモニターやトランシーバー、そして中央に吊るされた大きな謎の肉。これまた不穏なアイテムの数々が置かれています。これらを探索していくうちに、登場人物たちの背景や、この部屋に隠された真相へと迫っていく構成です。

何より印象的なのは、口無と十二村の距離感。

極限状態に置かれているにもかかわらず、一見するとコミカルなやり取りが続きますが、生命の危機に瀕した者同士の会話だと思うと、こちらまで思わず息を詰めてしまいます。

複数エンドで様々な「絶望」が味わえる

ゲームを起動すると、冒頭から唐突に現れるエンド『氷点下30度の絶望』。

どうやら二人は助からなかったらしい――。そう想起させる結末から、支配人と呼ばれる人物に部屋へ入るよう促される本編冒頭へと繋がります。

会話の内容と探索から分岐する複数のエンディングが用意されており、最初に提示される『氷点下30度の絶望』は、数ある結末のひとつにすぎないことが徐々に明らかになっていきます。

全ルートを回収するとしても約1時間ほどで達成できる本作。このボリューム感だからこそ、「探索中にあのアイテムを選んでいたらどう分岐したのか」「別の選択の先には何が待っているのか」と、自然と次の結末を求めてしまう構造になっています。

鮮やかでキュートなビジュアルに潜む緊迫感

▲なんとも懐かしい見覚えのあるゲーム機を持っています

前述したようなハードな内容にも関わらず、アートワークがとても可愛らしいのも本作の魅力の一つ。

メインカラーとして赤と青を使用したイラストレーションは、この物々しい雰囲気をカジュアルなものにしてくれています。また各キャラクターの仕草や表情、服装等のデザインにもこだわりを感じます。

しかし、その可愛らしさは、決して緊張感を削ぐためのものではありません。

ポップなビジュアルに油断していると、不意に差し込まれるヒリついた演出や突き放すような選択肢が強烈な印象を与えてきます。安心感と不安感を行き来させるこの視覚的ギャップこそが、本作ならではの読後感を生み出していると言えるでしょう。

その反面、ストアページに記載されている流血や軽いホラーを含んだ作品が苦手な方でも、忌避感なく遊べるようになっています。

そして、制作者であるみつどもえ工房様のXでは今作の設定資料集の制作が進んでいる様子!本編で語られなかった設定やキャラクターの背景が明かされることに期待が高まります。


HARF-WAY コマーシャル

絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。


選択の先で剥がれていく二人の内面

▲筆者も同じ派閥なのでちょっと嬉しい

探索が進むにつれて、キャラクターたちのパーソナルな部分も徐々に垣間見えてきます。

軽口の裏に隠された今までの人生に対する後悔、ふとした沈黙に滲む過去の選択。最初は記号的に見えていた口無と十二村が、ただの「閉じ込められた二人」ではなく、確かな人生を背負った存在として立ち上がってくるのです。

特定のアイテムを調べたときだけ聞ける独白や、選択肢次第で微妙に変化する反応は、ルートを変えるたびに新しい一面を見せてくれます。

また、ある条件をクリアすると発生するイベントを回収することでも、彼らの内面を覗けます。


こういった積み重ねが、エンディングの重みを何倍にも膨らませ、「この結末は、たまたま辿り着いたものではない」と実感させてくれる構造になっています。

静かな夜に灯る、やさしい時間をあなたに

『氷点下30度の絶望』は、サクッと遊べる手軽さとは裏腹に、人間の脆さをじわじわと突きつけてくる作品です。

可愛らしいビジュアルに油断した先で待ち受けるのは、フィジカル面でもメンタル面でも「絶望」と言うに相応しい展開ばかり。

それでもなお、すべてのエンディングを見届けたとき、冷凍庫という小さな密室の中に確かに存在していた二人の人生を、きっと忘れられなくなるはずです。

〈詳細情報〉

ゲーム名氷点下30度の絶望
ジャンルビジュアルノベル
ストア価格無料
リリース日2025年11月3日

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煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
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まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。

寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』


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