人は二度死ぬ。一度目は命が尽きたとき。二度目は存在を忘れられたとき。
『DONARE』は奇病と診断された天涯孤独の女性ツバサが、余命1ヶ月でどう死ぬかを選ぶ終活ビジュアルノベル。彼女を取り巻く恋愛模様が描かれているが、公式HPには「主人公は助かりません」の一言が。
不治の病!余命1ヶ月!なんかわからんけど奇跡的に薬が開発されて病気は治ったし好きな人とも結ばれてハッピー☆とはならない。4種のエンディング全てで、主人公は助からないのだから。
なんだか難しい名前の病気になった主人公

主人公ツバサは「頭蓋咽頭発芽腫瘍(ずがいいんとうはつがしゅよう)」、通称『開花病』という不治の病に冒されている。簡単に言うと、頭の中に種のような腫瘍が現れ、脳を突き破り花を咲かせ死に至る病だ。
開花病については詳しくわかっておらず、「とりあえず明後日手術します、失敗したら死にます、ちなみに今まで手術は成功したことないです」となんとも乱雑な主治医の説明。
どうせ死ぬなら何かやり遂げたい。家族も犯罪に巻き込まれて死んでるし恋人もいない。孤独なツバサがどう死ぬのか、その選択はつまり「どう殺すか」なわけで、なんとも複雑な気持ちになる。
しかしそんな孤独なツバサのもとに、足繁く通う幼馴染「哀川」の存在があった。
幼馴染はチャラそうなイケメン

幼馴染の哀川はしょっちゅうお見舞いに来てくれのだが、「どうせ治らないんだから無理して来なくていい」と突っぱねるツバサ。
可愛らしい見た目に反して、主治医には「ゴミ野郎」「クソ」などとキツイ言葉遣い。哀川にも同様に強い言葉を吐くものの、これはきっと昔から気心しれた間柄だからこそだろう。


その関係性に甘えてしまうツバサの心理描写も共感出来る点が多々あった。
見舞いに来て善人ぶりたいだけ、普通の生活をしているのが妬ましい…そんな風に、善意を素直に受け取れない部分はなんとなくわかる。
でもこれは幼馴染が見舞いにくるからであって、例えば上司や先輩が見舞いに来たらこうは思わないんじゃないだろうか。だが病気で仕事も出来ないツバサには、哀川と、フジくんしかいないのだ。
あの頃には帰れないし、未来もない

ツバサが過ごす病室には、哀川が持ってきてくれた小説や病気に関する僅かな資料。そして大好きなフジくんとの写真など、少ない荷物しかない。
楽しかったあの頃に思いを馳せるツバサは、「未来がないから過去を懐かしむことしかできない」と写真を眺め、好きだった彼を思い出す。病気が発症する前の、活発そうなツバサと気怠げなフジくん。この写真を宝物として病室に置いている彼女が可愛らしい。
「あの頃に戻りたい」という気持ちは多くの人が抱くかもしれないが、彼女の場合はもっと重いものだと思う。でも戻れないし未来もない。そんな彼女がどう死ぬのか…そう、ここでエンディング分岐だ。
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絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

大好きだから、私のことは好きにならないで

今作はメリーバッドエンドに属されると思う。こちら側から見たらどう考えても不幸な結末なんだけど、登場人物たちにとっては幸せかもね、というアレ。
私はメリバが大好きだ。大体暗い話を好むけど、その中でもメリバは特別な味がする。冒頭にもあるが、この作品の主人公は助からない。どのエンドに到達しても死んでしまう。
好きだった人に告白して、目の前で自殺して、トラウマとしてずっとその人の記憶に残ろうっと!!
そういう選択もある。そういう幸せもあるんです!


ちなみにツバサは、自分が病気であることはずっと隠していたらしい。最期に好きな人に会いに行って想いを伝えて、目の前で死ぬ。美しい生き様と死に様が最高に刺さった。
全員問題アリくらいがちょうどいい

先ほど自分にナイフを突き立てるツバサの画像をお見せした後だが、彼女以外もどこかおかしい。だから今作に惹かれてしまったのかもしれない。
ツバサは親を殺されており、そのほかにも初恋を拗らせている者や、虐待を受けている者も。そして彼女が発症した開花病の真相も隠蔽されている。境遇のおかしい登場人物まみれなところも今作の魅力だ。
4つのエンディングの他にもEXTRAを見ることでわかるキャラクターの深堀りも嬉しい。プロフィールや過去の話を読んで深まった知識は、「どうしたらいいんだこの気持ち!」に変換された。
わかりやすい分岐なので迷うことはないと思うが、公式が攻略を出してくださっているのも有難い。
〈公式note〉
https://note.com/shino8504/n/n5a783e476e06
また製作者「篠山」氏のXアカウントではイラストもたくさん更新されているので、今作プレイ後の余韻をそちらで味わうのも良いかもしれない。
こういう人が死んだり救われなかったり、激重感情を見せてくれたりする作品が私は大好きなんだと再認識した。自分だけではないと思いたいので、フリーゲームから放出される重い感情を受け取ってほしい。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | DONARE |
| ジャンル | ビジュアルノベル |
| ストア価格 | 無料 |
| リリース日 | 2025年8月9日 |
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煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
無料で、どなたでも。スマホで、PCで、どこでも。
まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。
寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』

