かき揚げを脱ぎ捨て油揚げの美味しさに気づく

丸亀製麺といえばかき揚げである。

冷やしぶっかけにレジ前のかき揚げをオンザうどんし、会計真横にある天かすとネギをこれでもかとねじ込んで完成する。メニューに迷うことはほぼない。

といった食べ方が出来なくなってから数年が経つ。最強コスパで腹いっぱい心いっぱいになっていた20代。30歳から一気に襲い来る老いによって我が丸亀城は陥落した。もうあんなデケェの食えねぇよ。

自分に取ってかき揚げうどんは青春だった。

お金がないときにちょっと贅沢したいときも、昇給してホクホクしていたときも、彼女との旅行帰りで店探しがめんどいときも、何かにつけてそそくさと入店して決まったメニューを頼む。

自分にとって丸亀のかき揚げうどんは家系ラーメン的な魔力があって、ちょっと体調が悪いときでもお構いなしに頼んで気持ち悪くなっていた。帰り道の車内は心なしか油臭かった気がする。

30歳を越えてから如実に体力が激減したり、身体の節々が謎に痛かったり、ちゃんと寝てるはずなのに頭が重かったり、それなりのデバフが掛かるようになってきた。皆さんご一緒に、さん、はい、希死念慮。

こんなのは良くある話で、「まぁ人生ってそんなもんだよね」と割り切れる。でもかき揚げが食えなくなるのは別だ。人生の彩りがまるで違う。世界から緑色が消えるくらいの影響を受けている。

今日、散歩帰りに丸亀に寄って夕飯でも食べようと入店して並んでいて衝撃を受けた。まっっったく揚げ物に意識が向かないのだ。俺の身体ってそんなジジイだったのかと普通にショックだった。

逆に何を喰うんだよって感じ。かしわ天、ちくわ天、れんこん天。お前らまで俺を裏切るのか。腹減ったから丸亀に行ってるのに素うどんってお前…食欲が枯れすぎてるだろ!

今日は食べるぞ~からのノー天ぷら。抗いたかった。欲望に忠実でありたかった。理性でガッチガチに塗装された脳みそをじゃぶじゃぶに溺れさせたかった。

だから、きつねうどんを頼んだ(なんで???)

何が起きたのか自分でもさっぱり分からない。なんか気づいたらお揚げが乗っていた。しかも、地味に高いんだけど。お前、かき揚げと張れるほどの実力者だったのか…とりあえず小ネギをたくさん乗せた。

着席して汁を飲む。天かすも乗せていないので油っ気がない。これはこれで旨いんだよな~とひとしきり満足して麺を啜る。口の中が丸亀製麺。冷凍食品の讃岐うどんの上位互換。素晴らしいコシである。

油揚げを齧る。おっ、お前、そんなに食いでがあったのか!!どん兵衛のアレを想像していたので完全にマウントを取られた。そんなに嚙めて良いんですか!そんなに汁を吐き出してくれるんですか!

かき揚げの呪縛から解き放ってくれて俺は嬉しいよ。あいつも刺激的で良い奴だったけどさ、やっぱりずっと一緒にいれる奴っていうのは包容力が違うよな、と心の中でどんぶりに話しかける。

デカいからいつまでも食べていられるし、天ぷらと違って胃もたれもしない。そう、お腹いっぱいなのに気持ち悪さがないのだ。革命が起きてます。もうあれよ、これが大富豪だったら大変なことだよ。

とまぁひとしきり満足して帰路についたとさ。

おしまい。

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