ウクライナのインディー開発者betetiroが手掛ける『Hazy Mind』は、眠るたびに記憶喪失を繰り返す精神疾患を持った少女を描いた精神的ホラーアドベンチャーゲームです。2024年3月にSteamでリリースされた本作は、独特なビジュアルと重厚なストーリーで、プレイヤーを不安と恐怖の世界へと誘います。
物語は謎の女性モラナとの対話を軸に展開され、プレイヤーの選択によって大きく分岐。周回プレイで明らかになる少女とモラナ、家族の真実。この構造が『記憶を失い続ける主人公』の体験を表現しています。
本作は現実と幻想の境界が曖昧になる感覚を巧みに描き出し、Steamでは「非常に好評」の評価を獲得。精神の深淵を覗く、忘れがたい体験を提供しています。
眠るたびに記憶を失う少女

主人公の少女は精神疾患と服薬による記憶障害に苦しんでおり、目覚めるたびにすべてを忘れてしまいます。名前も、年齢も、家族の顔さえも。
少女が眠りに落ちるたび、これまでの記憶は霧のように消え去り、まるで生まれ変わったかのような状態で目を覚まします。自分が誰なのか、なぜここにいるのか、両親はどこにいるのか。すべてが謎に包まれた状態から、物語は始まるのです。
この記憶喪失は単なる健忘症ではありません。少女の精神状態はとても不安定で、現実と幻想の境界線すら曖昧です。その少女の視点を通して、プレイヤーは断片的な記憶の欠片を拾い集めていきます。
謎の女性モラナと対話し記憶を辿る

少女の前に現れる謎めいた女性『モラナ』。彼女は少女の記憶を呼び覚ます唯一の人物として、物語の重要な存在となります。
モラナとの対話は本作の要。プレイヤーの提示する選択肢を通じて、少女の過去が少しずつ明らかになります。しかし、モラナの正体は依然として謎に包まれたまま。彼女は少女を助けようとしているのか、それとも別の目的があるのか。物語を進めるごとに、その真の狙いが見えてきます。
モラナは時に優しく、時に冷たく、その表情を刻一刻と変化させます。対話の中で明かされる情報は断片的で、彼女の言葉が真実を語っているのか、少女の妄想が生み出した幻影なのか。プレイヤーは常に疑念を抱きながらも、選択を重ねなければなりません。
選択肢によってモラナの反応も変わり、物語の展開に影響を与えます。一つ一つの選択が、少女の運命を左右していくのです。
些細なことがきっかけで人生は台無しになる

少女は手放しに幸せとは言えないまでも、パートナーと出会い忘れられない時間を過ごしていました。自身が遺伝性の精神疾患であると気がつくまでは。
時間は進み、以前から感じていた生きにくさから病院にかかり、祖父からの遺伝で「統合失調症」だったことを少女は知ります。疾患による転落。順調だった生活の破綻が、痛々しいほどリアルに描かれています。
診断を受けてから、少女の世界は急速に色を失っていきます。愛する人との関係も、家族との絆も、すべてが疾患というフィルターを通して歪んで見えるようになる。「私は壊れている」という思い込みが、実際に彼女の人生を壊していく。その自己成就的な悲劇が、プレイヤーの心に深く突き刺さります。
HARF-WAY コマーシャル
絵を一切使わずに文字だけで作られたテキストADV『文字遊戯』。様変わりした世界観が目玉と思いきや物語は思わぬ方向に進み、プレイヤーは言葉に干渉しながら世界を書き換えて真実と向き合うことになる。

繰り返しプレイすることでわかる真相

『Hazy Mind』にはマルチエンディングになっており、全7種類の結末が用意されています。1つのエンディングでは少女やモラナのことが断片的にしかわかりません。
しかし、2回目以降のプレイでは景色が変わります。初回では理解できなかった伏線、見落としていた手がかり。それらが新たな意味を持ち始めます。少女の記憶喪失という設定と周回プレイの見事なシンクロ。プレイヤー自身も少女と同じように、繰り返し体験することで少しずつ真実に近づいていく構造が見事です。
各エンディングは単なるバッドエンド・グッドエンドという単純な分類ではありません。それぞれが異なる視点から物語を照らし出し、少女とモラナ、家族の関係性について新たな解釈を提示しています。
現実と幻想の境界で揺れる物語

『Hazy Mind』は、精神疾患故の生きづらさや家族の崩壊という重いテーマを、限りなくリアルに描き出した作品です。カラーで描かれた場面と白黒のビジュアルの対比で不安を煽る手法や、記憶喪失という設定を活かした物語構成が秀逸。プレイ時間は1時間程度でエンディングを網羅しても3〜4時間程度と短めですが、物語の密度は圧倒的なものがあります。
特筆すべきは、シーンごとに変化するアニメーション。少女の精神状態に応じて描線が変化し、プレイヤーを物語世界へと没入させます。じわじわと心を蝕むような不安感が全編を通して漂い、一度プレイを始めたら最後まで目が離せません。
心理的ホラー、内面を抉る物語。そんな作品を求める人に『Hazy Mind』を勧めます。エンディングすべてを見届けたとき、少女と家族の真実をどう受け止めるのか、その答えはプレイしたあなただけが知ることになるでしょう。
〈詳細情報〉
| ゲーム名 | Hazy Mind |
| ジャンル | ビジュアルノベル |
| ストア価格 | 1,200円 |
| リリース日 | 2024年3月4日 |
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