懐かしさと寂しさ、何かを思い出すような短編作品『あの子の夏休み』

年々気温が上昇し、さまざまな暑さ対策グッズが売られている世の中。ようやく涼しい季節になって一安心している方も多いのではないだろうか。

自分が子どもの頃を思い出すと、30℃を超えただけでも大騒ぎだった気がする。

Unityroomで無料公開されている『あの子の夏休み』は、少年が10円玉を拾い集める短編ゲームだ。10~20分ほどで遊べる手軽さがちょうど良い。

どこか懐かしくノスタルジックな雰囲気のある本作だが、ゲームの説明欄には「取ってつけたような感動と、薄めの社会的メッセージが君を襲う!」とある。

そんなことを書かれたらますます気になって仕方ない!という気持ちでプレイし、まんまと「いい作品だ…」となってしまったので、ぜひ紹介させてほしい。

セリフなし、あなたの解釈で進む夏休み

ゲームを開始するとタイトル画面からカメラが下がっていき、部屋の中にいる少年が母親らしき人物を見て外へと遊びに行く。

一瞬「えっ、死…?」と思ってしまうシーンだったが、本作にはセリフがないためこういった描写はプレイヤーの捉え方次第だ。

なんとなく私はこの派手な靴や散らかった部屋を見て、「夜のお仕事をしているお母さんが帰ってきて寝ているところで、少年は1人で外へ遊びに行くしかないのかな」と捉えた。よく見るとお酒っぽい瓶もある。

最近はそういった描写のある漫画やアニメも多く、「なんとなく」で家庭事情を察する人も増えたのではないだろうか。

アパートの外に出ると味のあるイラストの少年を操作できるようになり、1場面に1つずつ落ちている10円玉を探しに行く。このゆるっとしたイラストが動いているのが可愛らしい。

10円玉は画像左側に見えるようにキラキラしているため分かりやすいが、なかには少し工夫をしないと拾えないものなどもあり、プレイに飽きがこない。

知らないのに知っているような景色

本作には「知らないのになんか知ってる気がする」と感じる場面がいくつもあった。住宅街や草むら、商店街…少年を操作する中で、何故か感じる懐かしさ。

自分が子どもの頃の夏休みをどう過ごしていたかなんて忘れてしまったけど、大人としてこの少年を見ているとどこか物悲しさを感じる。お母さんは構ってくれないのかなとか、一緒に遊ぶ子は居ないのかなとか。

セリフのない作品は、こちらの想像力をかきたててくれるのでいくらでも物語の妄想ができる。

自分が少年・少女だった頃を思い出したり、ひとりで夏休みを過ごす少年の気持ちを考えたりすることで、短編のゲームを深く味わえる気がした。

作中では学校のチャイムに聞こえるようなBGMが使用されていて、ここでも懐かしさを感じさせてくれる。どこまでも「大人」に刺さる作品だな、という印象を抱いた。

手を繋いで歩く親子、ぼくはひとりぼっち

私が最も切なさを感じた場面はここだ。

商店街を、知らない親子が手を繋いで楽しそうに歩いていくのを横目に見る少年。1人で10円玉を探してうろうろしているところにこの描写は、切ない気持ちになってしまった。

各場面に1枚ずつ置いてある10円玉は割とすんなり見つかる。高いところにあるのを木の枝を使って落としたり、蜂から逃げて拾ったりと入手方法もさまざま。

やった!という気持ちと同時に、やはり「なんかちょっとさみしくない?」という気持ちが沸いてくる。これは自分が大人になってしまったからなのだろうか…子どもだったら素直に、「10円見つけた!やったー!」と思えたのだろうか……。

集めた10円玉を少年が何に使うかというと、駄菓子を買うわけでも自販機で飲み物を買うわけでもない。なんとお賽銭としてぽいっと投げ入れるのだ。


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絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。


困ったときは神頼み

横断歩道を渡って辿り着いた神社で、お賽銭を入れて鈴を鳴らす少年。

「車が通らない隙をみて横断歩道を渡る」といった一種のミニゲーム的要素があるのも良い。タイミングを見て道路を渡り、神社へ向かうことができた。

今まで拾った10円玉をお賽銭として投げ入れ、ガラガラと鈴を鳴らす。えっ、せっかく集めたのに!?と思ったが、道中で出会う人物のことを考えると、これも少年の優しさなのかもしれない、と感じた。

この躍動感のあふれるイラストはやはり本作の味であり、魅力の1つだとも思う。左右に激しく動く少年に、少しくすりときた。

余談だがこの鈴は「本坪鈴(ほんつぼすず)」というらしい。また1つ賢くなった。明日には忘れていそう。

分岐のない1つのエンディングで得られるもの

本作は分岐などもなく、10円玉を全て集めればエンディングとなる。しっとりと、どこか寂しさを感じさせる中で、プレイする人たちは何を思うのかとても気になる作品だった。

繰り返しにはなるが、セリフや情景の説明がない作品のため、こちらの脳内で補完する必要がある。例えば、個人の捉え方によって、この少年の夏休みが「楽しそう」なのか「寂しそう」なのかも変わってくる。

この少年のような夏休みを過ごしたことのない自分でもノスタルジーを感じたということは、もっと刺さる方がいるはずだ。

無料で手軽に遊べる『あの子の夏休み』を通して、懐かしさをどこかに感じてもらえたら嬉しい。

〈詳細情報〉

ゲーム名あの子の夏休み
ジャンル探索型アドベンチャー
ストア価格無料
リリース日2023/06/30

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『Keep Only One Loneliness』


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