帰りが遅くなった時、ふらふらと駅周りを散策してしまう日がある。
さっさと帰れば良いのに、電車に乗るのも億劫になって街灯の下をあてもなく歩く。
こんな時間でも意外と人がいるんだな、とか、遅い時間でも働いている人がいるんだな、なんてことをぼんやりと感じ取る。夜の街はどこか朧気で、昼間に見えない姿をしている。
『白夜夢』はそんな深夜の街並みを少女が散策する物語だ。
ローグライトカードゲームの形式で描かれる本作は、夜の静けさと雑踏のざわめきを繊細に映し出す。
深夜の世界をカードで描く

本作はローグライトカードゲームと銘打たれている通り、主に下記のルールで進行していく。
・画面に表示されたカードを一つ選択する
・意志力(HP)が0にならないように白猫(ゴール)に辿り着けばクリア
カードを取得しつつ、ダメージを管理しながら夜の街を進んでいく。回復やスキルのカードも用意されているが、敵を倒す概念は無い。意志力を失わずに、物語冒頭で逃げ出した白猫に追い付くことが目的だ。
また、カードはいずれも「酔っぱらったサラリーマン」や「缶チューハイ」、「エナジードリンク」など、深夜の繁華街で見掛けそうなものばかり。
カードゲームの要素が世界観にマッチするよう組み込まれており「それは街中にありそう」と思わせるカードが出現するところが面白い。
お酒が彼女を支える、人が食べ物に見える夜

主人公は少し変わったアルバイトをしている。仕事の内容は、食べ物の画像を選び、AIがより食べ物を判別できるようにするための仕分け作業だそうだ。
しかし、食べ物の画像を見すぎた少女は、代償として周りの生物が食べ物に見えるようになってしまった。
例えば、サラリーマンはハンバーガー、男子高校生はラーメン、女子高校生はケーキに見えてしまう。気が滅入る症状だが、一つだけ対処法があるらしい。
それは、お酒を飲むこと。
お酒を飲むと意識が次第にぼんやりとしてきて、周りの人たちの姿もゆっくりと見えてくるそうだ。なので、ゲームプレイ時は少女がちゃんと酔っぱらっているかを管理する必要がある。
どれだけ酔っているかはパラメータ「酩酊値」で確認できるのだが、酩酊値がマイナスになると、大きいダメージを受けやすくなる。普通は酔っぱらってるほど不利になりそうだが、本作では逆に酔っぱらっているほど有利になるのだ。
お酒を呑んで現実逃避しているのだろうか。
つい共感してしまう。
酔いの中、夢と現実の境界線を彷徨う彼女は、深夜の世界を歩いていく。
P.M.9:30、街の雑踏で

繁華街の夜の姿が好きだ。コンビニや居酒屋、いかがわしいお店。どれもきらきらした明かりが点いていて、人がいることを感じさせる。
仕事モードがオフになって少しだけ羽目を外したサラリーマンが歩いていたり、ここからが本番だと言わんばかりに強気に客引きするお兄さんたちがいたり。
たまに学生が歩いていると「こんな時間に大丈夫…!?」と心配して、「23時前なら補導されないんだっけ」と思い出す。
深夜に感じる人の気配は昼間のそれとは違っていて、仕事中に見せない緩んだ空気とか、少しだけ羽目を外した姿とか、人間らしい部分が見える。
『白夜夢』の世界も同様で、酔っぱらったサラリーマンや客引きのお兄さん、制服姿の学生たちが街を行き交う。時には警官がパトロールしていたり、ギャルがたむろしていたりする。
主人公はそんな雑踏の流れに身を任せて進んでいく。お酒を飲みながら。
昔、仕事の帰りに先輩から缶ビールを奢ってもらって、ちびちびと飲みながら駅まで歩いたことがある。ふとそんなことを思い出した。
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絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

道中で出会う登場人物たち

街を歩いていると、他キャラクターに遭遇するイベントが発生する。そこで出会う登場人物は、アイドルや探偵、主人公のクラスメイトなど様々だ。
ここで一つ補足する。
『白夜夢』は個人ゲーム開発者「Renka」氏の作品で、遭遇する人物はいずれも氏の過去作品のキャラクターだ。一見クロスオーバーやスターシステムに見えるが、実は過去作を補完する内容も描かれている。
なので、本作を遊ぶ際は過去作『サンセット・ルート』や『フラッシュバック』に触れてからプレイすると、より物語の理解度が深まるだろう。
『白夜夢』が描く深夜の世界

白猫を追った先で、少女は不思議な体験をする。
マルチエンド方式で進む物語は、道中で出会ったキャラクターによって異なるエンディングへと辿り着く。そのどれもが、静かな夜に相応しい朧げな終わり方を迎える。
深夜の街を歩いたあとに感じる、ほど良い疲労感と少しだけ満たされた気持ち。
それは、夢だったのか現実だったのか、酔いの中ではっきりしないまま記憶に残る。
『白夜夢』は、そんな余韻を淡く描いた一作だ。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | 白夜夢 |
| ジャンル | カードローグライト |
| ストア価格 | 120円 |
| リリース日 | 2023年6月12日 |
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