都合のいい少年は、外に出ることを許さない『イマジナリーバッドフレンド』

イマジナリーバッドフレンド』は、部屋に引きこもる主人公の前に突然現れた少年・シオミとの日々を描く短編ノベルゲームだ。リボンだらけで片目をフードで隠した姿。怪しさと可愛らしさが同居するシオミのビジュアルに惹かれてSteamで手に取った。

シオミはゲームを遊ぶための準備をしてくれたり、ケーキを食べさせてくれたり、主人公にとって都合のいい存在だった。だからこそ主人公は彼をイマジナリーフレンド、自分の頭が作り出した空想の友達だと信じている。

しかし、彼には主人公が外に出ようとすると強く引き留める不穏な一面もあった。30分という短さの中に、忘れられない物語が詰まっている。

部屋に現れた都合のいい少年「シオミ」

プレイヤーは部屋に引きこもる主人公となり、シオミとの会話を選択肢で進めていく。

システム自体はシンプルだが、30分という短いプレイ時間に対してスチルとテキストの量に驚かされた。立ち絵やスチルは差分を含めると100枚以上あるとのこと。短編とは思えない密度の濃さだ。

本作は開始時に主人公の名前を入力するが、物語が始まると「わたし」としか表示されない。自分でつけた名前が出てこないことに、早くも何かあるのだと予感させられた。

引きこもりの理由は語られず両親の姿も見えない。そんな曖昧な状況の中、シオミだけが当たり前のように部屋にいる。最初の選択肢でケーキを勧めても、彼はなんだかんだ理由をつけて食べようとしない。

通常の食事ではなくケーキという点も気になった。都合のいい存在のはずなのに、序盤からどこか居心地の悪さと不信感が漂っていた。

優しさの裏に潜む違和感

シオミは主人公に優しく寄り添ってくれる存在だ。

一緒に過ごす時間は穏やかで心地いい。最初に感じた不信感も、彼の親身な態度に触れて薄れていった。

しかし、ふとした瞬間に違和感が顔を出す。お菓子を選ぶシーンで、主人公は「シオミはワカタケの方が好き」と当然のように思い浮かべる。食べ物を口にしないはずの彼の好みを、なぜ知っているのか。

この瞬間、私は主人公が大切な記憶を失っているのではないかと推理した。真相への手がかりとして、強く惹きつけられる伏線だった。

そして漫画の続きを買いに外出しようとした時、シオミの態度が一変する。

穏やかだった表情が険しくなり、強い口調で引き留めてきた。監禁されているのか、あるいは外の世界は崩壊しているのか。様々な予想が頭をよぎったが、真相はそのどれとも違っていた。

歩道橋で蘇る記憶

外出した際、シオミは歩道橋を通る近道を頑なに避けようとした。その理由を知りたいという興味が勝り、主人公は後日一人で足を踏み入れる。

その瞬間、頭に激しい痛みが走る。溢れ出す記憶の奔流。主人公には忘れていた過去があった。自分の名前やシオミとの本当の関係、そしてこの世界の正体。全てが一気に明かされる展開に思わず息を呑んだ。

序盤から積み重ねられてきた違和感の正体がここで繋がる。なぜ名前が表示されなかったのか。なぜシオミは食べ物を口にしなかったのか。なぜ外に出ることを止めていたのか。散りばめられた伏線が回収される瞬間は、短編ながらも見事な構成だと感じた。

真相を知った主人公は、シオミへの感情を大きく揺さぶられる。しかしそこから先の展開は、ぜひ自分の目で確かめてほしい。


HARF-WAY コマーシャル

絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。


「悪友」という言葉に込められた意味

「悪友」という言葉には、一緒にいても為にならない友達という意味がある。

しかし同時に、親友という意味も持っている。作中で主人公はシオミを「一番の悪友」と呼ぶ。それは単なる悪い友達ではなく、二人でいればどんな困難も乗り越えられるという絆の証だった。

物語の終盤主人公は一度シオミを疑い、激しく責め立てる。しかし全てを思い出した後、彼女は再びシオミを「一番の悪友」と呼んだ。その言葉が二人の絆の全てを物語っていた。

シオミがケーキを食べるシーンも印象深い。

主人公は「君が残ってくれたことが嬉しくってしょうがない」と語る。正しい選択かどうかより、二人が同じ答えを選んだことが全てだった。

最後に二人は「今日は何をして遊ぼうか」と同じ答えを選ぶ。生死よりも、親友と過ごす時間こそが二人の求めていたものだった。タイトルの「バッドフレンド」が、ここで深い意味を持って響いてくる。

二人が選んだのは、永遠の放課後

プレイを終えて残ったのは、幸せのカタチはそれぞれにあるという実感だった。生死を超えてでも一緒にいたいと願う二人の姿が、胸に染みた。

そしてスチルの差分が多く、常に新鮮な気持ちで読み進められた。シオミの表情は豊かでその顔から物語を読み取ることができる。30分という短さを感じさせない密度がここにある。

本作はSteamで無料配信されている。短編ノベルゲームが好きな人、そしてシオミのビジュアルに少しでも惹かれた人はぜひ手に取ってほしい。親友とも恋愛とも違う、「一番の悪友」という関係がここにある。

〈詳細情報〉

ゲーム名イマジナリーバッドフレンド
ジャンルビジュアルノベル
ストア価格無料
リリース日2025年12月21日

HARF-WAY コマーシャル

煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
無料で、どなたでも。スマホで、PCで、どこでも。
まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。

寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』


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