『シリアルクリーナー ジョージの裏シゴト』は、1970年代のアメリカを舞台に、警察の目をかいくぐりながら殺人現場の証拠隠滅を行う2Dステルスアクションゲームだ。
主人公ジョージは“掃除屋”として遺体や証拠品の回収、飛び散った血痕の処理に日々奔走している。警官の視界に入らないよう慎重に次の現場へと向かう姿は、一見すると重く、陰鬱な裏稼業の人間そのもの……
しかし実際のゲームプレイは驚くほど軽やかでシンプルだ。ステージはパズル的設計で進行し、プレイヤーは「どうやって見つからずに片付けるか」という戦略に没頭することになる。
本記事では、重たい題材と軽快なテンポのズレが魅力の“裏シゴト”を紹介したい。
日本語対応しているのはswitch版のみとなるのでご注意ください
殺人現場の清掃員・ジョージの日常

主人公ジョージは、殺人現場の後始末を請け負う“シリアルクリーナー”だ。もちろん合法の仕事ではなく、殺人を犯した側から依頼を受け、秘密裏に現場へ潜入して証拠隠滅を行う裏稼業である。警察が巡回する現場で、血痕や死体、証拠品を処理し、何事もなかったかのように片付けるのが彼の役目だ。
ギャンブルによって借金を抱えるジョージは、返済のためにこの仕事を続けている。自宅にかかってくる一本の電話が、次の現場への合図だ。依頼人が誰であれ、やることはいつも同じ。そう割り切って清掃作業を繰り返すうち、彼は自分が巷を騒がせている連続殺人事件に関わっているのではないかと疑い始める。
ゲームはステージクリア制で進行し、各現場には固有の条件やギミックが用意されている。求められるのは一貫して、誰にも気付かれず痕跡をすべて消すこと。
ステージの合間にはストーリーパートが挟まれ、テレビやラジオ、新聞といった日常の風景を通して、事件の行方とジョージの立場が浮かび上がっていく。
敵を倒さない、掃除に全振りしたステルスパズル

本作は、一般的なステルスアクションとは少し毛色が違う。敵を倒す手段はなく、戦闘も存在しない。ジョージに課せられているのはただ一つ、「現場を完全に片付けること」だ。
死体を運び出し、証拠品を回収し、血痕を一定量以上拭き取り、すべて終えたら脱出ポイントへ向かう。目的は明確で、やるべきことは常に整理されている。
ステージは見下ろし型の2D構成で、現場には警官が巡回している。警官には視界が表示されており、その中に入ると高速で追跡され、捕まれば即やり直し。緊張感はあるが、操作自体はボタン一つで完結し、複雑なアクションは求められない。反射神経よりも、「どの順番で動くか」「どこに隠れるか」を考えるパズル性が前面に出ている。
マップ内にはロッカーやゴミ箱など身を隠せる場所も点在し、警官の目の前で隠れることすら可能だ。
見つかること自体に大きなペナルティはなく、あえて発見されて誘導する、といった大胆な立ち回りも成立する。多彩な死体処理方法、誘導戦略、エスケープポイントなど、ステージごとに変化する数々のギミックも本作の大きな特徴だ。
敵を倒せないからこそ、脱出するその瞬間まで気が抜けない。単純明快でありながら、最後まで飽きさせないステルスアクションに仕上がっている。
物騒なテーマを中和する軽妙なビジュアルとテンポ

もうひとつの大きな特徴が、アートワークとBGMの洒落た軽さだ。70〜90年代のアメリカを思わせるレトロな世界観は、色数を抑えた直線的なビジュアルと強いデフォルメによって構成されている。
くすんだ原色や単調な陰影を基調に、キャラクターやマップは輪郭のはっきりしたシルエットとして表現されており、写実的な質感描写はあえて省かれている。そのため、血痕や死体が転がる空間であることを忘れさせるほど、画面から受ける印象はモダンでスタイリッシュだ。
ブルースを基調とした渋いBGMも、裏稼業に身を投じるジョージのくたびれた人生を演出し、物語の進行に合わせて不穏さや爽快感をさりげなく織り交ぜてくる。見た目も音も肩肘張らず、グロテスクさを感じさせない。この“おしゃれな距離感”が、殺人現場という物騒な舞台設定をどこかポップに見せている。
また不謹慎なほどにテンポが良い点にも注目したい。
警官に見つかってもリトライまでの待ち時間はほぼ一瞬で、「はい次!」という軽さで仕切り直せる。依頼のやり取りも驚くほど簡潔で、「ヤッちゃったから片付けといてくれん?」「おk~」くらいのラリーでヤバい商談が成立してしまうのだ。
深刻になりそうな題材を、あえて肩の力を抜いて描く姿勢が貫かれている。この軽快な世界観とテンポの良さがあるからこそ、単純明快なお掃除パズルがただの作業ゲーになることなく、最後まで気持ちよく遊べるのだろう。
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突っ込みどころ満載の憎めない悪人

