この一瞬が、永遠になればいいのに。
そう思える瞬間が人生にどれだけあるだろうか。
この一言で、どんな作品かが伝わってくる。
間違いなく好きな作品になると確信した。
2025年12月27日土曜日、「マイドームおおさか」で開催される「大阪ゲームダンジョン」にて、『Forever Time』という作品が出展される。
本記事はイベント当日に、ひとりでも多くの人が本作を手に取ってくれるよう先行して書かれたPR記事だ。steamでも販売中のため現地に行けない人もぜひチェックして欲しい。
〈steamストアリンク〉
https://store.steampowered.com/app/3278330/Forever_Time/?l=japanese
前編記事では『Forever Time』のモデルとなった兵庫県西ノ宮市に聖地巡礼をおこない、現地の写真を交えて旅行記のような形で本作について紹介しました。




▲上記シーンに使われた聖地を巡礼してきました
しかし、本作の魅力を伝えるには全然足りません。
続く本記事は作品の深掘りをして頂きたく、開発者の「橋本」氏と、イラストを担当する「なんば」氏への取材記事となっています。ゲームが生まれるまでの裏話たっぷりなので、ぜひ最後までお楽しみください。
はじまりは『イベントポスター』と『1ページマンガ』


本作のキャラクターデザインは二名のイラストレーターが担当しており、ノベルゲームコレクションで発表された初期作品の原画を担当した「ハカル」氏と、現在Steamで発売されている新規イラストを担当した「なんば」氏によって作成されています。
今回お話を伺えた なんば氏は作品の途中からゲーム制作に参加しており、元々はマンガを主戦場とするイラストレーターとのこと。取材にて本作に携わった経緯や大変だったことを教えてくれました。

『Forever Time』がSteam版としてリリースされる前。神戸ゲームラビリンスと呼ばれるイベントに出展する時のこと。作画を担当していたハカル氏の体調不良により、イラストを描ける人がいなくなってしまった時期がありました。
そこで大抜擢されたのが、橋本氏の職場の後輩にあたる なんば氏だったのです。橋本氏が「イベントに使うポスターをお願いできへん?」と相談したところ、下記のラフが提出されて「才能の原石を見つけた!!」と衝撃を受けたとのこと。

神戸のイベントも無事に終わり、橋本氏はすぐにSteam版で使用するラストシーンのイラストを追加で書いて欲しいと なんば氏に打診。こうしてハカル・なんばラインが完成したという訳です。
写真を使ったゲームならではの難しさと面白さ

本作は写真背景と人物イラストを掛け合わせた作品のため、背景とキャラクターを合成する形で一枚絵を描くことになります。描いたイラストが浮かないようカラースポイトで写真の色を吸い取ったり、青色のフィルターを重ねて写真に馴染むよう意識したそうです。
またゲームはマンガと異なり一つの絵が長時間表示されることもあり、パース(遠近感)の効いてる絵の方が向いているとのこと。マンガだと角度の付いたイラストが続くと読みづらさに繋がるらしく、絵描きならではの配慮も盛り込まれていることが分かります。


マンガの場合は一コマに対するテキスト量は控えめですが、ゲームの場合はスチル絵が表示されている間に大量の文章が流れることも珍しくありません。
「イラストだけでは伝えられない部分や会話がテキストとして保管されるので、文字が入ってイメージが明確になるところが勉強になりました!」と教えてくださいました。
なんば氏によるマンガとイラストの見事な二刀流。ゲーム内で完結したお話が作品を飛び出し、サイドストーリーとして続いていく形式が生まれたのは、ひとえに なんば氏の功績といえるでしょう。




構図のヒントはあの名作から

本作の原画は「ハカル」氏によって書かれているとはいえ、なんば氏は途中からバトンタッチする形で参加しています。慣れないスチルを描く際、参考にしているものがあるのか筆者は気になりました。
なんば氏に尋ねてみると「自分の趣味でもあるのですが、『あんさんぶるスターズ!!』というスマホアプリのスチルが凄い分かりやすくて、構図も凝っていて色使いも好きなので参考にしました」とのこと。

