もんすたあ★レース2が誇る“不遇の美少女”、テレサちゃんを語らせてくれ

コーエーの隠れた名作、もんすたあ★レース2。公式サイトもないほどマイナーなゲームだが、いちばん好きなゲームだ。

舞台は、野生のモンスターを捕獲・育成して競争(レース)をさせる世界。平凡な少年が世界一のモンスターレーサーを決める大会を目指すお話である。

リアタイで遊んでいたのは、20年以上前。大人になって再プレイしたところ、私はひとりの“不遇すぎる美少女”に気付いてしまった。

美少女の名前はテレサちゃん。
名前からして不穏である。

テレサちゃん、開幕早々村八分状態。

テレサちゃんと出会うのはストーリー序盤の都会。なんと初登場は泥棒扱いを受けている。なんでも、町長さんの家にあった金のツボを盗んだ犯人だとか。

うら若き乙女どころか小学生女児。ツボなんぞ盗むわけないだろう。人の出入りが激しい町の入口で、ありえない噂話を7億デシベルの声量でするな。

もちろん彼女は冤罪。ただ、彼女の家は以前ショップを経営しており、勢力拡大中の大型デパート「よこしまや」の登場で閉店に追い込まれたそう。

妙な経緯も拍車をかけ、周囲から甚だ責められたのか出会った当初はかなり大人しく、挨拶がやっとの状態だった。か弱く可憐な姿に「絶対助けるぞ…!!!」とチョロい闘志がみなぎる。

結論、よこしまやというブラック企業のたくらみに巻き込まれたテレサちゃんだが、事件は無事解決。お母さんからもらったきれいな服に着替え、誰しもが認める美少女に。このまま自分はテレサちゃんと仲を深めていく……はずだった。

新たな美少女、ケイちゃんあらわる。

なんとまた、美少女を救ってしまった。彼女は地元のマドンナ的存在、ケイちゃん。活発で正義感が強い女の子である。正義感ゆえに悪の組織に捕まってしまったところを救出。テレサちゃんを月にたとえるなら、ケイちゃんは太陽といえるだろう。

その後ストーリーを進めていくと、手袋がないと通れない洞窟で足踏みすることに。門番をしている女性に「隣町まで行けば友達がいるでしょ?女の子なら手編みでもいいわね」的なことを言われる。

隣町にいるケイちゃんに頼むと張り切って編んでくれるのだが、少し時間がかかるようだ。完成まで待っているよう言われたあと、待ち合わせ場所でテレサちゃんと再会。テレサちゃんが手袋を譲ってくれたタイミングで、手編みを終えたケイちゃんも登場する。

しかし、テレサちゃんはいい女。「わざわざ編んだの?」とたずね、しばし考えたあと「私も手袋が必要だったわ」と主人公から取り返す。

極めつけは、この一言。

本当に小学生ができる気遣いだろうか。

手間をかけて手袋を用意したケイちゃんの想いを理解したうえで、「身を引く自分への気遣いはいらん」とばかりの返し。見事である。

これを機に二人は仲良くなり、美少女が出場するコンテストとやらでワンツーフィニッシュを決める。ちなみにコンテストのグランプリはケイちゃん、準グランプリはテレサちゃんだった。

最後の大舞台でもアシストしてくれるテレサちゃん

最後の大舞台となるレースには、推薦状がないと参加できないらしい。困り果てていると、テレサちゃんが先回りして推薦状を用意してくれる。なんて頼もしいのだろうか。

しかしこんなにサポートしてくれたにもかかわらず、彼女の登場はここまで。エンディングでちらっと姿を見せたあとは、どこへ行っても会えなくなるのだった…(ちなみにケイちゃんにはいつでも会える)

コンテストのときから…いや、手袋の一件から嫌な予感はしていたが、テレサちゃんは救いがなさすぎる。最初は泥棒扱いなうえにキャラデザがモブと混同するし、コンテストではグランプリを逃すし、ケイちゃんと違って攻略本や取説に公式イラストも描かれなかったし、何よりクリアしたら会えない。

最初に主人公と出会ったのは彼女なのに。いつも一歩先に手を貸してくれるのはテレサちゃんなのに。

「当て馬キャラ」はいなければいけない存在なのか

「ゲーム上、仕方ない」と言えばそれまでだが、どうみても『いい女』であるテレサがなぜ報われないのか…おそらく彼女は「当て馬キャラ」だからだ。

ストーリーを盛り上げる当て馬キャラは、決して主人公やヒロインと結ばれることがない。しかし、個人的には必要な存在だと思う。

不思議なもので、誰しも子どものときは主人公やヒロインに自己投影したり、感情移入したりしなかっただろうか。大人になった今、私は彼らよりも周辺の存在を気にかけてしまう。きっと、これまでの人生で理想と現実の折り合いがついたからだと思う。

未来には夢や希望しか満ちていないと、無条件で信じ切っていたあの頃。大げさに言い過ぎたが、少なくとも苦労や挫折があることを今ほど知らなかった。勉強、人間関係、恋愛、仕事。多くの分岐点が過ぎ、ときに後悔して、たまに成功体験を積む。人生は、きっとその繰り返しに過ぎないのだ。

当て馬キャラを応援したくなるのは、「世の中、上手くいくことばかりではない」と知った自己の成長を感じさせてくれるからかもしれない。

リセットすることが、彼女への「片道切符」

テレサちゃんという不遇の美少女を、ひとりでも多くの人に知ってほしい一心で思いのたけを書いた。

現実でもゲームでも、光と影はある。報われないキャラクターがいるからヒロインが輝けることを、私は忘れない。テレサちゃんという「無償の愛」を注ぐ女神がいることも、絶対に忘れない。

先日ヘビー級まで到達したゲームデータ。またリセットして、優しい彼女に会いに行こう。

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