他人のスマホを覗いてOK!だって国家の危機だもの『Replica』

「人のスマホを勝手に見たことがありますか?」と尋ねれば、ほとんどの人は首を横に振るだろう。では、「人のスマホを見たいと思ったことは?」ならどうだろうか。

Replica』は、我々の生活に浸透した携帯電話を題材に、他人のスマホを覗き見る背徳行為そのものをゲームの核心に据えたインタラクティブADVだ。画面に映るのは見知らぬ他人のスマートフォンだけ。国家をも揺るがす壮大な物語が、その小さな画面の内部だけで展開していく。

本作は『未解決事件は終わらせないといけないから』で知られるSomi氏による“罪悪感三部作”の一作目であり、氏が得意とする“日常の動作をパズルへと転換するゲームデザイン”が鋭く光る作品だ。気軽に画面をタップしている指先が、いつの間にか倫理の境界を越えていく──その背徳的な快感を、あなた自身の手でぜひ味わってみてほしい。

従順たる愛国者としてテロの証拠を見つけ出せ

▲スマホ操作のすべては国家保安部に監視されている

舞台は、大規模なテロ事件を機に監視体制が強化され、市民の移動履歴からSNSの利用状況まで国家によって常にチェックされるようになった、ある国だ。

プレイヤーは、国家機関からテロ容疑のかかった少年のスマホを調べるよう命令されている。実際は命令などという生易しいものではなく、「これまで通り家族と平穏に暮らしたいなら、テロの証拠を見つけて国家に貢献し、自身が善良な一般市民であることを示せ」と脅迫めいた指示を受けている状況だ。

家族の安全を人質に取られた状況で拒否権はなく、国家権力の圧力に怯えながら少年の端末に潜む“証拠”探しを余儀なくされる。プレイヤーはテロの証拠を見つけ出し、無事に家に帰れるのか? そもそも、その少年は本当にテロを画策した犯人なのだろうか……。

マルチエンディングの本作では、端末の中で拾い上げた判断が少年とプレイヤー、そして国家の未来を変えていく。どの結末に辿り着くかは、スマホを操作するあなたの指先次第だ。

日常の操作がパズルに変わる革新体験

▲パスワードを解くカギも、すべてスマホの中にある

『Replica』の最大の特徴は、物語がたった1台のスマートフォンの画面だけで完結する点だ。誰しもに馴染み深いスマホ操作をそのままゲームとして成立させており、スマホを使った経験が理解への鍵となるため説明やチュートリアルはほぼ不要。初見でも直感的に状況や操作方法を把握できるようになっているのだ。

そんなありふれたアイテムに“他人のもの”という設定を加えることで、普段の操作が一瞬で“覗き見”という罪深い所業へと置き換わる。ロック解除、メッセージチェック、SNSや写真の閲覧といったごく日常の動作。それを国家が“重大な使命”で上書きしてしまう。何気ないSNSブラウジングが証拠探しという罪悪感と緊張感にまみれたパズルに変わる瞬間、日常と非日常が交錯する奇妙な感覚が味わえる。

さらに本作はマルチエンディング構造となっており、どの情報を拾い、どう扱うかの選択が少年の運命や物語の結末、さらにはプレイヤー自身の未来までも左右する。単なる操作ゲーではなく、あなたの“目”と“判断”が物語の帰路を決めてしまうのだ。

罪悪感で加速する好奇心

罪悪感三部作と称されるシリーズの1作目にあたるだけあって、本作はプレイヤーに背徳的な罪悪感を巧みに植え付けてくる。

国家の命令という大義名分が与えられているとはいえ、見知らぬ他人の個人情報を覗き込み、行動や思想の痕跡を掘り起こす「自分がされたらめちゃくちゃイヤなこと」をやっているわけである。しかもプライバシー侵害の対象が年端もいかない少年と来た。ガールフレンドとの他愛ないメッセージ、友人たちとの写真、SNSへの投稿――覗けば覗くほどに罪悪感が増してくるが、それでも指は止まらない。罪悪感や背徳感こそが快楽を加速させる最高のスパイスなのだ、と実感させられるのである。

「やってはいけない」と分かっている行為ほど心をくすぐり、のめり込んでしまう。まさに悪いことをしている快感が指先を止めさせない。まあしかし国家の命令という名目があるのだから、ガールフレンドとのラブラブなやり取りも、友人との青春真っ只中な写真も、SNSに綴ったアツいポエムも、遠慮せず覗いちゃってOK! だって国家の命令だから! こっちは家族の命もかかってることだし、許せ、少年。


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絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。


他人のスマホを覗かなきゃ救えない国家って一体

▲「いかしたTシャツを来た俺」も、国家にかかればテロの証拠に

筆者の所感では、スマホ越しに垣間見える持ち主の姿は“フツーの少年”である。

しかし国家保安部は、画像フォルダ内にチェ・ゲバラのTシャツを着ている画像を見つけては「共産主義の崇拝者だ!」と断じ、友人たちとのメッセージ履歴に「革命」という単語があれば「ホラ!国家転覆を企ててる!」と息巻く。どう見ても普通の青春を送っているだけの少年にまで警戒心をむき出しにする繊細過ぎる国家に、健全な未来を期待するのは難しいんじゃないだろうか。そこまで神経質にならなければ維持できない国家ならば、遅かれ早かれダメになるであろう。

このようにこじつけだらけでうんざりしてくるが、「いや、無茶言うなよ」と反論すれば、「テロ支持者の肩を持つということは、貴様も危険因子だな!」としょっぴかれるのは目に見えている。

ここでプレイヤーは選択を迫られるのだ。自身と家族の安全のため、スマホの中の“ありふれた情報”をどうにかテロの証拠へと仕立てあげ、国家に従順な愛国者として振る舞うか。それとも倫理を抱いて正義を貫き、自身の矜持と少年を守るため国家保安部に盾突くか――この二律背反が、強い緊張感と心理的スリルを生んでいる。

ここでもう一つ情報を加えておきたい。

隣の部屋では、その少年が“あなたのスマホ”からテロの証拠を探している。彼もまた自分と家族の安全のために、あなたをテロ容疑者に仕立て上げる材料を必死で探しているかもしれない。あなたと同じように、少年もまた国家への忠誠心を試されているのだとしたら……さて、どうする?

安全圏で味わうスリルは、なぜこんなにも甘いのか

12種類ものエンディングが存在する『Replica』は、1つのエンディングにたどり着くだけなら約15分もあれば可能というコンパクトな作りながら、全エンドを回収するとなると数時間はかかる噛み応えを有している。サクッと遊びたい人も、じっくり考察したい人も、どちらのプレイスタイルにも対応できる幅広さが魅力だ。

iOS、Android、Steam、PS4にSwitchと多様なプラットフォームに対応しているため、環境を選ばずプレイ可能なのも嬉しいポイントである。

日常的なスマホ操作を使った直感的なパズル性、倫理観を揺さぶる背徳感、そしてマルチエンディングによる選択の重み。これらが組み合わさることで、『Replica』は他にはない緊張感と没入感を味わえるゲームになっている。

少年のスマホを暴くその指先がどんな結末を招くのか──罪悪感なく罪悪感に苛まれるスリルを味わう中毒性を、ぜひ体験してほしい。

〈詳細情報〉

ゲーム名Replica
ジャンルアドベンチャー
ストア価格350円
リリース日2016年7月11日

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