雨の日に出会った全身真っ黒な少年と、パン屋さんのほっこり物語『しよくぱんの上手な焼き方』

しよくぱんの上手な焼き方』は、パン屋で働く「はかせ」と、全身真っ黒の謎のお客さん「コム」との出会いを描いたポイント&クリックADVだ。「食パン」ではなく「しよくぱん」なところが気になる。

本作は20~30分ほどで終わる短編ゲームで、エンディングは全部で2つ。作品ページに分岐のヒントが書いてあるのもありがたい。

絵本のようなタッチが目を引き、パン好きの自分はつい気になってしまった。いざプレイしてみると、登場人物のあたたかさが染み渡る。雨が降る夜にパン屋へ入ってきたコムと、彼を温かく迎え入れるはかせの3日間。じんわり、しんみりと味える作品を紹介したい。

お客さんから「食パン」の依頼

ある日主人公のもとに、ざます口調の「アザマス夫人」から電話がかかってくる。

どうやら、「子どもがこの店の食パンが大好きだから、作っておいてほしい」という話らしい。しかし主人公はパン作りが上手であるにも関わらず、なぜか食パンだけは上手く作れずに悩んでいた。

結局アザマス夫人は食パンを取りに来なかったけど、「こんなぐちゃぐちゃの商品を渡すくらいなら…」となる主人公。たしかに形は崩れているしパサパサしていそうだ。

本作には青を基調として描かれる雨の夜をはじめ、どこか優しくほっこりするようなシーンが多々あった。場面に馴染むように照らされるオレンジ色のライトも素敵だ。寒色がメインなのにあたたかみを感じるたくさんのイラストが、作品を彩っている。

机の上にはレシピやメモ書き、「師匠」との写真などが置いてあり、それらをきちんと読むもよし、見ずにとにかくストーリーを進めるもよし。

しかし私はこういうオブジェクトを全部見て物語の背景を考えてしまうタイプ。ごちゃっとした机には興味深いものがたくさんあった。

雨が降る夜、パン屋で出会ったのは…

本作の舞台は1階がパン屋、2階が居住スペースになっていて、2階には主人公の部屋・師匠の部屋・客室などがある。

雨の降っている夜中に、1階からなにやら物音が。様子を見に行くと、全身真っ黒な「コム」という子が迷い込んでいたようだ。

明るい様子で話しかけてくるが、一体この子は誰なんだろう、何者なんだろうと思っていると、彼のお腹から空腹を知らせる大きな音が聞こえてくる。

雨の中パン屋へ駆け込んでくる子どもなんて、どう考えても訳アリだとは思うが、はかせは優しく迎え入れた。

好きなパンをコムにあげよう

お腹を空かせたコムに、余り物のパンを与える主人公。

上手く作れなかった食パンではなく、綺麗で美味しそうなクロワッサン、メロンパン、カレーパン…店内の陳列棚には様々な種類のパンがあるが、何をあげても別にストーリーが変わるわけではない。

しかしこのパンのイラストが私は非常に好きだ。美味しそうなカレーがあふれている様子や、クリームがたっぷり入ったパンの色つやもたまらない。

アップデートで新しいパンも追加しているらしく、作者のこだわりを感じた。渡すパンによって、コムの反応が変わったりするのも可愛らしい。

また、外に見える街灯の明かりがなんだかノスタルジックな雰囲気で、画面のあちこちを気にしてしまう。

ここでも観葉植物や電話など、色々な場所を調べることが出来る。ポイント&クリック作品で良く見られる、「見なくてもいいんだけど見ると更に楽しめる」という点が大好きだ。


HARF-WAY コマーシャル

絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。


あたたかみのあふれる、師匠の部屋

一定の日数を過ごすと、「師匠」の部屋へ入ることができる。

1階のパン屋や2階の廊下など、他のシーンでは青を基調としている本作だが、師匠の部屋だけは暖色で、あたたかみを感じられる空間となっていた。

部屋の中にはたくさんの日記やメモ書き、師匠との思い出が詰まっている。はかせはどうやら幼い頃、師匠のもとに引き取られてやってきたようだ。日記には、「感情が乏しく、何を考えているのかわからないロボットのような子だ」とはかせのことが綴られている。

しかしいきなり夜中のお店に飛び込んできたコムへ、美味しそうなパンをあげたりする様子を見ると、きっと優しい師匠のもとで育ってその優しさを受け継いだんだろうなぁ、と感じた。

パン作りの名人である師匠を真似て、しかし助言はなるべくもらわずにこっそりとパン作りを研究したり、昔集めていたフィギュアがまだ机に置いてあったりして、また心が温まる。

コムと過ごす楽しい3日間、と思いきや…

本作はコムと過ごす3日間を描いていて、満足のいくまで探索を終えたら「1日目を終了しますか?」というメッセージを確認して日が進んでいく。

突然夜のパン屋に現れたコム。この子は一体何者なのか。だんだんとはかせの体調が悪くなってきたり、不穏なラジオが流れる中、コムからの「ありがとう ごめんね」という置き手紙が。

コムが何者なのか、2人はどんな結末を迎えるのか、を語りたいところだが、20分ほどで終わる作品なので是非自分の目で確かめてほしい。

ほっこりと優しい気持ちになれる絵本のような感覚を、多くの人に味わってほしいと思える作品だった。

〈詳細情報〉

ゲーム名しよくぱんの上手な焼き方
ジャンルポイント&クリック
ストア価格無料

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煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
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寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』


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