また各シーンの絵作りについては、開発者の橋本氏から参考元となる映画を聞いて繰り返し視聴したそうです。『Forever Time』には、とある映画の名場面をオマージュしたシーンがいくつかあるため、映画好きの方は気づくかもしれません。
気になる人は『ミステリートレイン』で検索!
〈NETFLIX〉
https://www.netflix.com/jp/title/81013585?source=35&fromWatch=true
筆者がお話を聞くなかで印象的だったのが、本作に『スラムダンク』の要素が入っている点。

なんば氏がスラムダンクにハマっていた経緯と、橋本氏が原作者「井上雄彦」氏のドキュメンタリー映像を持っていたことが発端らしい。
ドキュメンタリー内で話されていた「闇が強いほど光が強くなる」を絵作りのコンセプトに据えて、ユウトの受験シーンや なずなの家庭環境を闇として深く描き、対照的に手持ち花火や高原のシーンを光として描くようリテイクが入ったとのこと。




本作の全体ボリュームは決して多いとは言い切れませんが、場面ごとの明暗をクッキリつけることで物語に起伏が生まれており、コンパクトながらも印象に残る作品に仕上がっています。
なんば氏の「これからはじまる物語」

イラストレーターを目指すべきか。
それとも漫画家を目指すべきか。
どちらを選ぼうか悩んでいたタイミングで橋本氏から依頼が入り、経験を積むためにゲームイラストとサイドストーリーの漫画を担当してくださったそうです。
同席していた橋本氏は「自分の撮った写真をイラストや漫画にしてもらえるなんて、僕からしたらすごい贅沢な話です」と照れ笑いをしていました。

そして!
ここで大ニュース!
なんば氏が月刊ビッグガンガンの新人賞を勝ち取り、2025年12月25日に発売される本誌に読み切りマンガが掲載されることに!

〈公式サイト〉
https://magazine.jp.square-enix.com/biggangan
連載に向けての準備も進めているらしく、現在は編集者さんと二人三脚で制作を進めているとのこと。なんば氏の嬉しそうな表情を見て、こちらまで嬉しくなってしまいました。
橋本氏も「ゲームをきっかけに、なんば氏のマンガも知ってもらえたら嬉しい」とにこやかに話しており、「ぜひ買ってください!」と親のように宣伝をしていました。もちろん買わせて頂きますとも。

なんば氏もまた、「これからはじまる物語」を歩んでいる真っ最中だったのです。
最後に、開発者の橋本氏にもお話を伺いました。

どのようにして映画×ビジュアルノベルが生まれたのか、参考にしている作品はどんなものがあるか、本作に込めたメッセージとは。根掘り葉掘り聞いたので是非ご覧ください!
100万円と企画書を持って憧れの人の元へ

橋本氏が『Forever Time』を作るきっかけになったのは、いまは亡き神戸のヴィレッジヴァンガードで出会った1冊のイラスト集だったとのこと。
京都の空気感やファッショナブルな女性。帽子を被ったオシャレな女性に心を打たれ、「この人とならノベルゲームに革命を起こせる!」と奮い立ちゲーム開発がスタートしました。

必死に働いて100万円ほどの資金を蓄え、いざ東京へ赴き企画書を提出。しかし、イラスト本を描かれた方は会社に属しており、個人間の契約はできないと断られてしまいます。
その後、京都で毎年開かれるゲームイベント「BitSummit」や、プロ・アマ問わず作家が集まる漫画誌展示即売会「コミティア」、大阪の専門学校に飛び込みでゲームを作るためのコンタクトを図るも結果は振るわず。
もう無理かもしれないと心が折れかけたタイミングで、とある人物が救世主として現れます。
職場の先輩、ハカル氏、なんば氏との出会い
「何らかのマンガを描いている…」と噂される先輩が異動することになり、最後だからとご飯に行くことに。せっかくなので、どんなマンガだったのか聞いてみると、なんとエロ漫画だったことをカミングアウト。
思わぬ展開に驚きつつ、腹を割って話してくれた先輩に敬意を表してゲームを作っていることを打ち明けると、先輩が「そういえば、ハカルさんもゲーム作ってるよね」と教えてくれたとのこと。
ハカル氏とは仕事でもそこまで喋る関係ではなかったものの、試しにゲームイラストのお願いしたところ快く引き受けてくださり、ゲーム作りがここでようやく動き出します。
職場の同僚とのゲーム制作。
なんだかドラマチックですね。

