その悪事、誰も見てないと思った?『カーブミラーは見ていた』

幼少期に通った何の変哲もない夕暮れの通学路で、ふと視界の端に佇むカーブミラーから妙な気配を感じたことはないだろうか。誰もいないはずなのに、誰かに見られているような居心地の悪さ……。あの感覚は、気のせいではなかったのかもしれない。

カーブミラーは見ていた』は、誰しもが経験したことのある身近な違和感をテーマにした短編ホラー謎解きゲームだ。ひき逃げ事件の唯一の目撃者であるカーブミラーに映る“事故の断片”を頼りに、プレイヤーは少しずつ事件の輪郭を描き出していく。

自らの手で情報を積み上げていく構造が特徴で、1周数分という短時間ながら集中力や観察力の問われる緊張感が味わえる。本記事では概要と遊びどころを整理しながら、その魅力を紹介していこう。

噂から始まる下校途中の肝試し

▲トンネルの先にカーブミラーは不吉の確定演出

友人から「カーブミラーのある丁字路に幽霊が出るらしい」という噂を聞いた主人公は、好奇心のままにその丁字路を訪れて探索を始める。

夕日に染まる住宅街、先の見通せないトンネル、静かに佇むカーブミラー。暮れなずんでいく平穏な風景の中で、唯一異質な白い輝きを放つ立て看板は、この場所で起きたひき逃げ事故に関する目撃者情報を募るものだった。

それを見て、噂の幽霊とひき逃げ事故との関連を悟る主人公。妙な違和感に駆られてふと見上げたカーブミラーには、“あるはずのないもの”が映っていて――。

プレイヤーは限られた時間の中で周囲を調べ、事故の痕跡やカーブミラーの示す情報を読み解きながら手がかりを繋いでいく。1周およそ5分。時間内で証拠を集めてひき逃げ犯を突き止め、通報を果たすのがこのゲームの目的だ。

懐かしさと薄気味悪さが相互作用するレトロホラー

▲誰しもが一度は通ったことのある風景

まず目を引くのが、スーパーファミコン後期からプレイステーション初期あたりのホラーゲームを思わせるレトロ調のグラフィックだ。

粗めのドットや沈んだ色味、音のない背景が重なることで、見慣れた街並みがじわじわと怪奇に侵食されていくような不穏さを醸し出している。この独特の雰囲気に、『夕闇通り探検隊』や『トワイライトシンドローム』といった往年のADVを思い出したのは筆者だけではないはずだ。

特に、夕暮れの通学路はこの質感と相性が良いように思う。赤みの残る光に照らされた少し古びた街並みは、あたたかな懐かしさと、得も言えぬ不安感が共存している。郷愁で表現される“平穏だった日常の記憶”とホラーの組み合わせが、見逃していただけかもしれない異常や恐怖心を引きずり出してくるのである。

突然襲いかかってくる醜いゾンビはもちろん怖いが、“穏やかな日々の中にひっそりと潜んでいる不穏”には、また違った恐ろしさがあるものだ。

回数制限アリの緊張感漂う謎解きシステム

▲いる!なんかいる!

画面右上に表示される時刻は、主人公が1つ行動するたびに5分ずつ進んでいく。どの時間帯にどこを調べ、どのアイテムを使うのか。その組み合わせによって得られる情報が変化し、手がかりを積み上げながら“事故の真相”へと近づいていく仕組みだ。

探索パートには回数制限があり、タイムリミットまでに手がかりを集められなければ通報まで辿り着けずゲームオーバーとなるため、緊張感のあるプレイが楽しめる。もし犯人が見つからなければ、事件は迷宮入りになってしまう。

各行動のタイミングがズレると見える光景や拾える情報も変化し、新しいピースがひょっこり現れたりする。論理的に組み立てるもよし、勘で動くもよし。ひらめき次第では1周で核心に到達できる可能性もあるが、多くの場合は周回を重ねながら泥臭く手がかりをかき集めていくことになるだろう。

パズルのピースが次々とハマっていく感覚は単純に楽しいだけでなく、自らの手で物語を切り開いているという手応えを強く感じさせてくれるのも魅力だ。


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ある意味”異色のバディもの”かもしれない

▲胸が痛くなる光景……絶対に犯人を突き止めて警察に突き出そう

本作の特筆すべき点は、プレイヤーが物語の外側からただ観察するのではなく、行動を起こして介入することで結末が変化していくところだ。情報の繋ぎ方しだいで展開が変わり、カーブミラーが見せる事故の背景にどこまで踏み込めるかで物語は分岐していく。

犯人を特定して通報し、被害者の少年の無念を晴らせれば物語は静かな救済へ向かう。一方で、重要な手がかりを見逃したまま終えると少年の幽霊は“理解不能な怪異”としてプレイヤーに恐怖をもたらす。

周回を続けることでその幽霊が可哀想な被害者である実感が積み重なり、恐怖の対象だった存在は“救いたい存在”へと変わっていく。プレイヤー側にもたらされるささやかな心情の変化も、この作品が持つユニークな魅力だ。

ちなみに、カーブミラーからの情報提供をもとに犯人を追う設定は、ある意味“異色のバディもの”ではないかと筆者は気がついた。カーブミラーという身近なテーマにホラー要素だけでなくバディ要素までを見出した本作には、超短編にしておくのは惜しいポテンシャルを感じる次第である。

天知る、地知る、カーブミラーが知る

『カーブミラーは見ていた』は、1周5分という手軽さでありながら、レトロホラー特有の不穏さと軽い推理ゲームの面白さを味わえる作品だ。ひらめきがあればわずか数分ほどで真相に辿り着けるが、手がかりに気付けなければ、少年の怪異と一緒に夕暮れの通学路を永遠にさまようことになるだろう。

エンディングはBad・Normal・Trueの3種類。どの結末へ向かうかは、プレイヤーの観察力とひらめき次第。ブラウザはもちろん、スマホから遊べるアクセスの良さも魅力で、ちょっとした空き時間で気軽に遊べるのも嬉しい。

かといって、歩きながらスマホに夢中になるのは禁物だ。いつでもカーブミラーが見守ってくれているとは限らないので、安全な場所で腰を落ち着けてゲームを楽しんでほしい。

〈詳細情報〉

ゲーム名カーブミラーは見ていた
ジャンル謎解きホラーアドベンチャー
ストア価格無料

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