もしも願いが叶うなら、何を望むだろう。
空を飛べるようになりたい?
過去や未来を旅してみたい?
それとも、もう二度と会えなくなってしまった誰かに、もう一度会ってみたい?
マルチエンド方式の短編ADV『願いは命の尽きるまで』は、寿命と引き換えにどんな願いも叶えられる少女と、その少女に遭遇した男の一夜を描いた作品だ。
願いが叶うとはいえ、それが寿命と引き換えだと言われると軽々しくは決められない。貴重な寿命を削ってでも叶えたい願いとは何だろう。そう問いかけてくる物語だった。
後悔を背負う男と、願いを叶える少女

鈴虫が鳴く夜、見知らぬ駅で目覚めた男は白い髪の少女と出会う。
少女は男に問うた。
「何か叶えたい願いはある?」
50歳の主人公は、それまで募らせてきた後悔を背負い日々を生きている。叶えたい願いならきっと幾つもあるだろう。叶えられるなら叶えたい。でも、この少女に何が出来るのか。
男の疑問を見透かすように少女は答える。
「私には、あなたの願いを何でも叶えてあげられるチカラがあるんだ。…あなたの寿命と引き換えにね」
これが男と少女の出会いである。
宵闇 の中、淡々と喋る少女はどこか不思議な雰囲気を纏っていた。
願いの重さ、寿命の代償

少女が言うには「大きな願いは、それ相応の寿命が必要になる」らしい。
そんな事を言われても、男は半信半疑。どうせただの遊びだろうと最初は適当な願い事を思い浮かべる。画面に浮かぶ選択肢は「自販機のスロットで当たりを出したい」のような軽い思い付きや、「財布の中身が潤ってほしい」という俗物的な願望など様々だ。
試しに「財布の中身が潤ってほしい」と言ってみる。そうすると瞬く間に財布が紙幣で満たされた。どうやら少女の言葉は本当のようだ。
寿命と引き換えに願いを叶える。
その力を目の当たりにした男は事の重大さに気付く。何せ自身の寿命を天秤にかけるのだ。軽々しい決断はできない。
男は思案した。2回目以降の選択肢では「妻の病気を治してほしい」「死んだ母ともう一度話がしたい」といった切実な願いが並んでいる。いずれも代償となる寿命は大きいものばかりだ。
中には数百年の寿命を使う願い事もある。人間の寿命では到底叶えられない。その諸刃の剣ともいえる力の重さに筆者は息を呑んだ。
願わないという選択肢

本作では少女との会話を進めながら、願い事が選択肢として現れる形で進行する。その中で「もう願い事は大丈夫」という選択肢があらわれるのだが、それを選択すると主人公は何も願わずその場を後にする。
それを見て、もし筆者が本作の少女に出会ったら「もう願いは大丈夫」といって立ち去るかもしれないと考えた。どこか物事を現実的に捉えてしまう筆者は、寿命を削ることを躊躇してしまうからだ。
願いを叶える為に寿命を削る。大きな代償を伴う決断には相当な覚悟や理由が要るだろう。
ちなみに残りの寿命を超える願い事をすると、そのまま死亡エンド(DEAD END)になってしまう。願い事は慎重に選んでほしい。
HARF-WAY コマーシャル
絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

ふたりのバックボーン、少女は何者か

少女との対話を進めていくうちに、主人公の男には妻がいて、かつて娘が何者かに誘拐された過去が明かされる。妻はその事件がきっかけで心と体を壊してしまった。作中では男が何度も「後悔」という言葉を使うのだが、それほど心に深く刺さっている出来事なのだということが痛いほど伝わってくる。
一方で、少女は両親から暴力を振るわれ、何年も前に家を出ている。家に彼女の居場所は無かった。
そんなバックボーンを持つ二人だが、こんな深夜に出会ったのは偶然なのだろうか。少女のもつ力と同様に、不思議な力が二人を引き合わせたのではないか。
物語を進めるうちに、二人の会話を通し、とある事実が判明する。それは物語の核心となる部分であり、本作が単純に主人公の願いや欲望を叶えるゲームではない事が読み取れた。
少女自身も知らない真実が明らかになった時、プレイヤーは運命の選択を迫られる。その先に待っている結末を、その目で見届けてほしい。
寿命と願いを天秤に

寿命を削ってでも叶えたい願いがあるなら、何を願うだろう。
本作にそう問われた時、筆者にはそれだけの覚悟を持って答えられる想いが無い事に気付いた。主人公のように、守るべき存在がいないからだ。きっと「もう願い事は大丈夫」といってその場を立ち去るだろう。しかし、彼のように長く生きた先で、いずれ命を削ってでも守りたい存在を見つけるかもしれない。
本作の問いかけに対する答えはプレイヤーひとりひとりの境遇によってきっと異なる。あなたなら寿命と引き換えに、何を願うだろうか。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | 願いは命の尽きるまで |
| ジャンル | ノベルゲーム |
| ストア価格 | 無料 |
| リリース日 | 2025/08/08 |
HARF-WAY コマーシャル
煙草を軸に交差する、ふたつの恋の物語。
無料で、どなたでも。スマホで、PCで、どこでも。
まるで文庫本のような、縦書きビジュアルノベル。
寂しさにも、熱がある。
『Keep Only One Loneliness』