ハカル氏はファッションに造詣が深く、キャラクターデザインや身に着けている服装を楽しそうに考えてくれたとのこと。本作の最後でお披露目になるユウトの特別な衣装もこだわってくれたそうで、とても助かったと仰っていました。
初代『Forever Time』が無事に完成した後、ハカル氏は体調を崩して休職。Steam版に向けて新規イラストを描ける人が見つからず途方に暮れていた橋本氏に彗星の如く現れたのが なんば氏でした。

なんば氏は本作が完成する年に入社し、無料版のデバッグも手伝ってくれていたそうです。
その際、橋本氏は なんば氏から「なずなちゃんの話をもっと見たいです!」と言われ、「これ以上は描きようもないやろ(笑)」と返したとのこと。
不思議なもので、これが後にゲーム内で閲覧できる「深町なずな東京物語」に繋がっています。
本当に夢のような時間だった。
何者でもない二人でこういうことをやれるのは、この先、この瞬間しかない。
橋本氏はそう教えてくださいました。
作りたいものを、何の制約もなく作っていきたい

橋本氏に「Forever Timeの一番好きなシーンは何処ですか?」を伺うと、なずなが進路に悩む「ゴールデンタイム」だと教えてくれました。
本作はシーン別に名称がついており、それぞれに明確な意味合いが込められています。上記のシーンについて橋本氏はこう答えてくれました。
学生のうちは何の制約もなく自由気ままに作品を撮れるけれど、仕事として向き合うからには何かしらの制約が発生します。そうしたら、自分のクリエイティブがどんどんなくなっちゃうんじゃないかなって。
自分も学生時代は自由に作品を作っていて、作るのはしんどくても「マジで最高傑作ができた!」みたいな気持ちになったりして、すごい楽しかった時期がありました。
でも、映像関連の会社に就職してしまえば、お金を頂く代わりにできないことも増えて、自分のクリエイティブが死んでしまうかもしれない。そう思ったので、映像の仕事には就職しなかったんですよ。
「ゴールデンタイム」にも なずなが進路に対して不安を抱くシーンがあって、これが自分の中で凄く書きたかった描写なんです。

また橋本氏は岩井俊二監督の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」に影響を受けたと仰っており、短編作品でも人の心を動かせられるのだと感銘を受けたそうです。本作のヒロイン「なずな」もこの作品から取ったとのこと。
本作の想定プレイ時間も映画と同じく約45分で作られており、短い時間でも人の心に残る作品を作りたい思いも込められています。確かに、必ずしも大作が優れているという訳ではないですよね。
また先ほど触れた「ゴールデンタイム」の話も、岩井俊二氏が書かれた様々な映画を紹介するエッセイ本「トラッシュバスケット・シアター」から影響を受けていると教えてくださいました。

橋本氏は初めてこの本を読んだとき、恩師に言われた「給料が安くてしんどくても、楽しいと思えるのが天職だよ」という言葉を思い出したそうです。
『Forever Time』を遊び場にして、自分はもちろん一緒にやる人も楽しんでもらえるような環境を作ること。この先の人生もずっとそうありたいです、と静かに語ってくれたのが印象的でした。
遊んでくれた人が何かを決断してくれることを目指して
次に「どんな想いで本作を作りましたか?」と聞いてみると、橋本氏からこんな回答を頂きました。
写真を撮るときって、必ず最後にシャッターを切りますよね。遊んでくれた人もシャッターを切るみたいに、何かしらの決断をしてくれたら面白そうだなという構想を初期の頃からずっと持っていました。
そこで、『バッファロー’66』や『サタデーナイトフィーバー』のように、将来への不安や焦燥感をテーマにした主人公を描く作品も参考にしています。


