この一瞬が、永遠になればいいのに。
そう思える瞬間が人生にどれだけあるだろうか。
この一言で、どんな作品かが伝わってくる。
間違いなく好きな作品になると確信した。
2025年12月27日土曜日、「マイドームおおさか」で開催される「大阪ゲームダンジョン」にて、『Forever Time』という作品が出展される。
本記事はイベント当日に、ひとりでも多くの人が本作を手に取ってくれるよう先行して書かれたPR記事だ。steamでも販売中のため現地に行けない人もぜひチェックして欲しい。
〈steamストアリンク〉
https://store.steampowered.com/app/3278330/Forever_Time/?l=japanese
先行して頂いたポスターには、「これからはじまる物語。」のキャッチコピー。そこにはヒロインの深町なずながポツンと空を眺め、新しい第一歩を踏みこむワンシーンが描かれていた。ゲームの地続きになっている宣伝素材、つくづく味なことをしてくれる。

まずはあらすじを紹介しよう。本作はレンタルビデオショップをクビになった主人公「羽生ユウト」と、写真家を目指す専門学生「深町なずな」との交流を描くシネマティックノベルゲームだ。その名のとおり実写映像を用いた映画的な手法を取っている。凪のような空気感が堪らない。
兵庫県西宮市に位置する「西宮大橋」を筆頭に、ゲーム内のキャラクターと実写映像を組み合わせたシーンがいくつも登場する。花火した浜辺も、海上のカモメを撮った客船も、二人で行った高原も。すべて実際に撮影した写真が使われている。




落ち込んでいる羽生ユウトの前を、偶然通りかかった深町なずなが見つけ、シャッターを切ったことから物語は始まる。学校で勉強しながら写真家を目指している彼女も進路に悩んでおり、夕焼けに重なった悩める彼の姿があまりにも愛おしく思えたのだろう。
急な出来事に戸惑いを隠せないユウトだが、なずなに牛丼を奢ってもらい意気投合。どうやら、なずなは卒業制作で優秀作を狙っているらしく、ユウトに被写体になってほしいとお願いをする。

目の前の目標に全力で突き進むなずな。無気力状態で好きなことを見失っているユウト。言わずもがな、ユウトはなずなに影響を受けていく。王道ながらも二人の掛け合いを見ていると胸がきゅんとしてくる。
ぜひ見て欲しいのが歩道橋での会話シーン。階段を登るユウトになずなが「なにか やりたい事とかあるんですか?」と尋ね、ユウトが「うーん。なんだろう。あんまり考えずに生きてるかも。」と口ごもる場面。

なんだこれ可愛いすぎる!!!!
あっ、失礼、間違えました。思わず素の声が出てしまいました。
夢を追いかける眩しい年下女性からの真っすぐ過ぎる問い。燻っていたユウトが自分を見つめ直す描写が人間臭くて、ここから物語が始まる予感を思わせます。わたしね、二人を見ていて蒸発しそうでしたよ。
実は本作、基本的にユウト視点で物語が進むのですが、途中からなずな視点に切り替わります。そこでカメラマンを目指している理由だったり、ユウトを撮った理由も明らかになったり、グッと入り込む瞬間があるのも推しポイント。

二人が最終的にどんな結末を迎えるのか。
ぜひとも自分の目で確かめて欲しい。
この一瞬が、永遠になればいいのに、と思うはずだ。
記事執筆にあたり、聖地巡礼として兵庫県西宮市を訪れている。PR記事作成のためというのも一理あるが、もともと好きな作品だったのが一番大きい。

筆者が本作を最初に知ったのは、「ノベルゲームコレクション」と呼ばれるノベルゲームを主体とした作品がゲーム配布サイトだった。そのなかでも実写映像を交えたゲームというのが珍しく、数ある作品に埋もれることなく目立っていたことを今でも思い出す。

新宿から夜行バスに飛び乗り、約9時間弱。かの有名な「ハルヒ時計」のある西宮北口駅に到着したのは朝8時だった。開発者の橋本氏との集合時間は昼の12時半。絶妙な時間の空きがある。
眠たそうに駅へ向かうサラリーマンと、閑散とした飲食街。真面目に働く彼ら彼女らと向かい合う形で逆走しながらひた歩く。これから取材してお話を伺うとは思えないほど、平和で静かな場所だった。




あとは全然関係ないんだけど、西宮北口駅にある「阪急ベーカリー&カフェ」のモーニングがとても良かったので是非食べに行って欲しい。食パンの厚みが少年ジャンプくらいあってテンションも上がる。

しばらくして橋本氏と合流。ゲーム内で使われた撮影場所を巡ることに。道中では影響を受けた映画について色々教わり、本作が様々な映画をリスペクトしていることが伺えた。
本作には実写映像を使ったオープニングが存在する。心情に合わせて揺れるような映像もあり、これは映画監督「ウォン・カーウァイ」が手持ちカメラで撮影する技法を参考にしたとのこと。
裏話として、橋本氏は「自転車のシーンでジンバル(手振れを補正する機械)が壊れてしまったので気合いで乗り越えました(笑)」と教えてくださり、あのエモいシーンは紆余曲折あって生まれたんだなと知って嬉々とした。

