無人島に漂着した主人公。そして、目の前に突然現れたファストフード店。『マニーズ(Manny’s)』は、奇妙な設定のサバイバルホラーアドベンチャーだ。
昨日まで何もなかったはずの浜辺に現れた赤い看板、そこで待ち受ける人の命を対価にする取引に、プレイヤーは困惑と恐怖を覚えることになる。
恋人殺しの罪を背負った主人公と、労働環境に悩む店員。本作は極限状況で交わる二人の会話を通じて、恐怖と人間ドラマを織り交ぜた物語が展開されていく。
無人島に現れた店で求められる恐ろしい対価

物語の主人公ブライアンは、船の事故で無人島に漂着する。しかし彼には誰にも言えない秘密があった。漂着前に彼は恋人を殺してしまっていたのだ。その罪の意識から逃げながら、ココナッツと魚で何とか生き延びていた彼の前に、ある日突然赤い看板のファストフード店「マニーズ」が現れた。
初めて訪れた時は、普通のファストフード店のように見えた。しかし2回目に訪れた時、衝撃的な真実を知ることになる。この店でハンバーガーを手に入れるために必要なのは、お金ではなかった。人の命が対価となっており、マニーズは人殺しをした客にハンバーガーを提供していたのだ。
恋人殺しの罪を背負うブライアンにとって、この事実は皮肉な運命だった。無人島という逃げ場のない場所で、生きるために最悪の選択を迫られる。過去の罪と現在の生存本能の狭間で、彼の精神は揺れ動く。
狂気の世界で有給を心配する店員

人の命と引き換えにハンバーガーを提供する狂気じみた設定のなか、私が最も印象的だったのは店員タイラーの何気ない一言だった。
「有給の申請をしたんです。ああ、通りますように」
誰かを殺すことがお金の代わりになる恐ろしい店で働きながら、有給取得を不安に思っているのだ。この温度差があまりにもシュールで、恐怖の中にも関わらず笑いがこみ上げてきた。
「休みたいけど休めない」という、誰もが共感できる悩み。それが、こんな異常な環境で働く人物から発せられることで、プレイヤーは常に現実と非現実の狭間で揺れ動く。普通の労働者としての悩みを抱えるタイラーに、いつの間にか親近感すら覚えてしまった。
生き残るために何でもする主人公の人間臭さ

ブライアンは決してかっこいい主人公とは言えない。彼はただの漂流者で、生き延びるためなら何でもする普通の人間だ。最初は魚を釣って飢えをしのぐ。しかし、それだけでは生き延びられない。2日目にはマニーズで注文をすることもできなくなる。
そんな中、別の漂流者ペトロフスキーと運命的な出会いを果たす。二人は夕食を賭けて殺し合い、生きるか死ぬかの状況でブライアンは躊躇なく行動した。
さらに物語が進むと、タイラーへの怒りから彼を追いかけることになる。その先は異界へと続いていた。恐怖よりも怒りと生への執着が勝る、その人間臭さに強く惹かれた。魚釣りから始まり、殺人へとエスカレートする容赦ない描写が、サバイバルホラーとしての緊張感を最後まで維持させていた。
HARF-WAY コマーシャル
絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

ローポリゴンが生み出す独特の恐怖と魅力

本作の世界全てがローポリゴンで構成されている。キャラクターも店舗も、カクカクのポリゴンで形作られていた。
粗い造形ながら、キャラクターの感情表現は驚くほど豊かだった。ブライアンが困惑する場面、怒りに震える瞬間。ギザギザのポリゴンで作られた顔なのに、その時々の心情が手に取るように分かる。この表現力の高さに感心させられた。
カクカクの質感で描かれたハンバーガーショップは、懐かしさと不気味さを同時に感じさせる。赤色の看板や店内、奥に見える厨房。すべてが粗いポリゴンで構成されているのに、妙にリアルな空気感があった。
無人島の風景も印象的だ。青い海や白い砂浜。凸凹した描写で表現されているが、それが逆に夢の中のような非現実感を演出していた。この美しくも不気味な島で起こる恐怖が、より一層際立って感じられた。
一本の映画のような読後感を

エンディングを迎えた瞬間、一本の映画を観終えたような、充実感と虚脱感が同時に押し寄せてきた。
本作の演出で特筆すべきは、映画のような画角の使い方だ。ブライアンとペトロフスキーが夕飯を賭けて殺し合う場面。武器として提供された包丁をどちらが手にするか、回転する包丁の視点で展開されるシーンは、まさに映画的演出だった。
また、フラッシュバックの使い方も巧みだった。ブライアンが漂着前に恋人を殺してしまったシーンが断片的に挿入される。この唐突さが主人公の罪悪感と狂気を効果的に表現していた。
ストーリーの密度も素晴らしい。2~3時間程度のプレイ時間に、これだけの出来事と感情の起伏を詰め込んでいることに驚いた。無駄なシーンが一切なく、すべてが結末に向かって収束していく構成は見事としか言いようがない。
『マニーズ』はローポリゴンという制約を逆手に取り、プレイヤーの想像力を最大限に活用する。そして何より、極限状況での人間の本質に迫る物語を、エンターテインメントとして昇華させた。この体験は、きっと長く記憶に残るだろう。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | マニーズ(Manny’s) |
| ジャンル | サバイバルアドベンチャー |
| ストア価格 | 920円 |
| リリース日 | 2023年10月13日 |
HARF-WAY コマーシャル
煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
無料で、どなたでも。スマホで、PCで、どこでも。
まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。
寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』