先ほど挙げた二作品は、ミューズ(女神)となる女性と出会って主人公が変わっていく話がベースになっていて、そういう形でユウトの前に なずなが現れて光が差し込んだら美しいなと思ったんです。
シャッターの話は、『トレインスポッティング』のキャッチコピー「Choose Life(未来を選べ)」から影響を受けました。あの作品も、最後に主人公がとある決断をして物語が終わるんです。




※偶然にも2026年1月30日から2週間に渡って全国の映画館にてリバイバル放映が行われるようです
不安な気持ちもありましたが、完成したゲームを遊んでくれた人のなかには、「自分もゲームを作ろう!」と思ってくれた方だったり、「押し入れにしまっていたカメラを引っ張りだして写真撮りに行ってきました!」と言ってくれた方もいました。
ゲームを遊んで終わりではなく日常に変化を与えたい気持ちがあったので、そういった意味では自分の思い描く決断への後押しに多少なりとも近づけたのかなと思っています。
ダメかもしれないけど、やってみた方が見える景色もある
最後に橋本氏は、こんなことを話してくれました。
専門学校を出た友達とかでも、才能はあるのに何もやらずに日常を過ごしている友達とかもいたりして、一歩踏み出せない人が増えてるんじゃないかなと思うんです。
その一方では、先ほど話したように『Forever Time』を遊んでゲーム作ろうと思った人や、もう一度カメラを始めた人もいる。自分のやりたいことを作品を通して見つけてほしくて、「私と彼が夢を見つける物語」というキャッチコピーを付けました。
最初は「私とあなたが夢を見つける物語」だったんですけど、”あなた”にすると説教くさく感じちゃって。作品を通じて自分の物語を自然と見つけて欲しかったので、一歩引いた結果「私と彼が夢を見つける物語」になりました。
せっかく生きてるんだったら何もせず人生終えるよりも、ダメかもしれないけど何かちょっとやってみた方が、見える景色もあるんじゃないかなと思うんです。
実は『Forever Time』の無料版とSteam版で脚本も変えていて、最後にとある一文を付け加えました。その一文を付け加えたのは、自分自身の作品を作っていて見えなかった部分が見えたからです。

主人公のユウトも自分の中に物語がないことがコンプレックスでしたが、なずなとの出会いによって自分なりの物語を生み出しました。
『Forever Time』に出会った人も、何か書いてみようとか、新しいことを始めてみようとか、何らかの物語を生み出してくれたら嬉しいです。
PR記事の依頼を頂いたのは、収入の一本柱となる会社を辞めてHARF-WAYの運営だけでご飯を食べようと決定した後だった。橋本氏から「こうゆうさんも新しい物語が始まっているんですね」といわれ、改めて自分が始めの一歩を踏み出していたことに気づいた。
どれだけ努力をしても、どれだけの犠牲を払っても、夢みたいな物語になるとは限らない。周りからの無謀という声に心を折られるときもあるだろう。耳触りの良いきれいごとで夢を美化するつもりはない。
だけど、挑戦することは悪ではないのだ。
上手くいく保証はないと分かっていても、一歩踏み出したからこそ見える景色がある。結末がどうであれ、あなたの物語には「やって良かった」と思える瞬間がきっとあるはずだ。
本作が、あなたの背中をそっと押してくれるだろう。
ちょっとした出会いから作品や物語は生まれる。
あなたなら、何か創ることができると思う。
あなたの大好きな作品のような、心に残る何かを。
そして、そのときにこう思って欲しい。
この一瞬が、永遠になればいいのに、と。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | Forever Time |
| ジャンル | シネマティックノベル |
| ストア価格 | 1,000円 |
| リリース日 | 2025年5月6日 |