本作の好きなシーンからはズレてしまうが、橋本氏が作成した実写CMも好きなのでこちらも話したい。ヒールが地面に当たる音や、真横で走る自動車の走行音。橋の上を吹き抜ける風の音を聴きながら、一人の女性がカメラを構える。
初めて見たとき、間の豊かさに痺れた。
余談ですが、橋本氏の母校に映画『ナタリー』の監督が訪れたらしく、彼の友人が「どうしたら女性を綺麗に撮れますか?」と聞いたそうです。そのとき、「女性を足から撮ってみて」とアドバイスを受けたらしく、本ムービーも教えどおり足から撮られている。
また本作に使われている写真は観光地だけではない。なかには奥まった住宅街やよく見かけるファミレスの店内写真もある。主人公ユウトが勤めていたレンタルショップは橋本氏が働いていたお店がモデルになっているものの、いまは残念ながら潰れてしまった。
橋本氏の思い出話に花を添えながら、交通量の多い大きめの道路から路地に抜け、住宅街を突き進む。「ゲームにこんな場所ありましたっけ?」となりつつも、記憶を頼りに辺りを見渡す。
橋本氏:ここです。

ここはどこ!??
完全に、アパート。好きな人でも住んでいたのかなと数秒だけ思い馳せる。そして現実に戻る。夕焼けをバックにしたエモいシーンはフラッシュバックするものの、入り組んだ住宅街のシーンは思い出せない。
橋本氏:ここはユウトの住んでいるアパートです!
…
…
…
あそこか!!

実際に足を使ってディティールを生み出す、このひと手間。ネットに転がっている素材を流用しても良いのかもしれないが、一つ一つの場面が現実と紐づいているからこそ生まれる空気感も存在する。
目に見える世界から物語を作るプロセスは、映像系の学校に通っていた橋本氏の教訓らしい。当時学んできたであろう経験が如実に生きていた。Forever Time検定があったら間違いなく1級の場所だと思う。
続けて橋本氏と一緒に辺りを散策し、また足が止まる。「確かこの辺だったような…」とカメラを取り出し、おもむろに画角を調整している。不思議なもので、今度はどこのシーンなのか分かった。


橋本氏は「久々に来ると何処で撮ったか思い出せないものですね(笑)」と照れ笑いしており、自作品に対する想いや創作に対する熱意が伝わってくる。自分がこの作品を好きになった理由が分かった。
写真を撮り終えた私たちは、とある店を目指す。
『Forever Time』が出展する大阪ゲームダンジョンで貼りだされるポスターには「これからはじまる物語」のキャッチコピーが載っている。
本作の開発者である橋本氏は、「このゲームに関わっている人間が新たな一歩を踏み出していることから、今回のコピーに決めました」と教えてくれた。これを聞いて、ますます好きになったのは言うまでもない。
例えば、Forever Timeのエンディング曲「restless」を録音した音楽スタジオ「モンジャクシン」の店主が、喫茶店「echo」を新しくオープンさせたとのこと。夜になるとモンジャクシンに関わりのあるバンドが演奏する素敵な店として新たな物語が始まっている。


取材した日は喫茶店echoの開店初日だった。
まさに「これからはじまる物語」なのだ。
神戸西宮に在中の方はぜひ足を運んで欲しい。「Forever Timeというゲームで知りました!」と伝えればサービスしてくれるかもしれない。たぶん。




時刻が過ぎ、夕暮れ。聖地巡礼も終わりを迎えようとしている。喫茶店を出て西宮大橋を目指す。どうやら40分ほどかかるらしい。迫るタイムリミットに緊張感を拭えない。
向かう途中、筆者が一番好きなシーンである歩道橋が姿を見せた。なずながユウトに対して大きく歩み寄る重要なイベントシーンで使われている。


何とも味わい深い。予想よりも年季が入っていた。なんの変哲もない場所だからこそドラマは生まれて、地に足のついた人間模様が形成される。作品を知っているだけなのに、この場所に思い入れを持てている自分がおこがましくて笑ってしまった。
階段を登って空想する。階段の下には自分の退屈な日常を破壊してくれる女の子がいて、「あなたはどうしたいの?」なんて、聞いて欲しいことNo1の言葉を話してくれる。筆者もそんな人生を送りたかったなぁ!
しばらく歩き、橋と思わしき場所が見えてきた。

時間ギリギリで早歩きしたため夕焼けと重なり、図らずしも原作再現となった。ゲーム内で「お気に入りの場所」と表現されるのにも納得の景観だ。写真の技術がなくても情感溢れる1枚が取れることだろう。
橋の中間地点にはベンチが設置されており、多くの恋人が訪れた痕跡が残っている。落下防止用の柵に書かれた相合傘がなんとも甘酸っぱく、誰かにとっても大切な場所であることが伝わってきた。




橋での撮影を終えた後、橋本氏がこんな話をしてくれました。
「学生の頃、この橋で天使と出会うけど、その天使が自分の目の前からいなくなって、高原まで天使を探しに行く話を考えたんですよ。でも、先生にダメ出しを食らって諦めたんです。いまこうやって、昔思い描いた話をベースに物語を描けたのは感慨深いですね」と。
何かを作ろうとする限り、創作が死ぬことはない。これからはじまる物語は作り手だけに向けられた言葉ではなく、遊び手である私たちにも向けられている言葉だったんだと気づいた。




続く後編の記事では、橋本氏・なんば氏のインタビューをベースにして作品を深掘りしていきます。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | Forever Time |
| ジャンル | シネマティックノベル |
| ストア価格 | 1,000円 |
| リリース日 | 2025年5月6日 |