ところで、主人公であるジョージとは何者なのか。
「その腕を見込んで頼みがある」と、殺人犯から実家の電話に届くあまりにも物騒なラブコール。警察官が目を光らせる殺人現場へ単身乗り込み、死体や証拠品、血痕を淡々と処理していく姿を見ると、特殊な訓練を受けたプロの仕事人にも思えてくる。しかしその正体は、ギャンブルでこさえた借金を返すために危ない橋を渡る羽目になっただけのダメ人間である。
それでもジョージが不思議と憎めないのは、彼がとことん母親想いだからだ。ステージの合間に挟まれる“実家パート”では、同居する老いた母親と短い会話を交わすことができる。そこに描かれるのは、互いを気遣う、ごく普通で穏やかな親子の姿。ジョージはクズだが、ジョージの母親が悲しむ姿は見たくない。俺が薬代を稼いでくるから待ってろよカーチャン……と、気付けばプレイヤーはジョージに情が移っている。

突っ込みどころは他にも多い。現場から回収した証拠品はコレクション要素として閲覧できるのだが、その保管場所がまさかの自室の飾り棚。警察に嗅ぎつけられたら一発アウトな代物を、毎回満足げに眺めて仁王立ちするジョージの神経が理解できない。この危機感のなさ、もはや才能である。

▲衣装チェンジもあるぞ!掃除屋だけでなく変質者としてのスリルも味わえる
さらに、やり込み要素の1つとして着せ替え機能まで用意されている。ステージに落ちているファッション雑誌を集めると、ジョージをさまざまな衣装に着せ替えられるのだ。グラサンにヒゲの堕落したオッサンの着せ替えなんて誰が喜ぶのか、と思わなくもない。
しかし用意されている以上、回収せずにはいられないのがゲーマーという生き物だ。少なくとも筆者は、仕事そっちのけでジョージのおしゃれを満喫していた。
こうした人間臭さとユルさが積み重なり、プレイヤーはいつの間にか「証拠隠滅を手伝っている」のではなく、「ジョージの人生に付き合わされている」気分になる。この共犯関係こそが、本作を忘れがたい1本たらしめている最大の要因だろう。
肩の力を抜いて向き合える、ブラックユーモアなお掃除ゲーム

『シリアルクリーナージョージの裏シゴト』は、 本格的なステルスアクションやシリアスな犯罪ドラマを期待すると、少し肩透かしを食らうかもしれない。
しかし、
・軽快に遊べるパズル要素
・ブラックユーモアの効いた世界観
・短時間でも区切りよく楽しめる構成
これらに魅力を感じる人にとっては、非常に居心地のいい作品だ。物騒な題材をここまで肩の力を抜いて遊ばせてくれるゲームはそう多くない。
1ステージの所要時間は数分程度で、毎回きっちり区切りがつく。隙間時間に1現場だけ掃除する、という遊び方ができるのが心地いい。全20ステージのメインストーリーも3~4時間でクリアでき、軽すぎず重すぎない絶妙なボリュームだ。
しかもそれだけでは終わらない。隠しアイテムを集めれば衣装や追加ステージが開放され、視界制限や一発アウトのチャレンジモード、さらには酔っ払い仕様まで用意されている。現実時間の夜に遊ぶとステージが夜仕様になるという謎のこだわりもある。
気楽に始めて、気づけば何度も掃除に戻ってきてしまう。そんな中毒性を持った本作は誰にでもできるオススメのお仕事なので、ぜひ取り組んでみてほしい。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | 〈switch〉 シリアルクリーナー ジョージの裏シゴト 〈steam〉 Serial Cleaner |
| ジャンル | ステルスアクション |
| ストア価格 | 〈switch〉 1,000円 〈steam〉 1,480円 |
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